木村喜由のマーケット通信
日経225来期予想PERはインデックスベースで19.38倍と割高も、割安銘柄はまだある

 日本個人投資家協会 理事 木村 喜由

先週金曜日(3月13日)に会社四季報、日経会社情報が発行され、新年度の業績予想が更新された。あと2週間もすれば3月期末を迎え、その後は新年度となるが、株式投資の基本が当期利益予想に基いたPERという尺度に基いており、もはやすべての投資家は来期予想PERに移行しつつある真っ最中といってよいだろう。そこで筆者も一足先に来期予想ベースで日経225採用企業のPERを計算してみた。

時価総額ベースの来期予想PER14.95倍は割安だが

まず全体の時価総額だが、345兆4188億円となった。東証一部全体では約565兆円となり、あと6%ほどTOPIXが上がれば過去最高だった1989年末の水準に届く位置である。

筆者の今期予想純利益は21兆6264億円、来期は23兆1091億円である。来期の純利益は7%ほど増える。したがって時価総額ベースで見れば、今期予想PERは15.97倍、来期予想は14.95倍である。筆者の予想は今期についてはコンセンサスよりやや高め、来期についてはわずかにコンセンサスを下回る水準であり、予想自体は多くの投資家の眼に違和感がないと思う。

しかしインデックスベースとなるとやや趣き(おもむき)は異なる。

225種のみなし株価合計は495,118.7円、これに対応する一株利益の合計は今期23,814.2円、来期は25,550.7円。PERはそれぞれ20.79倍、19.38倍である。PERが15倍以下と聞けばいかにも安いな、買いだな、という気になるが、20倍付近となると、新規買いには慎重にならざるを得ないだろう。そういう気分を含んで、前回のレポートを書いた。

急落を引き起こすヘッジファンドの手口

全体に割安感があるのだから問題ないだろ、と考える人はあまりヘッジファンドのやり口をご存じない方だろう。猛烈な先物売りが行われた場合、割高になっている品薄銘柄を好き好んで拾う投資家はいないので、これらは物凄い勢いで下がる。下がったことにより、インデックスも下がるが、それまでロング(買いポジション)を持っていた投資家はやむなくロスカットすることになり、連鎖反応的に下がる。

実は、高値で売り逃げたヘッジファンドは売りに転じ、意図的に逆方向の動きを増幅させている。だから目を疑うような急落場面が実現してしまうのである。 もっと上値を取る可能性は否定しないが、本日の動きから見てユニクロ、ファナック、ソフトバンクの〝値がさ御三家〟は一杯一杯、3月に入ってからの急騰で業種として比重最大となった薬品株は総じて利食い売り先行となっており、目先天井を付けたような印象を受ける。ここから強引に切り返して新高値を取るには相当の腕力が必要で、やればやるほど高値で買い増すことになり、リスクが大きくなる。だから上値は知れたものだろう。

大体相場というものは皮肉で、皆が強気に傾斜したところで思わぬ悪材料が飛び出すもの。過度の楽観は避けるべきだろう。

ディフェンシブ銘柄の驚くべき高PER

筆者は個別銘柄の動きをよく見ている方なので、今の上昇が非常に偏った銘柄の上昇によるものであることがよく判る。おそらくは欧米の年金などのバランス運用を行なっている巨大機関投資家が、最近の債券利回りの低下に耐えかねて、少なくともインカムゲインが優良債券よりも多く、下落リスクの低い投資物件はないかと散々探し回った後、ディフェンシブ銘柄すなわち業績変動が乏しくて株としての面白みは少ないが、その分割安感があり、業績安定度と配当利回りが魅力になるという銘柄である。 具体的には食品、薬品、家庭用品、トイレタリー、警備、電鉄など、よほど経済環境が変わらない限り需要が落ちないし、そこそこの付加価値の確保が見込める業種である。

で、最近の株価を見るとぶったまげる。4452花王は年初安値4,601円から6,108円、4507塩野義3,060円から4,060円、2269明治HD10,690円から15,460円、9735セコム6,530円から7,765円、9020JR東日本8,710円から10,450円といった具合。 よほどの新規商品を投入しない限り成長性が高いわけではないから、PERは市場平均を1-2割上回るのが普通なのだが、花王は35.1倍、塩野義46.4倍、明治43.4倍、セコム23.3倍、JR東日本は20.5倍という具合。

伸び悩む銘柄は割安、チャンスはまだある

こんな銘柄があるのに全体のPERが16倍程度であるということは、低PERで不人気のまま、さほど上がっていない銘柄が非常に多く残っていないということを意味する。 だから、上げ相場に乗り遅れたと嘆く必要はない。今上がっている銘柄は、長期金利がゼロに近くなるという史上初めての異常現象に過剰反応した結果であり、米国が利上げに転じれば長期金利が上昇傾向に転じる、つまり長期金利の先のほうが上がることにより、長期と短期金利のスプレッドが生じて株式を持つ誘因が下がり、株価はもう上がらなくなる。

今伸び悩んでいる銘柄群は、景気敏感色の強いものが多いように思えるが、円安メリットと景気減速リスクを天びんに掛けると割安感のほうに軍配が上がる。だからチャンスはまだまだ残っており、過剰にあせる必要はないのだ。

ボラティリティー相場にうまく乗れ

また最近の相場のボラティリティーも重要だ。バイアンドホールド(買い持ちしたまま)よりも、年に何回か売ったり買ったりする方が成果が上がる公算が高い。

いや、自分はそんな短期の上下動は気にしないのだ、とおっしゃる方もいるだろうが、実際問題として、年間の上昇下落が上下各20%程度の銘柄の場合、月間の上下動は10%を越えるのが普通だ。

特に近年はボラティリティーが拡大しており、漫然と持ち続けるのは危険なこともある。したがって努力して月間5%だけ取れるよう工夫してみる価値は十分あるのである。年に6回トライして3回に2回成功できれば、その銘柄については年間収益は10%前後改善する。お持ちの好きな銘柄について、チャートを見ながらよく考えてみることをお勧めする。

Vol.1280(2015年3月17日)

*木村喜由のマーケット通信は今後、有料記事で掲載予定です。サンプルとして無料公開しています。

(了)

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