JAIIの20年④
“伝説の相場師”を慕って
個人投資家協会ができるまで
日本個人投資家協会事務局長 奥寿夫
日本個人投資家協会は2015年2月27日、創立20周年を迎えました。波乱万丈の時代、銀行も、証券会社もあまたと潰れました。そのような折にも、行政や金融、証券界に個人投資家のためになる制度改革を求めてまいりました。
今さらではありますが、設立当時のことを振り返ってみたいと思います。
是川銀蔵(1897-1992)という投資家がおりました。世間では「伝説の相場師」とか「最後の相場師」といわれ、投資家の羨望の的でした。住友金属鉱山の株買い占めはじめ投資で巨利を得て、交通事故遺児や養護施設の児童の学業を援助する奨学財団を設立しました。
長者番付に乗ったのを機に1980年代から講演をするようになり、東京では帝国ホテル富士の間、大阪では中之島公会堂と1000人規模で満席にする人気でした。数ヶ月に1回ほどの講演会では物足りない投資家が「もっと話を聞こう」と集まって作ったのが「銀友会」です。経営も、投資もしている中堅企業のオーナー社長が中心でした。
是川銀蔵がとある講演会で同じ講師として出会い意気投合したのが、エコノミストとして活躍していた長谷川慶太郎です。銀友会は是川銀蔵と長谷川慶太郎を囲む会となりました。 是川銀蔵の死後も、長谷川慶太郎を囲んで毎月、勉強会を開いていました。相場観より経済動向、大局を学ぶ会です。多い時で40~50人のメンバーがいました。
「アメリカには物言う個人投資家の団体がある」
協会設立の発端となったのは、1994年夏のある勉強会でした。 当時、バブルが崩壊して5年経っていましたが、相場は悪いままでした。銀友会では「なぜ、こんなにひどいのか」と議論するなかで、「投資環境が悪いから、相場もよくならないのではないか」と考えていました。証券業は免許制であるがために新規参入もできず、競争がない。手数料さえも自由化が許されておらず、取引コストが下がらない。証券業者の営業姿勢や税制にも問題がありました。
その時、講師として招いた日経新聞の記者が「アメリカには個人投資家の団体がAAII(American Association of Individual Investors)はじめいろいろある」というのです。その話を聞いて、「日本で個人投資家が馬鹿にされるのは、物言う団体がないからではないか」「日本にもそういう団体が必要だ」という話が盛り上がりました。
そして、投資環境をめぐる諸問題を変えていくために運動しようと「日本個人投資家協会」が発足したのが翌1995年2月27日のことです。銀友会のメンバー30人が構成員(役員)となり、理事長には長谷川慶太郎が就きました。
設立総会は茅場町の証券会館ホールにて行いました。200人ほどの個人投資家が集い、壇上に上った長谷川理事長が「証券業の免許制廃止」「売買手数料の自由化」などの要望を決議宣言しました。
(続く)
*是川奨学財団 公式サイト
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