人気銘柄で短期間に儲けようとする不勉強な投資家たち
金融リテラシーを高める教育ができるのはバイサイド
JAIIセミナーレポート理事鼎談

2月25日に開かれた日本個人投資家協会創立20周年記念セミナーのレポート、最終回は理事3人による鼎談「これからの10年・大局を読む」です。

岡部陽二副理事長(中央)、木村喜由理事(左)、大井幸子理事(右)が、生き残る投資家の極意は?金融リテラシーをどう高めるか?意見をぶつけあいました。個人投資家が集い、証券界にモノ申す日本個人投資家協会の意義が改めて浮かび上がった鼎談の一部分をテキストでお届けします。動画でもどうぞ!

20150225seminar (3)

生き残る投資家とは?

木村 損する人がどういうパターンかというと、安易に流れる人。短期間、人気銘柄、不勉強。その逆をすればいい。

自分で買う銘柄はディープバリューばかり。四季報を調べて、会社に電話することをまめにやっている。業績が悪くなったら、恥ずかしがらず、勇気を振り絞って直接聞くことだ。そこを乗り越えていかないと成功には近づかない。あとは忍耐。ローマは一日してならずというが、投資は成果が出るまでの我慢比べだ。

大井 さまざまな運用者を見てきたが、年に50~60%上がる人もいるが、2,3年で立ち直れないほどの打撃を受けたりする。2,3年ではなく、5,6年から10年かけて、どこまで増やしたいのか目標があった方がいい。今のFXなどは丁か半かであまりに投機的だ。

私が知っている投資家はコツコツ型、バリュー型。自分なりの計算手法を持っていて、適当なバリューまで来るのを待っている。そういう銘柄を25ぐらい持っている。それらの銘柄は相場との関係性がほとんどない。だから乱高下しても影響を受けない。相場から離れたところに自分を置いている。つまり、皆が買っている、とか人気銘柄はこれ、というのにだまされず、距離を置いている。

人間はラクをするようにできている。でも、〝ラクして儲ける〟からは離れないと、株を客観的に見られない。すぐ儲けられるのは堕落に通じる。

コツコツ稼いで、年8~10%で満足するのを10年続けると2倍になる。自分が投資したものが下がったりすることはあるが、そのときは目をつぶって死んだふりをする。キーキーすると疲れるから、まぁいいやと。自分と喧嘩しないことだ。

岡部 よく勉強して、コツコツというのに異論はない。でも証券投資にはリスクをとる勇気が必要だというのも長谷川慶太郎理事長が言う通りだ。よく日本人は農耕民族でリスクをとらず、欧米は狩猟民族だからリスクをとるという。だが、それが日本人の独自性だというのは間違っているともいう。問題はリテラシーだ。どのような教育を受けたのかが問題だ。

金融リテラシーをいかに高めるか 

岡部 金融リテラシーの問題の1つは、教育するのがどんな立場なのか。セルサイドに教育はできないことだ。バイサイドがやらなければならないが、そういったエージェントがいないことが問題だ。保険でもそうだが、日本では客の立場で行動するエージェントが成り立っていない。

大井 米国では投資家が強いが、日本ではセルサイドが圧倒的に強い。米国ではロックフェラーなど巨万の富を築いた人々が財団を作り、永続的にお金を増やしながら慈善活動で社会還元を行っている。選ばれたヘッジファンドが運用手法を開発し、そこに機関投資家は後から入ってくる。日本ではなぜ投資家のために投資商品が作られないのか。投資家がこういう商品がほしいと声を上げて、作ってもらえばいい。

製造業と金融業の違いで、トヨタの車で事故が起これば、メーカーの責任が問われるが、金融では自己責任で、買った方が悪い、となってしまう。目利き力というか検証する能力に関して、投資家が守られていない。

セルサイドが圧倒的に強いから信用するのではなく、その立場を使って私から何を得ようとしているのかを考えてつきあうことが重要だ。何かを勧めてくるのにはウラがある。今、私がこの銘柄を売ったら営業マンがどれだけ成績が上がるのか。どうやって営業マンを利用すれば自分のポートフォリオが増えるのか、主体的になって使いこなすことだ。

企業年金は確定拠出に移行し、自分でリスクを考えて運用する方向に向かっている。しかし、明日から確定拠出年金になったと言われても、どうやって資産を守ればいいのかよくわからない。相談先として挙げられるファイナンシャルプランナーも、信託や生保に所属していて、それぞれの商品を勉強してから派遣されている。本当のところ、どのような知識を持てば資産を守れるかがすっぽり抜けている。

木村 日米で証券投資に対するスタンスが違うのはなぜか。ビジネスへの社会全体の取り組みが違う点もあるが、やはり証券会社のふるまいが悪かった。回転売買をさせていたり、必ずしも投資価値に沿っていない銘柄で商売していた。

顧客をだます証券会社にはペナルティーとして、退場だけではなく関与した人間の資産を巻き上げることも必要ではないか。

投資家にも、世の中こんな悪いやつがいるということを知らせなければならない。オレオレ詐欺でもどうしてこんなにだまされるのか思うが、お金に対するリテラシーが出来ていない。義務教育から始めて、社会人になったら、預貯金と並行して株式投資という流れがいいのではないか。個人金融資産の半分は証券投資になっていくのが正しい姿だと思う。

残念ながら一般の方は証券リテラシー、知識が身になっていない。新聞や雑誌で目立つ銘柄にとびつく。賑わったら買って、急落のなかで損している。正しい銘柄選択のためには、企業の価値を勉強し、人気が過熱しているのか冷え込んでいるのかをきちっと見極めなければならない。

物事はなんでも見返りのあるものには、それなりのリスクがある。そこを明確に勉強して、利益をえるためには自分から動かなければならない。その枠組みをきちんとサポートしてくれるようなことを金融行政にはやっていただきたい。

(創立20周年セミナーレポートは5回目の今回で終わります)

関連記事

基本の話by前田昌孝(第21回、資産運用業改革って何?)

岸田文雄首相が9月21日に米国で講演し、日本に海外の資産運用業の参入を促すため、資産運用特区を設置

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

日米首脳会談と米国防衛関連株の急騰とワクチン供与、 それに解散、日経平均の戻り高値更新    (第1060回)

4月16日、日米首脳会談が行われた。ウラ話を含めて全貌は、来週以降にこ のブログで取り上げる

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「男はつらいよ お帰り寅さん」とNYダウ3万2000ドルを予告したホワイトハウス (第993回)

 新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。  昨年は米中

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「ワーロック」と円安ドル高の定着で、日経平均3万2000円の回復(第1110回)

1959年。私が大学を卒業して証券界に入った年の作品。 ワーロックという銀鉱山を持つリッチな

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「トップガン マーヴェリック」と、中国経済の苦境と日本のインフレと円安。私の強気。(第1118回)

36年ぶりの「トップガン」!! 当然私は観に行き、充分に満足した。お勧めできる。 主役

記事を読む

PAGE TOP ↑