木村喜由のマーケットインサイト
米国利上げ接近、波乱含みで軽めのポジション維持
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マーケットEye マーケットインサイト, 木村喜由
日本個人投資家協会 理事 木村 喜由
<2015年6月号>
世界景気減速予想なのに債券利回りが上昇
5月12日以降のマーケットは、かなりトリッキーな動きとなった。5月末までは米国を中心に世界の経済成長率が減速しつつあることに反応し、リスクオフから米国に資金が戻ると見て、米国長期金利が低下、ドルは上昇した。一方、通貨下落を好感した日欧株価が上昇、特に日本株は6月1日にかけ歴史的な12連騰を演じた。
6月に入ると一転して欧州景気の回復を見込んで欧州金利が一段と上昇、米国でもイエレンFRB議長が年内利上げの方向を示唆したことから、ゼロ付近まで低下していた独10年債利回りは1%超となり、米10年債も2.49%まで0.6%上昇した。
ドル円は一時125.7円付近まで値上がりしたことから、日本株は先物主導で高値を維持したが、日銀総裁が過度の円安を牽制する発言を行ったことから、日経225は2万円に接近する場面もあった。
上昇相場で波乱余地はさらに拡大
筆者は総じてリスクオフの色彩が強まったことからやや警戒的なスタンスを維持すべきと書いたが、結果的にはヘッジファンドが為替や日本株先物に大きな買いを入れたために、弱気筋の締め上げ的な上昇相場が発生した。しかし裁定取引の残高が膨張するなど、今後の波乱の余地はさらに拡大したと解釈している。今期予想利益が伸びず、長期金利がやや上昇していることは、高値波乱を暗示しており、しばらくは先駆株を売り、慎重姿勢で臨んだほうがよい。
世界銀行は今年の世界経済の成長率見通しを2.8%に引き下げており、債券相場の動きとはチグハグだが、これはそれまでの債券の値上がりが中央銀行の買いを強く見込んで行き過ぎていたということだろう。10年20年先のインフレ率を予想した上で採算をはじけば、いくらドイツが健全な国としても長期金利ゼロは行き過ぎだった。
その伝で言えば、黒田総裁に変わってからの日銀は完全に行動様式が変化しており、彼らが物価上昇率2%の目標を掲げている以上、債券利回りには潜在的に強い上昇圧力が掛かっていると考えるべきだろう。市場は足元の需給バランスに寄り掛かって今の相場に付いて行っているだけで、今の水準に強い根拠があるとはいえない。
株にはあまりないが、日経225で以前強い割高感
それに比べれば株式にはあまり割高感がない。225採用銘柄の「時価総額ベース」予想PERは16.1倍、PBRは1.41倍、過去1年間の包括利益ベースROEは16.53%もある。収益が下がらないのなら、株はぜひ持ち続けるべきだ。
ただし各銘柄1単位ずつ組み入れた日経225インデックスだと、PERは19.8倍、PBR1.83倍と割高感が強くなる。それは裁定取引やインデックス投信の残高が膨らんだため、発行株数の少ない銘柄が企業内容に関係なく値上がりしているからである。
年初から6月1週までの23週間累計で、個人投資家は4兆1200億円売り越した。買い越したのは外国人2兆8700億円、自己(取引所会員権を持つ証券会社の自己売買で、ほとんどが裁定取引)2兆900億円。個人の売り越しは、アベノミクス相場が始まって以来17兆7000億円に及ぶ。公募の引き受けで1兆円強は市場外で買ったとしても、圧倒的な売り越し。これは相場観による売りではなく、8割方が高齢になり難しくなった相場に付いて行くのを諦めた投資家の引退売りと思われる。
日経225に品薄感、投機筋の思いのまま
裁定買い残がそれだけ膨れ上がっているということは、225採用銘柄の品薄化が一段と進んでいるということで、仕手株の天井圏と同様、買いで一段高に持っていくのも、大きく売り崩すにしても、大手投機筋の思いのままということである。今回のSQ直前の夜間取引も含めた225先物の大暴れぶりを見れば納得できるだろう。
日本株全体が割高などとは思わないが、短期的利益を追求する連中が大きくポジションを取った結果が今の株価であると言われれば、安心して見てはいられない。というのは、もし市場全体を覆う弱気材料が出現すれば、先物ロングを持つ連中が我先に売り出すことは確実だからだ。
先物投資家は為替FX取引の参加者と同様、ロスカットポイントを設定している向きが多く、材料の真の影響に関係なく、価格がそこに届くと連鎖反応的に売り物が出て売りが売りを呼び、自動的にパニックを作る構造になっている。
TOPIXかJPX400のETF投信が賢明
高齢の投資家がインターネットを悪戦苦闘していじりまわし、やっとのことで利益にありつくよりは、バフェット流に割安で質の良い銘柄を抱え続けるか、市場平均に連動するETFのインデックス投信を持つのが賢明である。高過ぎるんじゃないかと思えば売り、安過ぎるもしくは余裕資金があるときに買い増しすればよい。
どん底で買えるなら225ETFがベストだろうが、普通の投資家が着実なリターンを求めるならTOPIX型、JPX400型が一番だろう。ただしJPXは8月6日に30-40銘柄の入れ替え発表、月末に実施があると見られ、この前後の時期だけパフォーマンスが悪化する(除外銘柄が叩かれ新規銘柄が買われる)。高等テクニックを言えば6月から9月中旬まではTOPIX買いJPX400売り、それ以外の時期は裏返しのポジションを持つとよい
(了)
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