【初・中級者向き】ベートーヴェン「第九」と逆イールドとファーウエイ
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マーケットEye, 無料記事 今井澂, 今井澂のシネマノミクス
楽団員のボーナス支給のためもあるのだろうが、ともかく日本中で200回演奏されると聞く。やはり年の暮れは「第九」で一年間をシメたいと思う人が多いんだろうなあ。
少し調べてみたら、F・シラーの「歓喜の歌」は元来、秘密結社のフリーメーソンでひそやかに歌われたもの。ベートーヴェンは感動し、9節108行の全部に作曲しようとしたが果たせず、32年もたってから「第九」の最終楽章に三分の一、36行を採用した、とか。
私は「第九」のウィーンでの初演(1824年)ではベートーヴェンは完全に音が聞こえず、歌手がソデをひいて客席の拍手を教えたとモノの本にあるが、後世の人が作った伝説だと思う。
ドイツ系の聴衆は拍手と一緒に床を足で踏み鳴らす。
私はいろんな国で講演したが、ドイツはもちろん、スイスではドイツ語圏のチューリッヒも足を鳴らしして称賛していただいた。もっともウィーンではやったことがないので、分からないことは白状するが、まあドイツ圏だから同じなら、地響きでわかるはずだ。
最近の世界的な株価下落材料は主に二つ。
第一が米国債券市場での逆イールド。第二は言うまでもないが米中覇権争いだ。ついでに米国政界の不安もあるが、これはまだ表面化していない。
私は以前から、米国景気の後退の予兆として米国国債10年債、2年債のイールド(利回り)の差が重要、と申し上げてきた。これを一番早く報道するのはテレ東のモーサテ、新聞には出ない(2年物金利)数字が分かる、とも。
ただし、逆イールドの先行性は正直言って早すぎる。とくに12月3日の米国債券市場では5年債利回りが2年債利回りを下回る長短逆転の発生(逆イールド)は、799ドルの米国株式市場の大幅安につながった。
本当は10年債と2年債の利回り比較するのが正しい。しかし今回の下げではまだこの組み合わせでは発生していない。今回悪材料になった5年債と2年債をとった場合、逆イールド発生と景気後退開始の時期の差は次の通り。
1998年12月の逆イールド発生から後退開始まで1年7か月。1998年6月の発生から後退開始まで2年9か月。
現在のマーケットに近い2005年12月の逆イールド発生から2007年12月の景気後退期入りまで2年間。つまり先日の逆イールドは2020年12月の景気後退を予告していることになる。
株価が急落したのは、恐らくAI運用のファンドの自動的な売り。それにヘッジファンドの今年の運用は不成績なので解約が多く、現金を準備するための売りが重なったためだろう。
前記した逆イールド開始から景気後退会社時期までのNYダウの動きは、98年12月から90年7月まで34%上昇、98年6月から2001年3月まで10%、2005年12月から2007年12月まで24%上昇。アレレと思う位上昇している。つまりこの間は本当に景気指標が悪化し、後退が確認されるまでは、ほかの材料、今でいえば米中覇権争い、に違いない。
「10月4日で時代が変わった」というのが私の認識だが、ペンス副大統領の方はハドソン研で開戦宣言を行ったくらい本気だが、トランプ大統領の方は本気かどうかはわからない。
先日の米中首脳会談でも、習近平側から、まず手始めの提案として「フェンタニル」という麻薬を中国国内でも禁止する、と述べたが、トランプ大統領は大ゴキゲン。続く本番の議題で全部中国の提案にOKを出しそうなので、ボルトン補佐官が注意したそうな。(ちなみに米国ではこの麻薬で年5万人が死亡。中国からの輸入だ)
ご本人は先日の中間選挙で大豆などの農業州で支持が落ちなかったので、米中覇権争いに腰が引けている。そこでペンス副大統領がリードする形で、先日のファーウェイ副会長(美人ですな)の逮捕も推進した、という推測を私の情報ソースは話してくれた。やはり情勢次第で「内部クーデター」かな。
私は実は米国の10年ものの長期国債利回りが下降していることに注目している。ひところ3・3%が現在は2・8%台。
債券価格は上昇。これは①投機筋が売り玉を買い戻している②中国が米中貿易戦争にもかかわらず売り玉を大量に出していない③NY連銀が自行の権限で資金供給を増加させている、の三つの背景。それにひょっとすると、だが、新冷戦不況で、デフレに米国はじめ世界が突入する事態を予測して動いているのかもしれない。誰も金利の低下の方は騒いでいないが、私には不安に思える。
イマイ先生「第九」とのかかわりを書いていませんね、といわれそうだ。しかし合唱の最終部分のシラーの詩の引用を。「転げ落ちるのか?諸人よ?」私はNY株に弱気なのです。日本の方は「我々は無我夢中で、天なるあなたの聖域に立ち入る!」。真意をお汲み取りください。
(第937回)2018・12・9
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