映画「ビリーブ 未来への大逆転」とトランプ再選への大リスク(第1000回)

 おかげさまでこのブログも1000回を迎えました。皆様のご支援に感謝いたします。また今回のコロナ肺炎流行で被害にかかられた方々に、お見舞い申し上げます。

 今回あまり有名でもない作品を取り上げたのは、現在も活躍する主人公が務めている米国最高裁が、3月に入ると二つ、重要な裁判の口頭弁論を開始するからだ。

 6月末に判決が下るが、市の内容によってはトランプ→ペンスの政変か、民主党への政権交代になりかねないほどの裁判だ。

歴史的な事件になるかもしれない。

 しかも判決の決定権は最高裁長官が握っているという。まあスリル満点の裁判になること必至の事態である。

 詳細は後記するので、映画の紹介に入ろう。

 米国連邦最高裁で88歳でも活躍している高名な女性判事ルース・ベイダー・ギンズパークが主人公の作品。

 ルースはブルックリン生まれのユダヤ人。ハーバード、コロンビア大学で極めて優秀な成績を残したが、裁判所も法律事務所も女性であることを理由に採用してもらえない。ロー・クラークつまり事務職員になる。

 その後ラトガース大で教員の職を得、その実績を買われてコロンビア大で女性初の常勤教員となる。同時に自由人権協会で法廷闘争を多く手掛け、性差別と戦う法律家として全国的な名声を得る。1993年、60歳でクリントン大統領によって最高裁判事に任命される。

 映画は1970年代のルースの扱った案件を描く。その案件はある母親を介護しながら働く男性。当時の法律では未婚の男性は介護費用の所得控除が認められない。

 そこでルースは「高等裁判所の判事は男性ばかりだから、男性の性差別をなくす判例を作れば、女性差別をなくす有力な事例になる」と考えた。

 あとはもうお分かりだろう。裁判でのルースの活躍で勝訴し、時代は大きく転回する。

 さて、問題のトランプ大統領の政治生命の足を引っ張りかねない裁判二つを説明する。(この情報はワシントンの私の情報源である「ワシントン・ウォッチ」の編集人山崎一民さんにお願いした。)

 第一は正副大統領を選ぶ選挙人ルール。ワシントン州とコロラド州で生じたルール違反訴訟を一括で審理する。

 全米の選挙人は538人.この過半数をどう獲得するかが勝負だ。しかしワシントン州ではクリントン候補への投票を契約した選挙人14人のうち4人が別の人物に投票。コロラド州も9人の選挙人のうち一人が別の人物に投票した。

 「FAITHLESS ELECTOR」と呼ばれる。ワシントン州では、州法に従い、一人千ドルの罰金を徴収したが、言論の自由を奪うとして選挙人が逆に州を提訴した。

 一方コロラド州は州法に基き、このFATHLESS ELECTORを辞めさせ余人に置き控えた。そこで連邦最高裁に持ち込まれた。

 最高裁判決がトランプ再選への懸念材料になっている理由は何か。現在の選挙人が誓約した候補に投票すべきという現状維持ならよいのだが、「制約にとらわず、自由投票できる」と判決した場合が問題である。

 2016年にトランプ氏はヒラリー・クリントン氏に対し得票数で286836票、2・1%差で負けたが、選挙人は304人で勝利した。それだけに最高裁判決はトランプ再選に影響を与えるとみられる。

 第二はトランプ大統領の納税記録公開をめぐる訴訟である。勿論こちらの方が重大だ。

 二つ訴訟がある。第一は米国下院の監視委員会で、記録提出を召喚したのをトランプ側が拒否したため。第二はマンハッタン地検がトランプ氏不倫口止め料疑惑捜査の一環で納税記録提出を求めたが、これも拒否され訴訟になった。

 これまで下院、マンハッタン地検ともにホワイトハウス側は敗訴している。判決で公開せよ、になれば、当然記録公開。最高裁がこの案件で取り上げないことを決めても記録公開になる。

 昨年12月13日、二つ一括して審理を決めた。選挙人、納税記録ともに3月口頭審理、6月に判決が出る。

 前述したが、後者の方が重大に決まっている。これまで叩けばホコリが出るとみられて来たが、実際の脱税が明らかになれば、再選はおぼつかなくなる。

 トランプ大統領は昨年11月21日に「大統領選挙以前に納税記録を公表する」「私は潔白だ」(公開すれば)私が金持ちだということが分かる。それ以外何もない。」

 その通りなら何も問題はない。しかし「トランプ・ウオッチャー」の多くは「策略」とみている。それはツイッターと、米国最高裁に上告したタイミングである。自ら納税記録を公表すれば、米国最高裁の審理はむようになることを狙った策略というストーリーだ。

