中国人の「爆買い」、株に向かう
イースター休暇明けに香港株が暴騰の理由
日本人が知らない中国投資の見極め方【9】

公開日: : 最終更新日:2015/07/06 マーケットEye ,

アナリスト 周 愛蓮

最近の中国株式市場は面白い。

上海株式市場が大幅上昇して、投資家の注目を集めていたと思ったら、今度は香港株式が突然暴騰した。

4月初めのイースター休暇の5連休から8日(水)に明けた香港市場に、買いが殺到し、合併が当局に認可された中国の機関車メーカー「中国南車」と「中国北車」株の40%超の値上がりをはじめ、H株は軒並み2ケタの上昇となった。香港ハンセン指数はその日に3%超、H株指数は6%近く上がった。(H株とは、香港市場に上場している中国本土企業の株式)

この日の香港市場の売買高は2500億香港ドル、2007年10月の株バブル時代につけた史上最高記録を約8年ぶりに更新した。香港市場の時価総額もこの日に史上最大となった。

そして翌9日は、朝方にマドを開けて急騰し、ハンセン指数は一時1,700ポイント高、28,000ポイントに接近した。後場に落ち着きも、ハンセン指数は前日比2.7%高、H株指数は2.6%高と大幅に続伸した。

中国の新幹線

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中国当局のご託宣で「直通列車」は満員に

香港市場に何が起きたのだろうか?

実は4月8日に、俗称「直通列車」の上海―香港相互取引における上海から香港への株式投資は1日当り105億元(買い越し額)の投資枠がいっぱいになった。14年11月に開通して以降、始めてのことだ。翌日も前日同様、前引け時に投資枠が使い切られた。直通列車は開通後約5ヵ月にして満員となったわけだ。

中国の個人投資家は突然、香港株を買ってきたわけではない。

きっかけは3月末に中国証券監督当局が、「国内の機関投資家は『QDII』を通さずに、『直通列車』を通じて香港株式市場に投資しても良い」とのご託宣をしたことだった。中国の機関投資家は、本土以外の株式市場に投資する場合は、当局による「国内適格機関投資家(QDII)」の認定を受けなければならない。投資枠も予め決められている。

今回の緩和により、ある運用会社は早速香港株投資ファンドを募集したという。その先駆けとして本土の大口投資家は香港株に物色先を向け、この「チャイナ・マネー」が呼び水となって各種資金が乱入した。

もっとも買われている銘柄は、本土市場(A株)と同時上場しているH株。同一企業でありながら、香港市場での株価は大幅にディスカウントされているからだ。

出遅れた香港市場にはまだ上昇余地

世界の株高の宴に最後に登場した香港市場のフィーバーは、ただの数日間の祭りで終わってしまうのではないかとの心配もあるが、宴はもうしばらく続くと期待してもよさそうだ。

世界の株式市場は株高となるなか、米欧日本などの先進国市場はもちろん、新興国市場でも中国市場を除き、主要市場は今年、軒並み史上最高値を更新した(日本は15年ぶりの高値)。その中国市場では、本土市場は昨年半ばより上昇し、3月末までには上海総合指数は約9割上昇した。

残りの究極の出遅れ市場は、香港市場だけとなった。バリュエーションでの比較では、主要市場の株価指数のPERは、大体15~20倍前後であるが、香港ハンセン指数はここ2日間の急騰を経てもまた12倍台、H株指数は10倍未満であるから、香港株にはまだ上昇余地があるだろう。

割高の中国本土から香港へ転戦も

中国本土の株価は1年弱の間に大幅に上昇し、中小株を中心に一部銘柄は割高になったことから、本土投資家は本土株を売って香港市場に転戦してくることは予想され、もしくはすでに実行している。H株はA株に比べて割安感が顕著であり、本土投資家にもよく知られている企業であるため、これら銘柄への物色はしばらく続くだろう。

また、世界の投資家は香港株をアンダーウェートにしていることから、今後の資金流入に期待できそうだ。世界の投資ファンドは、3月末までの7週間にわたって、香港株を売り越していた。しかし4月に入ってから香港市場は約1割も上昇した反面、MSCI世界指数は1.5%の上昇にとどまり、米国S&P500指数は小幅なマイナス。アンダーパフォームに堪えられなくなる資金は香港市場に振り戻される可能性も十分考えられる。

世界株式市場の時価総額に占める香港市場の割合は7%弱、本土市場の割合は10%(4月9日時点)。中国株に相応のウェートを置かなければと考える日もそう遠くないのかもしれない。

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