【初・中級者向き】名作「ガリバー旅行記」と建設株

 

2018・1・21

ご存知の冒険物語で小人たちの国、巨人たちの国、空飛ぶ島の国、馬たちの国―。イギリスに妻子を残し、懲りずに旅に出たガリバー。しかしよく読むと、1726年に出版されたこの物語は階級制度への批判、人間のいやらしい面を辛辣にえぐった凄い作品だ。

第三話で、私はとんでもないエピソードを改めて発見した。ラグナグ国でストラルドブルグつまり不老のひとがほんの少し生まれる。この話をガリバーは聞いて興奮する。

不死!誰でも本来なら死は少しでも先延ばしし、遅ければ遅いほどありがたいと思う。ところが、不死でも「不老」ではないところが問題で、80歳になると「頑固で気難しく、陰気で、独りよがりで、自然な愛情を抱けるのはせいぜい孫までで、その後はそんな感情も枯れはててしまう」へえ、スウィフトはそんな風に老人を見ていたのか。

90歳になると、歯も髪も抜け落ち、食べ物の味もわからなくなる。この国の言葉は常に変化しているので、200年もたつと普通の人間とは、ごく一般的な言葉を除いて会話が成立しなくなってしまう。

老朽インフラ修繕の財政制約

この話を読んで、日本はインフラの老朽化にどう立ち向かうべきかと、いう大問題に似ていると考えた。

日本の社会資本ストック(2009年推計)は786兆円(再取得価格ベース)で、道路が348兆円、上下水道130兆円でこの二つで6割、建物2割、残りが港湾など。

1960年代からインフラ投資は加速化し、ピークは1990年代半ばで年45兆円の公的資産形成が行われたが、財政構造改革から抑制され、現在は半分。事業費の急減で専門人材も減少し、元の水準に戻るのは極めて困難になっている。

2016年度の全国の橋のうち4万6572か所、トンネル1122か所を点検したところ、橋の61%、トンネルの96%は老朽化し修繕が必要とされた(国交省調べ)。

橋や道路、トンネルは人間に例えれば「不死」つまり永久にあるべきもの。しかし「ガリバー旅行記」のように「不老」ではない。維持のための修繕が不可避だが、予算の制約でこれが思うに任せない。

永久国債で巨額予算

プライマリーバランスの縛りさえなければ―と思うのは私だけではあるまい。これを解決するのは、私が主張している永久国債が名案で他には兆円単位の巨額予算を調達することはできない。
私は日本建設業連合会が発行した「再生と進化に向けて―建設業の長期ビジョン」を読んだが、ここでも「財政制約」を前提にしており、作成者はさぞ歯がゆかったんだろうなあ。

安倍首相は「リーマン並みの大変な事態が発生したら」という条件付きで「何か」を考えている。恐らく財務省のプライマリーバランスのくびきをどう外すか、頭の中にあるのだろう。もう「低圧経済」でなく「高圧経済」に転換しているのだから、何かしなければいけない。ここいらを詳しく書く余裕がありません。次回以降に。

私は建設株特にゼネコン大手を、2,3年のつもりで有望銘柄として注目している。折も折、昨年12月に東京地検と公正取引委員会が独占禁止止法違反で捜査が行われた。株価は下落、漸く1月下旬に入り反発したが昨年11月の高値より15%ぐらい下値を低迷している。
営業停止とか課徴金などのペナルティのリスクはある。しかし土木事業の収益性が構造的に悪化するような事件とは考えられない。

一方、2017年度の建設投資額は55兆円(国交省予想)。2010年度比31%アップで2010年度以来15年ぶりの高水準。私は建設大手に魅力を感じる。

ところで、2月4日(日)に私の講演会を開きます。
主催はフォレスト出版、会場はコングレススクエア日本橋。地下鉄銀座線日本橋B9出口で直結。
セミナーの題は「世界経済2018大予測セミナー。ブラックスワンの後に訪れる日経4万円突破は」です。少しオーバーかなあと思われますか?そうじゃあありません。

私は13時から70分。今年の高値いくらで、いつあるかの見通しと、秋ごろあると予想している大幅下落の激動リスクをお話しします。
またSAIL代表大井幸子さん、短期見通しで定評ある熊谷亮さんにも手伝っていただきます
終了は17時。
募集は以下のページです。
https://www.forestpub.co.jp/author/mail/lp/ok20180204/
また講演会に興味のある方は
http://frstp/we18pi
のURLをプチッとおしてください。お願いばかりですみません。よろしくお願い申し上げます。

名作「ガリバー旅行記」と建設株(第893回)

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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