 たしかに、ツイッターでいうくらいなら、その時点で公表すればよい。やはり延ばし延ばし、しているのは、「何か後ろ暗いところがあるのではないか」とカングリたくなる。それに、ツイッターで、トランプ氏がよくうそをつくのも有名だ。

 そのせいかホワイトハウス全体が、トランプ援護のリップサービスを最近開始した。

  1. 2月14日。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は「9月に追加減税を発表する。一部の減税措置の恒久化、中間層は対する10%減税も」と述べた。
  2. CNBCは「収入20万ドル以下の国民対象に最大1万ドルの株式投資への税制控除を検討」と報道。
  3. ピーター・ナヴァロ補佐官は、前大統領首席補佐官がホストをつとめるポッドキャストは昨年年末に出演。FRBの金利引き下げが条件にダウ3万2000ドル、ナスダックの方が上昇率の方が高いだろう」。米国個人投資家には夢のような発言だろう。

一方、民主党の方は混戦で、トランプ打倒にはカネ不足だし、候補の政策も広範囲の国民の支持に至るまい。従ってトランプ再選の可能性は(最高裁の判決次第だが)本来なら極めて高いはずだ。

 ところが、最高裁判事9人の構成を見ると楽観しにくい。

 判事は9人。親トランプとみられる判事は5人、反トランプは4人で、一見アンチ・トランプの判決が出るはずがない。しかし親トランプのはずの最高裁の長官ジョン・ロバーツ氏をトランプ氏はオバマ裁判官か」とツイッターで述べたのに長官は反発。また、理屈にあった判決をするのが有名な人。このロバーツ長官次第なので、判決の行方はわからない、というほかない。(忘れる所だった。88歳のルースはアンチ・、トランプだ)

 イマイ先生、いつだか、トランプ→ペンスの政権交代を言っていたじゃないですか、と言われそうだ。

 1984年から9回の大統領選の予想を的中させたアメリカン大学のアラン・リットマン教授が、当初トランプと言っていたが、11月になって急にペンスと言い始めた。大当たりしている人の発言だから、これを重視するのは当然だろう。

 最近の情勢は違うようだ。前記した「ワシントン・ウォッチ」の編集人山崎一民さんに私が質問したところ、次のよう会回答をいただいた。

 「リットマンのペンス大統領予測は、共和党指導層が、トランプは予測不可能で、コントロールも不能。議会運営ができないと、同党幹部が考える。そこで民主党のトランプ弾劾に動けばそれに乗り、制御しやすいペンスを担ぐ、という筋立てであった。

 現実にはトランプ氏を切り捨てる空気はない。例えばミッチ・マコーネル上院院内総務の対トランプの姿勢から見て、共和党議員は続々親トランプになっている。」

 そこで山崎さんは「リットマン説は話のタネにもなっていない」と回答してきた。

 結論を出そう。

 税務申告問題で、トランプ大統領が「シロ」なら11月の選挙で再選される。圧勝と思う。しかし、6月の判決で脱税が明らかになれば、米国憲法修正第25条第4節の規定により副大統領ペンス氏の大統領に就任する。トランプ氏は自発的に辞任、恐らく司法取引で訴追は免れる。

 ではその可能性はどうか。3月の口頭審問が始まって、資料が公開されれば、一挙にトランプ氏の足を引っ張る材料がなくなる。勿論、株は上昇するだろう。やはり3万2000ドルは必至だろう。それ以上かも。その楽しみなシナリオの可能性は、その反対のダメシナリオと七分三分だろう。

 従って私は、3月の裁判の進行をできるだけ収集したい。状況はできるだけ報告してゆくつもりだ。

 なおオマケ。パルナソス・インベストメントの宮島忠直ストラテジストはいま海外にいるが、重要なコロナ肺炎と東京五輪、総選挙の情報を送ってくれている。(来週でもいいと思ったが、コトの緊急性を考えてオマケした)

 東京五輪は9月または10月にする。IOC側から持ち込まれたアイデア、とのことだ。(実現性は高そうだ)。

30度を超える盛夏にはコロナウイルスは死滅するし、マラソンも東京でやれる。

 安倍内閣としては4月末感染終息が目標。検査体制の拡大充実、ワクチンの早期開発(エイズ治療薬の転用を含む)を大車輪で進め、五輪後の総選挙、というシナリオだ。これなら外国人投資家も、日本株を買うだろう。

それに富士フイルムの子会社の富士フイルム富山化学のアビガン(一般名ファピラビル)がコロナ肺炎に有効、という情報も入った。

災害に売りなし、である。連日TVを見ていると、悲観に陥りやすいが、それはダメ。

誰かが言っていたが、楽観は努力の産物、です。

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