【初・中級者向き】映画「グリーンブック」と激化する米中覇権争いと近づくNY暴落
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「グリーンブック」とは、」米国で人種差別が激しかった時代に、南部で黒人が利用できるホテル、バー、レストランのリスト。1936年から1966年まで毎年出版されていたガイドブックの名だ。
時代は1062年のNY。高級ナイトクラブの用心棒をつとめるトニー(ヴィゴ・モーテンセン)は改装のため閉店となった2か月間、ある黒人ピアニストのコンサートツアーの運転手として雇われる。
黒人ピアニストの名はドクター・シャーリー。ケネディ大統領のためホワイトハウスで2回も演奏会を開くほどの大物。なぜか黒人差別が強く危険な南部にグリーンブックスを頼りに二人がツアーに出発する。はじめは衝突を繰り返していた二人が信頼しあうのが画かれる。
試写会で私は観たが確かに面白い。二人のおじさんの物語だが、トロント映画祭で観客賞を獲得。76回ゴールデングローブ賞5部門にノミネートされ、オスカー候補、とか。
白人のバーに入っただけで袋叩きになりかけたドクターを助けたトニー。このシーンを観て、米中の最近の争いに似ているなと感じた。ドクターはいつもカティサークを1本持参してホテルの自室で飲んでいたがたまたま手元になく、白人専用のバーに入ったのがトラブルだった。
中国が、米国の虎の尾を踏んでしまったことが、コトの発端だ。2018年10月に発覚したアップルとアマゾンのプラットフォームに中国工作員によって仕込まれた泥棒チップ事件。
また決定的になったのが、昨年5月の中国による軍事ドローン119機による空母へのカミカゼ攻撃実験の成功だ。
すでに米軍は100機で1月に同じ実験に成功していたが、中国軍が泥棒チップを利用して盗んだのに激怒。これで全米軍と、共和・民主両党が一挙団結した。当然、USTR代表ライトハイザー氏の対中強硬路線に支持が集まる。
どうもトランプ大統領と、ウォール街出身のムニューシン財務長官、ウイルバー・ロス商務長官あたりは、米国経済への「返り血」を恐れているらしい。
ところがバカなことにダボス会議で王岐山中国副主席が、報道によると猛烈に米国の「身勝手な政策」を攻撃した。
これでロス商務長官ロス氏の「中国との合意などMles、MilesAwayと嘆息したのも当然だろう。30,31の両日の劉鶴副首相との交渉もどうなることやら。
王岐山副主席は本心では大変なことになった、と思っているに違いない。何しろ中国経済はガタガタ。中国人民元大学の向松作教授は「2018年のGDP成長率は公表されている6・4%でなく、なんと1・67%。大至急の経済対策が必要」と警告している。
そこでリーマン当時の4兆元の対策費には及ばないものの、ほぼ3兆元という大型景気対策を打ってみせた。しかし効果がでるには時間がかるし、輸出企業労働者と建設労働者、それに地域のミスマッチもあろう。
ライトハウザー氏の方は、パルナソス・インベスナント・リサーチの宮島忠直さんの取材によると「千歳一隅の機会としてプレッシャーを与え続けるべき」「株式市場に、また米国企業に打撃があったとしても、より大きな国家的損害を防ぐために、今は中国にプレッシャーを与えるべき」という現状認識だ。
これじゃ、NY株がいわば人質になっているわけで、有力企業の業績の悪化でも発表されたら(恐らくアップルあたり)やはり大幅下落だろう。上海株の方がもっと下がるだろうが。
金融データソリューションズの箱田啓一さんは、私は最近お付き合いし始めたばかりだが、下げ相場の底や、上げの潮目を非常に正確に予測をするお方だ。ごく最近では昨年12月25日の急落の日の底値を予想し、的中させた。
その箱田さんは2月14日の大底(ということはその前から下げているということだが)を予想。3月14日にダメ押しがあった後、5月の連休後もずっとたかい、と予想しておられる。ご参考までに。わたくしは信用します。
映画のセリフから。ドクターが言う。「勇気が人の心を変えるのさ。」
最後に。2月10日の講演会はおかげ様で着々と参加いただける方々が増えています。1月31日で割引期間も完了してしまうので、どうぞお急ぎください。
先週私は岐阜で講演会を開きましたが、終了後の賀詞交歓会で女性の方が、「東京での講演会に、行けないのでDVDを買います」と言ってくださいました。嬉しかったなあ。頑張るぞ!
(第943回)20119・1・27
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