これからの株式運用のスタイルは?

日本個人投資家協会 理事 木村 喜由

日本人の保有額が急増していることが確実なものがある。日経225連動の各種のETFである。

連動型が野村3兆円、大和が1.4兆円、2倍型が7000億円(先物で1.4兆円)、インバース(マイナス2倍型)が400億円ある。この他も含め225連動型のポジションは投信関係で10兆円、ヘッジファンドなど投機筋が差引で7兆円ほど買い越しのポジションを持っていると推定している。

今回の急落で裁定売りが大量に出た結果、8月27日時点での東証会員による裁定買いポジションは差引12.4億株まで減少した。
しかし、225型で解消が行われたならば、需給の歪みによるNT倍率および日経225のインデックスベースと時価総額ベースの格差は相当程度解消されてよいはずである。ところがそうなっていないのである。

NT倍率は12.3倍前後でせいぜい0.15倍ほど上下しただけ。またインデックスベースPERやPBRは時価総額ベースより25%割高という状況もほとんど変化していない。
ざっくり言えば、225インデックスは一時的にチャート上の割高感が解消される場面があったが、1万9000円近辺に戻った状況で見てみると、ほとんど前と変わっていないのである。
ヘッジファンドの売りによる先物売り・裁定解消の分を、安値を待ち構えていた個人中心の国内投機筋がそっくり肩代わりしてしまったと考えられる。

筆者の直観では、この新規買い分は目先的には儲かるチャンスがあるだろうが、半年タームで見ると他の主要インデックスに比べかなりの相対パフォーマンス悪化に見舞われる、要するに損をすると予想する。

なぜなら、9月利上げが見送られても米国が緩やかに利上げするシナリオは変わりなく、債券利回りの異常低下に基づく現在の株式ロングポジションは徐々に減少しよう。
225はアベノミクスに賭け、動きの速さを狙って買い参入した連中が多いが、相対的に負け組であると判明すれば逃げ足は速い。

月曜、上記のように日経225連動投信が多く持たれ過ぎていると書いた途端、一気に1000円幅の下落に見舞われた。

情報量と判断要因が多すぎ、普通の個人投資家では対処できない

ショック安による暴落相場の後に普通に見られる上下動の典型的なパターンで、古典的名著である「株式罫線の見方使い方」(木佐森吉太郎著1969年)には地震型として解説されている。

漠然とした悪材料に対する恐怖心から、買いポジションの膨らんでいた銘柄に対する連鎖反応的投げ売りにより暴落が発生したパターンであり、下げ幅の半分程度までは急速に戻すが、買い一巡後は特に悪材料がなくても二番底を付けに急落する。しばらく急騰急落が繰り返されるが、次第に値幅が縮小し、やがて大方の見方が一致する水準で落ち着く。

相場商品はどれもそうだが、実需や投資価値の判断に基づく相場観のほかに、値動き自体に魅力を感じて乗ってくる参加者による需給関係が大きく関わってくる。
特に株式は発行量が限られている場合、品薄化に伴い値動きが荒くなるとともに、それを好き好んで参加してくる短期売買専門の市場参加者が増えるものである。デイトレーダーや短期専門のヘッジファンドなどである。そのターゲットが日経225なのである。

長期的に見れば、平均株価の水準はその時の金利、企業利益およびその成長率の見通しで大体説明でき、それを逸脱する動きはバブル的な上げとパニック的な下げと受け止めてほぼ間違いない。

一般的に平均株価においては2~5年程度の景気のサイクル、3~6カ月程度の中期サイクル、1カ月前後の短期サイクルが観察されるが、個別銘柄の値動きはこれとは別で、まちまちで不規則、かなり乱暴なものである。

株式投資は、平均的に見れば、あらゆる資産運用の中でも長期的に見ると堅実かつ高収益をもたらすと考えられる。
ところが銘柄数が多いうえ、投資タイミングや情報感度、好みの投資スタイルが人により大きく異なるために、投資成果は人により大きく異なる。バブル崩壊後の23年間を別としても、個人投資家の9割は負け組であると言われている。

