米利上げ後はドル強気筋の利食いで円高も
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マーケットEye マーケットインサイト, 木村喜由
前回号発行時は日経225が2万円手前だったが、資源価格安により途上国景況感悪化、デフォルト懸念が強まっているため、今後は反動安に警戒、割安感の強い銘柄以外ポジションを落としたいと書いた。その後、一時2万円に乗せる場面もあったが、本日(11日)のメジャーSQでは19000円割れとなった。
米利上げはゆっくりと、円高株安に要警戒
今後の焦点は来週の米国FOMCでの利上げだが、実施は確定的である。過去の経験では米国利上げの際はむしろドルが大きく売られることが多かったが、今回はイエレン議長が今後の利上げペースは緩やかなものになると宣言している。
足元の米国経済データは景気拡大ペース鈍化を示すものが多く、順調に行ってもその次の利上げは6月以降と見られ、これまでドル買い株式先物買いを進めてきたヘッジファンドが、いったん利益確定に動く可能性が強い。したがって円高方向に動いて株価も下がるパターンには厳重警戒が必要だ。
ドルと株式先物買いのポジションが解消へ
実際、9月末以降の上昇場面では投機筋のポジション積み増しが鮮明。IMMドル円先物では投機筋買い越し10万枚と過去のピークに近く、東証での裁定買い残高も6億株増加した。SQが安く終了したものの投機筋の買いはあまり整理されておらず、18000円あるいはそれ以下に向けて一段の下振れの可能性が高い。
一層警戒的なスタンスが望ましいと言えるが、逆に言えば大幅な突込み場面があった場合は買い場となるので、弱気一方で見るのも間違いであろう。10日終値で計算した225採用銘柄全体の予想PERは14.65倍、PBR1.29倍に過ぎず、割高感は乏しい。一段安の場面は年金も含め大量の押し目買い需要が控えている。
ただし225インデックスベースではPER18.9倍、PBR1.69倍であり、加重平均より3割も割高。先物やインデックス投信を買うのはしばらく待った方がよい。
リバウンド狙いのPER上位27社
225採用銘柄で来期予想PER上位から時価総額10%まで選ぶと、エーザイ、協和キリン、コナミ、菱地所、中外薬、アドテスト、キッコーマン、ユニクロ、花王、イオン、東電、トレンド、東海カ、小田急、電通、宝HD、テルモ、NTTデータ、住友大日本薬、凸版、塩野義、ユニー、三菱倉、丸井、パイオニア、明治HD、資生堂の27社で、平均PER32.4倍である。これらの銘柄は、人気があるそれなりの理由はあるが、平均株価の突込み場面で拾い、リバウンドを取る対象と割り切るべきだ。
長期狙いのPER下位26社
逆にPERの低い方から時価総額10%まで選ぶと、住友商、丸紅、トクヤマ、伊藤忠、JX、りそな、中部電、双日、浜ゴム、新生銀、三菱マテ、三井物産、三井住友銀、大和証、関西電、郵船、東ソー、日本曹、日本紙、いすゞ、菱商事、マツダ、ミネベア、長谷工、住友鉱、東芝で、平均予想PERは7.9倍で、最上位10%の4分の1以下。ちなみに次点がトヨタである。
長期で買うならこれら不人気割安株グループから選ぶのがお勧めで、この先株価が1割も下げるような場面があったら積極的に買ってよい。ただし不人気なのにはそれなりに理由があるので、環境が変わるまでじっくり保有する覚悟が必要。もちろんその忍耐に見合う報酬は得られるだろう。
資源価格安で途上国景気はしばらく低迷
来年の景気はパッとしないだろう。原油高で調子に乗った資源国は軒並み巨額の財政赤字を抱えることになり、投資していた株式や債券を大量に売っている。
900兆円あると言われるソブリン(政府系)ファンドの7~8割は産油国のもの(上位はノルウェー、サウジ、クウェート)だが、上半期に38兆円分換金売りが出た。日経が報じたようにサウジが上位株主となっていた日本企業の持ち株も減っている。商品市況が一段と下げているから、換金売りは一層増えるはずだ。
さらに原油暴落でベネズエラ、ブラジルのデフォルト懸念が強まっている上、中国はいよいよ余剰在庫、過剰設備の調整に本腰を入れ始めたと伝えられている。しばらく景況感については明るい話が出てくる公算が低い。痛手を受けている強気筋がポジションをぶん投げたら簡単に株価は一時的に10%くらい下がるだろう。
資源安はいずれ景気を支える
もっとも、株価が下がれば待ってましたと買う投資家が現れ、自社株買いも盛大に実施される。そもそも株価水準が低いから、借金して買っても金利コストより配当金の方が多い企業が多い。資源価格の下落は需要家である企業や個人に同額の資金移転が起こっているのだから、企業収益や個人可処分所得にはプラス。タイムラグはあっても景気を支える要因になる。
来年の相場は基本的に今年と同じようなレンジで上下動を繰り返すのではないか。円高に振れたら来年は小幅減益になるかもしれない。それでも企業価値に比べて株価が低い企業が多いから、それほど大きな下値はないだろう。基本は安値を拾い、あまり欲を出さずに利益確定、ヒットアンドアウェイがよいだろう。
(了)
日本個人投資家協会 理事 木村 喜由
マーケットインサイト<2015年11月号>
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