【初・中級者向き】映画「後妻業の女」と自分年金の決心 

2016・9・4

後妻業

黒川博之の原作が面白かったし、何といっても大竹しのぶが悪女を演ずるのが魅力で観た。予想通りほとんどが中年以上の夫婦連れで満席。殺される側の金満老人役が津川雅彦や六平直政、伊武雅刀などの芸達者だし、真相に迫る探偵役の永瀬正敏も良かった。陰惨になりやすい話だが、そこは大阪弁の柔らかさと軽快さで、面白い喜劇にしている。私は笑いっ放しだった。

小夜子(大竹しのぶ)は7人の金持老人を色香と巧みな演技でとりこにし、後妻になってから事故や病気に見せかけて殺し、公正証書を武器に財産を巻き上げる。「成果」を小夜子と半々にしている結婚相談所長の柏木(豊川悦司)が葬式で云う。「功徳があったんかいな、爺さん。あんじょう成仏したってや。」実はこの二人が共謀して点滴に空気を入れてころした。全く罪悪感のないこの二人のやり取りが絶妙だ。

長生きリスクをどうヘッジする

この映画がヒトゴトと思えないのは「長生きリスク」に数多くの老人(とくに団塊の世代)が気が付き始めたからだろう。子供には頼れない、年金では足りない。手許の資産で生計費をやりくりという現状。資産が無くなる時期よりも自分の余命があったらどうしよう―。これが「長生きリスク」だ。長生きして自宅で死にたければカネがかかる。病気となればなおさらだ。

具合の悪いことは日本の医療は「延命重視」。一分でも長く命を持たせるのが医療と考えられている。だから療養病床34万の大半が点滴や経管栄養で延命されている患者である。2025年には団塊の世代が75歳つまり後期高齢者が大量発生する。みなが健康と限るまい、介護、医療サービスへの依存が急増するに違いない。

(私事で恐縮だが私は「日本尊厳死協会」の会員で延命治療を拒否する“リビングウイル”を作成した。しかし日本では法的根拠がない。)

脱・延命重視の道遠く

一方、診療報酬を上げたい病院側は濃厚医療を止めない。スウエーデンのように高齢の終末期患者には「緩和医療」のみ。鎮痛、解熱、精神安定の薬剤だけに止める。

この「長生きリスク」を指摘した日本経済研究センターの小島明参与は「この問題を持ち出した途端『高齢者見殺し』『医療費節減だけが狙い』といった批判が生まれる」と述べ、もっと議論が深まらなければどうにもならない実情を嘆いている。

凪の後の下げから株式投資を

そんな乱暴な、と言われるのを百も承知で言うと。団塊の世代800万人の人たちは、今さらかも知れないが、預金をほどほどにし、手持ち株は自分が働いていた自社株がもう将来性がないと思ったら売却して、これからでも遅くないから「自分年金」を作りなさい。もう体の方は弱って頭と無い間の経験があるから、自分の眼があるはず。株が嫌ならリバース・モーゲージもひとつの案だ。もちろん、身体のきく限り働く。

心配はつきない。年金の減額、税・社会保険負担増加、インフレによる実質購買力の減少。デフレ脱却の可能性を信じるならば、インフレヘッジは株式投資がいい。このブログをわざわざご覧の方にはそんなことは先刻承知だろうが。私の予想している秋から暮れの押し目が狙い目だ。

円レートの方は先週予想したドル高円安が怪しくなった。金曜日に発表された米8月の雇用統計も予想を大きく下回る15万1000人。まだまだナギのような状態が続くだろう。こういうナギのあとは割とおおきな下げがあるものだ。

今年の安値がラストチャンス

先々は分からない。しかし中国的尖閣への公船の進入を減少させた。4,5日の中国杭州でのG2Oを控えてミエミエの自粛だが、心配材料の減少にはなる。このほかの心配材料は相変わらずヤマのようにあるが、始めるなら今年中がいいと思う。なぜかって?2014年に始めそこなった人たちには、今年が恐らくラストチャンスと思うから。理由や考え方その他、11月に刊行される私の40冊目の本をご覧ください。ことし中にあると想定している安値が狙い目だ。

 

映画のセリフから。

小夜子と柏木のやり取り。「いちいち細かいこと言うねんな。あんたネズミ(年)か?」「酉(トリ)や!」「それであちこちツツいと回るんや」。長生きリスクはどうぞ、よーく考えて。あちこちつつき回って。なかなか決心がつかなければ、2,3か月かけても。

映画「後妻業の女」と自分年金の決心 (第842回) 

 

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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