重視すべき実践的なROEとは何か?
ROAとROEを算出する③
金融リテラシー講座 「投資のための財務分析」第19回
前回に続いて、ROEの話です。ROEの計算式は次のようになります。
ROEには信奉者が多く、ROEが高いかどうかを株式投資の一番の条件にしている人がいます。実際、ROEが高い会社は素晴らしい会社が多く、停滞している会社にはROEが低い会社が多いです。
しかし、ROE一辺倒というのは賛成できません。ROEについては、次に説明する実践的なものは別として、通常のROEはあまり重視する必要はないと思っています。
ROEの分母は純資産でなく、株式時価総額にする
ではROEの実践的な使い方ですが、ここでもROA同様な考え方を用います。つまりROEの計算式の分母を純資産ではなく株式時価総額としてROEを計算するのです。
通常のROEは帳簿上の純資産から見た利益率ですが、これが高いことは素晴らしいことで優れた会社であることは間違いないでしょう。しかし、その会社の株式が価値を大幅に上回った値段で取引されているなら、そんな株式に投資してもうまく行くとは思えません。
時価で見たROE、つまり帳簿上の純資産ではなく株式時価総額で見た利回りの方が、投資を考える上には重要だと思われます。
時価で見たROEの計算式は次のようになります。
では、時価で見たROEがどのくらいであれば投資を検討できるでしょうか。
これはROAのときにも言いましたが、ROEについてもROEだけで投資を決定するということはありません。他の条件も考慮し投資を決めます。
ROAの目安は8%、14%なら文句なし
時価で見たROEの目安として基準を示せば、8%以上なら投資を検討できる、とします。
そして8%未満であっても事業のリスクが小さい業種なら投資は考えられます。公共セクターなら6.25%以上なら投資できるかもしれません。リスクのある業種であっても10%以上なら投資は検討できると思います。
そして、もし14%以上なら陳腐な業種であっても名前も知らなかった会社であっても黙って投資して良いかもしれません。
この時価で見たROEは私が勧めるまでもなく、実は皆さん既に活用しています。もう気付かれた方もあるでしょうが、時価で見たROEとはPERの逆数です。
PERが12.5倍以下は時価で見たROEが8%以上ということです。PERが10倍以下なら同じく10%以上、PERが7倍以下なら同じく14%以上ということです。PER16倍なら時価で見たROEは6.25%です。
時価で見たROEというのは、結局PERのことですから、それが株式投資において重要な指標であることに同意いただけるでしょう。PERはコンパクトな投資指標ですが、これに勝る投資指標は存在しません。
皆さんPERは日常的に使われていると思いますが、それを逆数で考え、利回りで考えていただくことを私はお勧めします。
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フィナンシャル・アドバイス代表 井上 明生
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