ROAがどの程度なら投資してよいか?
ROAとROEを算出する②
金融リテラシー講座 「投資のための財務分析」第18回
前回お話したことは、
- 会社の値段を分母に経常利益を分子にしたROAを使って投資を考える
- 会社の値段はネット有利子負債と株式時価総額の合計とする
では、これで求めたROAがどのくらいあれば投資して良いのでしょうか。
このROAが高ければ高いほど投資妙味はあります。しかし、基準を高くすると投資の候補は少なくなります。
私が示す基準は10%です。この基準には絶対的なものはありませんから、目安として10%というのは現実的だと思います。ROAが10%以上あることを投資の条件とすれば、銘柄選択はかなり楽になります。
ROAの基準はすべてではない
ただし、ROAが10%以上あることだけを持って投資を決定するのはいけません。ROA10%以上をひとつの条件として、さらに他の条件も吟味して投資を決定するということです。
逆に、ROAが10%未満のものは絶対投資できないということではありません。もし10%未満で投資できるものがあるとしたなら、その会社の事業は非常に安定しており、現状程度以上の利益が長期にもたらされることの確実性が高い会社となります。
会社の値段を分母にしたROAが10%以上ある会社には、例えば次のような会社があります
この5社はいずれも東証一部上場銘柄ですが、東証一部上場で現状ROAが10%以上ある会社は数百銘柄あると思われます。ROA10%以上という条件だけでは銘柄は絞りきれません。でもそういう状態であるということは、株式市場は健全であり、異常な割高状態ではないことを示していると思います。
ROEは負債とのバランスに注意
次にROEについて説明します。
ROE(資本純利益率)は株式投資には欠かせない指標です。ROEをチェックして投資を考えられている方も多いと思います。ROAが負債も含めた投資利回りであるに対し、われわれが投資する株式の利回りを表したものがROEです。
したがって、分母は株主に帰属する資産である純資産、分子は株主に帰属する利益である純利益となります。
ROEは当然ながら高いほど良い訳ですが、注意が要るのは負債とのバランスです。日本企業には少ないですが、米企業などでは極端に財務レバレッジを効かせて、つまり資本を過小にすることでROEを高めている場合もあります。前述のROAと合わせて数字を見るべきです。あるいは負債とのバランス(DEレシオなど)をチェックすべきでしょう。
ROEの実践的な使い方は次回お話します。
金融リテラシー講座 第19回 重視すべき実践的なROEとは何か?ROAとROEを算出する③
フィナンシャル・アドバイス代表 井上 明生
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