映画「エクス・マキナ」と英国離脱の後に起きる恐ろしいこと

2016・7・2

先週私はベットの賭率から「BREXIT」はないだろうと書いた。

まさかの離脱でご存じの通り世界株式市場の時価総額は5%も下がった。リーマン並みだ。

私の不明を心からお詫び申し上げる。6月16日の1万5434円が底、と書いたが簡単に破られてしまっている。これまた、すみませんと申し上げるしかない。

6月25日には私の知っているヘッジファンドは皆、残留を前提に日経先物500円高まで先物買いを入れていた。離脱の報を聞いて慌てて買いを投げ、売りを出したので下げ幅があんなに大きくなってしまった。

9月にも来たる4つのショック

今後、政治的なショックだけでなくこれが金融面での不安につながるのか。どんな形で、いつ発生するか。

常識的には第一が昨年8,9月頃から指摘しているドイツ銀行の破綻だろう。デリバティブを中心にした経理内容の悪さ、大量解雇手持ち、証券の苦し紛れの売却等々リーマンの破綻前の状況に酷似。また銀行ストレステストに不合格になり、おまけにジョージ・ソロス氏がドイツ銀行株を売っていた事実が判明。もちろん株価は下落に次ぐ下落だ。

第二が中国。これは経済面でのハードランディングでなく、習近平に対する共青団グループ、江沢民などの上海閥の対立。要するに政治混乱だ。これにパナマ文書による中国上層部のカネの問題が絡む。暗殺や意外な高官の左遷などなど。上海株式市場と人民元がとめどない暴落を始めてもだれも驚くまい。

第三は米大統領選。今回BREXITの離脱賛成組は白人、低学歴で低収入、男性、だ。この階層は貧富格差拡大に怒り、対象は移民、エスタブリッシュメントに向けられる。米国のトランプ支持層と重なる。要するに不満が、ナショナリズムの形になり、不健全で無責任で時として暴力になって現われる。ドナルド・トランプの大衆迎合主義が、ひょっとして現実のものとなったら。米ドルは暴落、もちろん株価も悲惨なことになり世界的デフレ経済が定着。その時にBREGRETでなく、DONALDREGRETになっても遅い。

最後がヨルダン、サウジアラビアの王制の崩壊。原油価格はバレル数十ドルに急上昇するだろう。

時期?もちろん予測の限りではないが、早ければ9月だろう。

日本は希望の星に

私は日本だけがデフレ経験面での先進国として世界経済の不振の中、内需を中心として相対的に高成長し希望の星となると思う。期待のカギは財投債などの日銀の買いきりと満期までの保有、消費税再増税撤廃を安倍首相が決意し、黒田総裁が合意することだ。これならデフレ脱却は十二分に可能だ。

エクスマキナ

いつも書き出しに使う映画のことを忘れていた。今週は「エクス・マキナ」。「スター・ウォ-ズ」や「マッドマックス」などの大作を押しのけてアカデミー視覚効果賞を獲得した。SFスリラーと云えるジャンルで人間とAI(人工知能)との一種の闘争を扱っている。

超富豪のIT企業オーナーの広大な自宅にプログラマーのケイレブが招待される。そこでロボットの美女に紹介され―

またお話しは映画でご覧ください。

ヘリコプターマネーで生き帰る日本

実は私がこの映画を使った理由は、映画の題にある。

「デウス・エクス・マキナ」というラテン語がある。デウスは「神」でエクス・マキナは「機械仕掛けの」と訳される。

古代ギリシャの演劇で、劇の内容がもつれにもつれて解決困難になると、絶対的な存在つまり神が現れ混乱した状況をおさめて大団円。ギリシャ悲劇でもゲーテの「ファウスト」モーツアルト「イドメネオ」、シェイクスピア「真夏の夜の夢」などが「デウス・エクス・マキナ」の実例だ。

世界の混乱が一挙におさまることは、まず、ない。しかし少なくとも日本は永久債でも財投債でも、このマイナス金利による国債のゼロ以下の利率を利用してヘリコプターマネーを使う。円安と物価の程よい上昇、それにタンス預金の活性化の大きな力を与える。投資先は国内強靭化でもリニアでもいい。ガスパイプラインの全国敷設でもいい。

狙い目はマザーズ上場のバイオ・ロボット関連

もうひとつ。

ご投資へのアドバイスは、バイオ、ロボットなどの有望株のマザーズ上場物を狙うこと。7月19日のマザーズ先物取引開始を控え、また先般の値崩れを貸し株で狙ったヘッジファンドが貸し株を買って返さなくてはならない。その買いに便乗する。ここは市場の反発をとるよりも中長期の成長企業の仕込み期と考えることだ。

映画のセリフから。別荘のオーナーがいう。

「税金と死は向こうからやって来て不可避だが、この別荘は停電がしょっちゅう発生するんだ。」

世界経済には何年かに1回、必ずドカンがある。BREXITが導火線に火をつけた。一過性と片づけるのは早計にすぎるだろう。

映画「エクス・マキナ」と英国離脱の後に起きる恐ろしいこと(第833回)

 

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