ピーター・ドラッカー「見えざる革命」と米国労働省の新規制がもたらす日本株への巨大な需要(第1091回)

少し前にもこのテーマで書いたがその後さらに確信を深める情報を入手したので、再び述べることにした。

 実はこの「見えざる革命」は、私の人生を決めた一冊、と言っても過言ではない。

 山一証券経済研究所のNY支社所長時代、冬の雪にとじ込められたある日、偶然手にとって読みふけった。1980年代のことだった。

 当時は、米ソ対立の冷戦時代。共産主義(社会主義)の優位性をソ連は宣伝していた。

 ピーター・ドラッカー博士は「資本主義は共産主義(社会主義)よりすぐれている。理由は「年金を通じて、米国では労働者ひとりひとりが、巨大企業のオーナーになれるからだ」と述べた。

 まだ日本では「年金」そのもの意義について理解度が浅かった。また日本株は割安だった。そこで「米国の年金に日本株を買わせたら。」と本社に提案。山一証券経済研究所に企画と運用をする部をつくり、私自身が投資勧誘のセールス担当部長になった。

 これが後に山一投資顧問となり、私は四大証券系投資顧問の一角として「証券投資顧問業法」の起案にひと役買うことになる。

 後に私は国民年金基金連合会の「確定拠出年金規約策定委員会」の委員とし、いわゆるイデコのスタートにもかかわることになった。

 まあ、以上は年寄りの昔ばなしである。

 今回私がこのブログを書いたのは、10月26日の日経新聞一面の記事が、日本株への巨大な需要を生むだろうと考えたからだ。

 「米、企業年金にESG基準―法規則改正、収益基準から転換」という見出しである。

 私の目についた部分を抜き書きする。

 「(エリサ法の)改正案では、年金の投資や投資行動評価では『あらゆる要因を考慮できる』とし、気候変動リスクや取締役会の構成などを挙げた」

 私はこう考えた。

 「米国の公的・私的年金はこの新しい規制に従う。中国への投資は、この規制ならば、環境問題では多くの中国企業が落第点。」

 「従って、中国企業への年金による投資は少なくとも新規資金は流入しない。逆に合格点をとっている日本企業へは、米国の年金は投資を増やす。

 早速、研究してみたら、何と最大40兆円程の投資が日本株に発生することがわかった。

 計算の根拠は次の通り。

  1. 米国の公的・私的年金の総額は、34.2兆ドル。1ドル114円として3958兆円。
  2. 日本株の比重は6.2%。日本円にして34兆5800億円。一方中国株は4.0%。1兆4131億ドル。

その4分の1が日本に回ると、3533億ドル。1ドル114円として40兆円強。

もちろん、ただちにこの投資が始まるわけではない。

すでに日本株の中で、王道銘柄すなわちソニーや日立製作所などが動き出し、明年4月からは、外人好みの市場が動き出す。

 現在のPER14倍以下は、どうしても安い。私が若ければNYやワシントンに飛んで年金の投資委員会メンバーに取材し、明年の新規投資をどの商品にするかを聞き出すのだが。

恐らく2022年から、日本も世界もデフレを脱却し、インフレ時代に向かう。

『脱炭素』は必ずインフレを起こす。来週、これを分析します。乞うご期待!

米国公的・私的年金の規模

               (2021年6月現在。単位兆ドル)

公的年金    7.5
1. 連邦政府 2.0     2. 地方政府  5.5
私的年金    27.22
1. 民間企業確定給付型(DB)  3.5
2. 同確定拠出型(DC) 10.36
3.  IRA   13.36
総合計     34.72

関連記事

松川行雄の相場先読み
9月高値を抜けるかが
二番底後の戻りを左右する

松川行雄 増田経済研究所 *「松川行雄の相場先読み」は今後、有料記事で掲載予定です。サンプルとして

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

レーニンの封印列車と、習近平中国国家主席の台湾進攻の時期(第1097回)

 このブログの読者の皆様は、レーニンなんて名前を聞いたことがないという 向きもあるかもしれな

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

三島由紀夫「橋づくし」と宇宙開発と外国人機関投資家の買っている九銘柄 (第1031回)

 三島由紀夫の、没後50年。先日、日生劇場で劇化上演したのを観に行った。残念ながらとんでもない愚作

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「タイタニック」と訪米中に聞いた面白い話
今井澂・国際エコノミスト

NY行きの機内で「バードマンあるいは(無知でもたらす予期せぬ奇跡)」を観た。アカデミー賞作品、監督賞

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

【初・中級者向き】映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」と安倍さんの内憂外患

2018・4・1 スティーブン・スピルバーグ監督でメリル・ストリープとトム・ハンクス共演、と来

記事を読む

PAGE TOP ↑