債券の利回りをもう少し簡単に計算してみましょう。

公開日: : 最終更新日:2016/04/22 ゼロから学ぶ投資 ,

 

金融リテラシー講座 「金利計算、利回り計算のやり方」7回

フィナンシャル・アドバイス代表 井上 明生

 今回は債券の利回りをもっと簡単に計算する方法について説明します。
債券の利回りとは、「将来受取る利息、償還金を一定率で割引いた合計が投資元本と一致する、その割引率のこと」だと説明しました。債券の利回りとは、将来受取るキャッシュフローと現在の値段を一致させる割引率のことであり、それ以外にありません。
しかし、前回までやったようにこの計算は簡単ではありません。指数計算ができる電卓がないとできません。また、利回り(割引率)から債券価格を求めることはできますが、債券価格が提示されており、それから利回りを求める場合はますます大変です。おおよその見当で利回りを予想し、その利回りで正しいかどうか計算を繰り返し正解にたどり着かねばなりません。
それでもう少し簡単に利回りが出せる方式として単利という利回りがあります。今回はそれを紹介します。

単利とは、割引率すなわち複利利回りではありません。したがって、本来的には正しくないのですが、債券価格が額面価格に近い場合は正しい利回りとの誤差は小さく、利用して問題ありません。実際、現状の債券売買では幅広く単利は使われています。

単利は、債券単価が提示されておりそこから利回りを出す場合、それが簡単にできます。利回り(単利)をr、債券単価をX、クーポンをC、償還までの年限をnとするとrはつぎの式のように計算されます。

kinyuinoue20160418-1

この式の意味は債券単価(X)と額面(100)の差額を年限(n)で割り、1年当りの償還差損益を出し、それとクーポン(C)を足し、1年当りの単純な収益を出し、それを債券単価で割り、利回りを出しています。
時間的価値を無視し、将来の価値と現在の価値を一緒にして計算したものが単利です。

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では、この単利で前々回やった「第3問」の条件で利回りを計算してみましょう。条件は、償還まで7年、利率1.5%、この債券を額面100円に対し105円45銭で買った場合、単利利回りはいくらになるかです。数字を式にあてはめるとつぎのようになります。

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1年当たりの償還差損益は、(100-105.45)÷7=0.7785… ≒ -0.78
これと利息(クーポン)と足した1年当たりの収益は、1.5+(-0.78)=0.72
これを債券単価で割ると、0.72÷105.45=0.006827… ≒ 0.00683
つまり、単利による利回りは0.683%です。実際の利回りは0.7%、少し誤差がありますが、許容できる範囲です。
では、これを長期の割引債の利回り計算で使うとどうなるでしょうか。前回取り上げた米国債ストリップ債の条件でやってみます。条件は償還まで29年10か月(29.833年)、債券単価29.306の債券の利回りを計算します。
まず、1年当たりの償還差益は、(100-29.306)÷29.833=2.3696… ≒ 2.37
利息はありませんから、これが1年当たりの単純な収益です。
それを債券単価で割ると、2.37÷29.306=0.08087… ≒ 0.0809
利回りは8.09%となります。これは実際の利回り4.2%と大きくかい離しています。単利で計算した利回りは実体を現していません。

単利は利回り計算が簡単であって、債券単価から利回りを出すのも利回りから債券単価を出すのもどちらも容易にできます。(今回は利回りから債券単価を出す式は紹介しませんでしたが、これも簡単にできますから自分でやってみてください。)

利付債であって債券単価が額面とあまり差がない場合、単利で利回り計算しても問題ありません。普通の個人投資家としては、債券の利回りを計算する場合通常は単利で十分です。ただし、債券単価が額面と大きく離れているものや長期の割引債には単利は使えません。

(次回につづく)

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