特に最近は、企業の情報開示がネットで公開され、売買は機械的に執行される超高速取引が幅を利かせ、イベントの際には思い切り動きを拡大させようとするヘッジファンドが跋扈しているため、時間的余裕、情報処理力、反応速度いずれも劣位にある個人投資家にとっては不利な環境になっている。
結論から言えば、よほど株式投資に通じており、勉強熱心かつ時間投入できる投資家でないと、株で儲けるのは難しくなっていると思う。

これは投資先進国である米国では早くから真剣に議論され、結局、個人が時間を費やして自分で銘柄選択や売買するよりも、定評のある投資信託やヘッジファンドに資産を預け、妥当な代金を支払うのが合理的という結論になった。筆者も同感である。

TOPIXやJPX400連動ETFは優れた投資対象

米国においても投資信託などの運用成果がS&P500などのベンチマーク(比較の基準)を下回るのが普通である。
それは当然だ。手数料や運用会社の取り分、新規公開銘柄などにおいては安値で必要量を十分に買えないから、1~2%のアンダーパフォームは仕方がない。

投資家自身がやったらどうであったか。おそらく費やした労力、脳力を自分の平均賃金でお金に換算すれば、投資信託にはまず勝てないだろう。

ところが、日本の投信は歴史的に非常に不幸な環境にあり、投信を買った投資家はほぼ例外なくベンチマークを大幅にアンダーパフォームしたか、元本を大きく割り込んだのである。

バブル崩壊前は系列証券会社の推奨銘柄の売れ残りを高値で無理に買わされ、自由な運用はできなかった(例外的だったのは新和光投信くらいだろう。これは和光証券の歴代社長が立派だったと思う)。バブル後は株価そのものが下げ続けたため、長期保有で業種バランスを取れば確実に損をする状況だったのである。
したがって株式投信を買うということは、高い確率でその瞬間から損失が発生し続けることを意味した。

現在、株式で相当程度の投資収益を上げようというのなら、筆者が時折紹介するようなバリュー銘柄つまりPERやPBRは市場平均を下回るが、健全性安定性では平均以上という銘柄を、相場全体が下がっている局面で拾い、全体の高値圏では適当に利益確定や出遅れ銘柄に乗り換えるという作業を丹念に売り返すということが求められる。
新規公開から間もない銘柄の爆発高に賭けるというのも一つの手だが、銘柄選別力、売買技術、タイミングの良し悪しで大きな差がついてしまう。

そう考えると、TOPIXやJPX400連動のETFなら各種の経費は非常に安く、売買は株式同様に好きなタイミングで行え、運用成果は実際のインデックスをやや下回る程度に抑えることができるので、従来型の投信に比べ非常に優れた性質を持っていると言える。

ただしJPX400は銘柄入れ替え前後の期間(5月下旬から9月中旬)は除外銘柄の下落と新規銘柄の高値組み入れにより、必ずパフォーマンスが悪化することを理解すべきだ。影響は軽微だが、TOPIXでも上場廃止や新規組み入れ銘柄では同様の悪影響がありうる。

腕に覚えがあり、株のためならどれほど時間や労力をつぎ込んでもよいという人は、個別銘柄にやや集中投資して賭けるのもよいが、気力、体力、自信がない投資家が儲けようとするならこれらの上場ETFがよい。

毎度書いているように225連動型は割高で銘柄入れ替えのインパクトも大きく、短期売買専用なので、資産防衛にはお勧めできない。
しかし、相場の下落時に安値を買い、その後のリバウンドで即、売って利益確定したいという向きには悪くない。でもそういう人は本来なら225先物やFX取引に集中した方がよい。

*木村喜由のマーケット通信は今後、有料記事で掲載予定です。サンプルとして無料公開しています。

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