大井リポート
原油下落、そしてスイス・ショック
資産逃避と金融緩和のいたちごっこ

公開日: : 最終更新日:2016/05/16 マーケットEye

セイル社代表 大井 幸子

2014年6月13日に原油価格が下落し、同時に世界の投資マネーが米ドルへ流入し始めた。そして、その翌週、6月20日からロシアルーブル売りが始まった。「原油下落+米ドルへのマネー流入」は今も続いている。

中東産油国が生産体制を維持することから、原油下落傾向は今年も続く見通しである。

原油下落で産油国の歳入が減り、じわじわと国民経済を弱めて行くだろう。

産油国には民主化圧力  先進国にはデフレ圧力

過激なイスラム原理主義への資金源を細らせる意味ではプラスだが、一次産品に頼らない経済成長を達成するには民主化など政治体制の変革が必須で、サウジアラビアのような国にとっては国体を揺るがすことになるだろう。

原油下落は先進国にとって、実体経済面でデフレ圧力となる。それでなくても、欧州と日本では量的緩和(QE)と利下げで超ジャブジャブな金融政策が繰り返され、異次元にシフトしたまま出口戦略の見えない状況が続いている。

今週は22日の欧州中央銀行(ECB)政策理事会、そして、25日のギリシャ総選挙があり、22日にECBはさらなるQEを示唆するだろうし、そうなれば ユーロの価値は、米ドルに対してさらに下落する。そして、25日にギリシャでは左派野党シリザがリードするだろうから、ユーロ離脱を脅しに、ECBからの いっそうの資金支援を求めるだろう。

スイスフランの暴騰

以上のような背景から、15日にスイス中央銀行(SNB)は、スイスフラン(CHF)の上限を撤廃し、同時に預金金利をマイナス0.75%に引き下げた。

これまで、ユーロに対してCHF高であり、QEで価値を薄めて行くユーロに対してSNBは為替介入し(CHF売り・ユーロ買い支え)、上限を定めてCHF高にならないようにして来た。

しかし、原油安・ドル高によりCHFも弱含み、相対的にユーロに対して上限を守る必要がなくなった。SNBは22日のECBを睨んで先手を打ったと読める。結果、CHFは暴騰し、スイス株は下落した。

この影響を受けて、大手ヘッジファンド、エベレスト・キャピタルが店じまいすることになった。

個人投資家向けFXブローカーでも破たん懸念があり、また、高頻度トレーディングを専門とするクウォンツヘッジファンドやシティ、ドイツ銀行、バークレイズといった大手でもトレーディング損失が報じられている。

デリバティブ取引のどこかでほころびが出てくる可能性もあり、市場リスクを注視する必要がある。

http://www.bloomberg.com/news/2015-01-17/swiss-franc-trade-is-said-to-wipe-out-everest-s-main-fund.html

安全資産への逃避が金利を押し下げる

昨年後半から始まったトレンドは、大きなうねりになって世界の金融市場に波及しつつある。

この動きは予想以上に速い。ボラティリティが高まると安全な資産への逃避が起こることから、円が買われ、米国債やドイツ国債に資金が流入し、さらに金利を押し下げることになる。

QEとの追いかけっこになり、ますます出口の光は見えて来ない。

加えて、フランスやベルギーでのテロ事件やボコハラムの恐ろしい現状を見ると、ちょうどナチス台頭の頃の欧州のように、地政学リスクを超えた大きな全面戦争の予感もある。

元記事:大井幸子のグローバルストリームニュース

関連記事

投資の羅針盤
確定拠出型企業年金への「自動加入化」を【下】

日本個人投資家協会 副理事長 岡部陽二 (前回より続く) 前回、日本の公的年金の所得代替率が

記事を読む

木村喜由のマーケットインサイト
2014年6月号
相場で儲ける地合いではない

日本個人投資家協会 理事 木村 喜由 平均株価は見通し難、個別株の厳選を 前回5月号では「5

記事を読む

怖い新年だが安値拾いの好機か、急ぎ過ぎないこと

前回号発行時(12月11日)の日経225は19230円だったが、1月8日はほぼ17,700円、シカゴ

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

ドストエフスキー「罪と罰」とロシアへの制裁の現状と、見直し。日本株の今後(第1136回)

今回は題とロシアが舞台、ということだけでつけた。他意はない。 10月5日、ミハイル・

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

【初・中級者向き】映画「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」と尖閣と米国

  2016・8・14 映画好きにはたまらなく面白いドキュメンタリー。主人公は

記事を読む

PAGE TOP ↑