【初・中級者向き】映画「リオ・ブラボー」と世界的なバブル相場のスタート
(第968回)2019・6・23
ハワード・ホークス監督、ジョン・ウエイン主演の西部劇の傑作中の傑作。ディーン・マーチンとリッキー・ネルソンが歌う「ライフルと愛馬」のシーンを思い出される映画ファンも多いに違いない。
ストーリーは有名なので簡単に。テキサスの町の保安官チャンス(ジョン・ウエィン)は殺人犯の身柄を確保した。然しその兄の、地方の勢力家が、裁判を受ける前に弟を脱出させるべく街を封鎖し、保安官とその仲間を狙って、殺し屋を次々に送り込んで来る。
保安官の味方は、以前は早撃ちだったが、失恋の痛手からアル中になったデユ-ド(ディーン・マーテイン)、片足が不自由な年寄りの牢屋番スタンピー(ウオルター・ブレナン)、幌馬車の護衛の早撃ちコロラド(リッキー・ネルソン)、それに女賭博師(アンジー・デイキンソン)。孤立した彼らは敵が一晩中流す「皆殺しの歌」を聴かされる。
つい数日前まで、日本を含めた世界の株式市場は、米中新冷戦による世界的不況を恐れてリスクオフ。債券への投資ばかりが目立っていた。まあ、孤立だ。
同時に米国の景気がかなり長期化しているための息切れ不安と、中国の景気減速の懸念が重なった。ちょうど保安官たちに殺し屋たちが、あの手この手で神経戦を挑んできたように。
しかし、この数日間でこの状況は変わったのでないか。
まず大阪G20でのトランプ=習会談だ。中国側は共産党内部の反習近平派の不信感払拭を狙う。一方の米国側も大統領選を睨んで有権者からの批判の強い「3000億ドル、25%制裁関税」に手心を加えてもよいと考えているらしいトランプ大統領。利害は一致。両首脳のスタンドプレーには違いないのだが。
しかし、ごく一時的にせよ米中冷戦の停戦または休戦により、売り込まれた銘柄の買戻しが始まった。
それよりも何よりも、私が大いに注目しているのは、米FRBパウエル議長の利下げ容認姿勢だろう。これに先立って欧ECBのドラギ総裁の金融緩和の方針表明があったから、グローバルな金融緩和時代が開幕するのが近い、と予感させるのに十分だ。
これに加えて、恐らく日銀も、遅かれ早かれ円の独歩高から、遅ればせながら金融緩和を開始すること確実。1ドル103円とか101円になって企業から悲鳴が聞こえてからになるのか、どうか。
具体的にはマイナス金利の深堀りは銀行、特に地銀の経営に打撃になる。したがってここ数か月目立っていた国債の購入ペースの縮小(年80兆円から年30兆円)を再拡大するしかあるまい。結果的には株高を支援することになろう。
場合によってはETFの購入も、現在のスローベースからピッチを早める可能性もある。
いずれにせよ、近い将来、米欧日の三極が金融緩和に乗り出すのだから、過剰流動性に支えられた「不況下の金融相場」に突入するのは確実だ。
証拠はある。NYでは株価が新高値になると同時に、原油も金価格も戻り高値。債券から株式へのシフトが始まって、週末には10年物金利は2・07%と、前日の2%割れから上昇。ビットコインも1年3ヵ月ぶりに1万ドルを回復した。
もちろん中国の景気減速は、確かに昨年末から3~4月ごろまで目立っていたが、6月に入ってからの景況数字は悪くない。それどころか先行指標にはいいものが出てきた。
結論。今後当分金融相場がつづき、NYは主要各指標の新値更新が見られよう。日本の方も、PERは11・5倍が現状だから先行きの見通しが明るくなれば13倍。少なくとも2万4000円近くがとりあえずの目標値となるだろう。
重要なのは、米中新冷戦で漁夫の利を得ることが確実な日本企業が、ようやく見え始めたということだ。
ごく一例はファーウエィの米国とその同盟国の市場からの排撃で、例えばNEC(6701)やアイ・ピー・エス(マザース4390)が業務拡大の見通しが明るくなり、株価も上昇している。今後も同様な材料が続出するに違いない。私は強気だ。
映画のセリフから。ディーン・マーテイン゙が撮影中に「本当にオレの手が震えたら煙草をうまく巻けるかな?」と言ったら。すかさずジョン・ウエインが「心配するな。その時はオレが巻いてやるよ」と返した。これを監督ハワード・ホークスがわきで聞いていて、劇中にすぐ取り入れた。いかにも主役がワキ役にチャンと気を使っている撮影現場をしのばせるエピソードだ。ウエィンほどの貫禄はありませんが、私も相当な打率を上げていると自負しています。どうぞご信頼ください。
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