利益=得たお金、損失=失ったお金?
損益計算書を読み解く②
金融リテラシー講座 「投資のための財務分析」第14回
前回、損益計算書の見るにあたって次の2つことに留意するように申し上げました。
(1)損益計算書はひとつの見解であって、絶対的なものではない。
(2)損益計算書の利益(損失)と獲得したお金(失ったお金)は一致しない。
(1)について、その会社が特殊な決算をしているかどうかは損益計算書を見ただけでは分かりません。決算短信に書かれている定性情報や貸借対照表、キャッシュフロー計算書などその他の情報と付き合わせて考えることになります。
今回は、(2)について説明します。
損益計算書の利益(損失)と獲得したお金(失ったお金)は一致しないことを意外に思われる方もあるかもしれません。われわれ個人は所得(利益)イコール自分がもらったお金である場合が普通です。しかし、会社の決算はまだお金が入ってない売上(掛売り)や将来の費用も見積もって計算されますから、利益の増減ともらったお金の増減は一致しません。
表はパナソニックとシャープの2012年3月期と2013年3月期の決算数字です。ご存知のようにこの2社は前々期までに大きな赤字を計上しました。
パナソニックの純利益は2012年3月期7,721億円の赤字、2013年3月期7,542億円の赤字、2年間で1兆5,000億円以上の赤字を計上しています。同じくシャープも2年間で9,000億円以上の赤字を計上しています。
では、その赤字額と同額のお金が足らなくなったかというと、そうではありません。
赤字でもキャッシュフローが増える理由
パナソニックで見るとこの2年間でむしろお金は増えています。表下段の営業キャッシュフローというのは、事業活動により払ったお金と入ったお金の収支です。投資キャッシュフローというのは設備投資などで払ったお金と資産売却で入ってきたお金の収支です。パナソニックの2013年3月期の純利益は7,542億円の赤字ですが、お金は3,500億円以上増えています。そして増えたお金で借金を返済していますので有利子負債は減少しています。2社の赤字は設備の減損や除却、今後発生するリストラ費用などを計上したもので、赤字の額そのままお金が出て行った訳ではありません。
お金が増えたか減ったかを見るのがキャッシュフロー計算書です。キャッシュフロー計算書は見解ではなく事実です。ただし、退職給付費用のように将来の費用がその期に増大したかどうかなどは当然ながら関知しません。その期にお金が増えたか減ったか、その事実しか書いていません。
損益計算書は重要な情報を提供してくれますが、それと合わせてキャッシュフロー計算書を見ればより数字の中身が実感でき、有効だと思います。
金融リテラシー講座 第15回 四季報の業績欄は十分なのか?損益計算書を読み解く③
フィナンシャル・アドバイス代表 井上 明生
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