2015年を読む⑥
逆オイルショックの真の狙いはロシア服従
長谷川慶太郎理事長
JAIIセミナーレポート
ジャイコミ編集部
1月24日、日本個人投資家協会の新春第一弾セミナーが開かれました。
タイトルは「2015年世界を読む」。講演のなかから注目のトピックスを数回に分けてお届けします。
まずは長谷川慶太郎理事長の話からどうぞ!
原油急落でも減産しないサウジアラビアの狙い
2015年の世界全体の経済の流れでもっとも大きな影響を与えるのは「逆オイルショック」です。原油価格が急落するなか、サウジアラビアは減産せず、その結果、原油は高値から半値になりました、これから先、一段と原油価格は下がるでしょう。1バレル20ドルまで下がります。サウジアラビアの狙いはシェール開発を抑え込むことだと言われていますが、そんなことは考えていないでしょう。
ロシアがOPECに加盟申請するまで下がる
サウジアラビアの真の狙いはロシアです。ロシアはOPEC(石油輸出国機構)に加盟していないアウトサイダーのなかで最大の原油生産国です。そのロシアを屈服させることです。ロシアのプーチン大統領がOPECの加盟を申請すれば、価格カルテルとしてのOPECが復活します。OPECの価格コントロールが機能するためには、アウトサイダーは潰さなければならないのです。
ロシアの外貨準備は昨年12月末に4000億ドルを切りました。ルーブルはまだ売られています。外貨準備の減少は続きます。ロシアの貿易収支を維持するために必要な外貨準備は2000億ドルですが、あまり遠くないうちに、ロシアは再び国際金融市場から追放されるかもしれません。
外貨準備が減り、貿易不能に追い込まれる
ソ連時代は貿易の決済が現金で行われていました。貿易では通常、90日間の支払い猶予がつきます。ユーザンス(usance)といいます。ところが、ソ連は70年間、つきませんでした。理由ははっきりしています。革命政権が債権をキャンセルし、フランスの金融は大打撃を受けたからです。そのようなことをする国には貿易支払い猶予を提供しないのです。金融市場というのはもの覚えが悪いところではありません。
ソ連に代わったロシアは、国際社会のルールに忠実に服従すると路線変更しました。今はロシアは通常決済で、支払い猶予が使えます。それが使えなくなったらどうなるか。ロシアがたった1つ売れる商品である原油と天然ガスでさえ売れなくなります。ソ連時代もそうでした。支払い猶予が使えないために輸出できませんでした。
それはプーチンにとっては悪夢です。サウジアラビアに屈服しなければなりません。
ウクライナ侵攻もストップ 問題はタイミング
ロシアでは月に20%ずつ外貨準備が失われていきます。同時にインフレが起こります。クリミア半島は放棄せざるをえません。ウクライナへの軍事侵攻をストップします。そうなってはじめて、サウジアラビアはロシアを信用します。そしてロシアはOPECの加盟を申請します。
早くて3月。遅くて5月でしょう。
それまではサウジアラビアは手を緩めません。1バレル20ドルになってもいいのです。サウジアラビアの原油生産コストは低く、1バレル2ドルで生産できますから、1バレル20ドルでも儲かります。100ドルを超える原油価格はサウジアラビアにとって濡れ手に粟でした。それを一時、辛抱すればいいのです。
サウジアラビアは腹を決めているのだとプーチンは判断しています。問題はいつ手を上げるか、です。プーチンはタイミングを測っています。サウジアラビアに頭を下げ、国際社会に忠実に従います。仕方がありません。石油戦争で勝敗のけじめをつけるときに、ロシアは負けたのです。
資源国は大打撃 オーストラリアも危ない
逆オイルショックが進行すれば、資源国は大打撃を受けます。
ベネズエラはデフォルト寸前、メキシコも危ない状況です。オーストラリアもデフォルトしかねません。そうなったらオーストラリアはどうやって食っていくのか。羊毛と肉しかありません。こういう厳しい状況が新たに発生してきます。これが逆オイルショックです。
ブラジルを筆頭に資源国は開発計画をキャンセルしています。ブラジルは海底油田の掘削を止めました。日本に発注していた船もキャンセルになりました。これは致し方ありません。それほどブラジルは追い込まれています。ブラジルだけではありません。
日本は景気回復 安倍晋三はツイている
先進国は皆、助かります。日本は黙っていても経済成長し、景気回復します。安倍晋三という男はついています。来年、参院の任期切れと同時に衆院を解散することを決断しています。衆参同日選で大勝して3分の2の議席を確保し、間違いなく憲法改正に向かっていきます。そのために必要なのは景気回復です。それが逆オイルショックで実現するのですから、ついているとしか言いようがありません。何も安倍晋三が決めたわけではありません。
逆オイルショックは経済に大きな影響を与えます。全体にトーンダウンします。逆オイルショックがもたらすのはデフレです。物価上昇率2%は達成できないでしょう。今年の世界経済は、デフレに強い国にはプラス、インフレでなければ食えない国にはマイナスです。資源国はどこもマイナス成長に陥ります。これが世界経済の流れと確信しています。
(続く)
*「JAIIセミナーレポート」は今後、有料記事として掲載予定です。サンプルとして掲載しています。
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