「 遠吠え 」 一覧
日本経済の霧は晴れない(最終回)
「遠吠え」のペンネームで本欄の連載を始めた2016年3月末の日経平均株価は1万6758円だった。2021年12月24日の終値は2万8782円だから、5年9カ月で日本株は平均71.8%上昇した計算だ。上出来だったといえそうだが、米国のダウ工業株30種平均は1万7685ドルから3万5950ドルへ103.3%上昇した。日本経済も日本の株式相場もなお五里霧中だ。 日銀が12月20日に発表した2021
2021年は陽線で終わるか
新型コロナウイルスと日本の政権刷新に揺れた東京株式相場もあと1カ月を残すのみとなった。しかし、11月26日に「オミクロン型」と呼ぶ変異型の出現が伝わり、世界中で感染拡大への警戒感が募っている。日経平均株価の2020年末の終値は2万7444円。今後の展開次第では年末にこれを下回る可能性もあり、予断を許さない。 年間で日経平均が陽線になることと、年間の騰落率がプラスになることとは微妙に異なる。ロ
株式投資は金持ちの「遊び」か
米国の自動車メーカー、テスラの時価総額が1兆ドル(114兆円)台に乗せたり、暗号資産ビットコインの取引価格が6万ドルを超えたりと、金融・資本市場では伝統的な投資尺度が消えたと思わせるような出来事が相次いでいる。ついていけない人も多いと思うが、あり余るお金を持った富裕層の「遊び」が激しい値動きをもたらしている可能性がある。 新興の電気自動車メーカー、テスラがいくら伸びているといっても、自動車販
政権刷新に揺らぐ株式相場
予想が的中したか外れたかは別として、9月29日に岸田文雄氏が自民党の新総裁に選出された。8月27日に同氏が総裁選への出馬表明をしたことが日経平均株価の3万円乗せの原動力にもなったから、岸田新首相への市場の期待は大きいといえよう。とはいえ晴れの日の日経平均は9月に入って2回目の600円超の下落。海外発の悪材料で株式相場は難しい局面に入っている。 世界の株式相場は新型コロナウイルスの感染者の増加
老後2000万円問題が消える余波
総務省は8月6日、2020年の家計調査年報(家計収支編)を公表した。2月5日に公表したデータに専門職員の分析などを加え、報告書のかたちにしたものだ。これによると、夫婦高齢者無職世帯の毎月の家計収支は若干の黒字になっている。2019年に金融庁審議会が訴えた「老後2000万円資金不足問題」が消えたことになるが、とすると、投資優遇税制は何のためにあるのかという話になる。 2019年6月に金融庁審議
ESG投資への根本的疑問
新型コロナウイルスの感染抑制を目的とした営業自粛要請に従わない飲食店に対し、銀行融資や酒類の仕入れを通じて締め付けようとした政府に、国民は厳しく反発した。では温暖化ガスの削減に背を向ける企業に対して、政府が資金調達コストが高まるような政策を講じるのは正しいのだろうか。判断を民間金融機関に委ねずに、政府がからめ手から企業の「行儀の悪さ」を罰するのは、違和感がある。 顧客への酒類の提供と感染症の
なぜか金利が上がらない
2021年に入り、株式市場にはインフレ懸念がこびりついている。新型コロナウイルスの影響が薄れるにつれ、経済活動が正常化し、棚上げされた需要(ペントアップデマンド)が集中的に出てくる可能性があるからだ。しかし、日米ともに金利の上昇懸念がなぜか薄れている。市場のシグナルは読み取りにくい。 株価と企業業績との関係が直線上にないように、金利と物価動向との関係も直線上にはない。世界の投資家が最も注目し