映画「史上最大の作戦」と底抜け株価の今後

 

恐らく史上最もカネをかけた戦争映画で、エキストラの兵隊が15万7000人というから凄い。使用された地雷4万個。現実の闘いでは40万個だったというが、これほどのヒト・モノを投下したければノルマンディ上陸作戦のスケールが画にならなかったのだろう。

原題は「いちばん長い日」で、日本の方はこれのパクリ。独軍の名将ロンメル元帥の名セリフからだ。

「上陸作戦の勝敗は二十四時間で決まる。わが軍にとっても連合軍にとっても、一番長い日になるだろう」。


 

底抜けの理由

歴史上、確かにこの一日が大転換点になった、という日はある。相場の上では非常にしばしば。

私が底値と考えていた日経平均1万7400円の抵抗線が9月29日にアッサリ割り込み、1万7000円割れのオプションを買っていた投機筋はウハウハとなった。他の主要市場で底抜けとなった市場はない。どうして?と誰もが不安になる。

VWと資源安のあおり

私が取材したところ、次のストーリーだったらしい。

まずニューヨーク。米共和党ベイナー議長の突然の辞任で、ごく目先はともかく11月、12月の米国債務上限引き上げは大難航となりそう。政府の閉鎖リスクは高い。そこで9月28日NYダウは312ドルも下がった。当然、翌日の東京は下がる公算大、とヘッジファンドは考え、売りのストーリーを考えた(らしい)。

目をつけられたのがカタールの政府ファンド。フォルクスワーゲンの17%を持つ大株主だし、スイスの資源商社グレンコアの暴落で10億ドルベースの巨大損を出し、利の出ている日本株を売却―という「噂」だ。

本当に売却したかどうかはイマイチだが、少なくとも1万7000円割れのときには市場の一部に、この噂は言われた(らしい)。

下げは買って損ナシ

チャートで下げ相場を実に巧みに当てる伊東秀広さん(プラザ投資顧問)は、黒田バズーカ2のときにつけた1万6500円のマドを埋めると予想している。そのあたりの安値は一応、あり得ると覚悟しておくべき、ということかな。

急落が発生すると経験則では「二番底」が一番底の60~70日あとにつく。そして130日ぐらいで高値更新。

まあ秋の下げは買ってソンはない。これは私の経験則。

中国の破滅はまだまだ先

不安材料の方はヤマほどあるが、まあ意外性のあるブラックスワンは別にして大体株価は織り込んだと考える。

中国の方も、市場では「不動産バブルと株バブルの破裂」というダブルパンチ説が一般的だが、どうも不動産の方は急回復らしい。

2014年9月以降住宅市場は下降していたが、大手デベロッパーの万科、保利の販売免責、販売単価、新規土地購入、みな4月以降急上昇。これは3月に行われた住宅ローンの頭金比率引き下げ、中古住宅転売の税軽減などが効いている。北京、上海など一級都市に止まっているが次第に拡大中とか。

アナリストに聞くと「何でもあり」。不動産は関連産業への波及効果を含めるとGDPの四分の一。土地収入に頼る地方政府への影響も大きい。4~8月で住宅着工は18%増。だから、中国破滅説は、まだまだ。

ツキジデスのワナ、とは

今週前中国大使丹羽宇一郎さんの「中国は崩壊するか」というお話を伺う機会があった。もちろん、お立場もあるから「共産党一党独裁は崩壊しない」しかしー

「あと5年から10年先だろうが、中国は連邦制に行く」

「中国経済はいまガタガタさわいでいるが、永い目で見れば大した変動じゃない」

「問題は中国人自身が自分の世界での地位を自覚していず、自分がクシャミしたら、世界がどう反応するか、ワカっていない」

一番コワかったのは「ツキジデスのワナ」のお話し。覇権国の力が衰え、しかも新興国が興隆したときの戦争だ。

新興国が既成秩序に挑戦することは史上たびたびあり、1600年から、15回。うち11回は戦争になった。「私も心のスミでは、ひょっとして―と思わないではない。」と丹羽氏。

 

このツキジデスのワナを指摘したハーバード大学のグレアム・アリソン教授はFT紙に「米国はNO・1は自明の理と考えるが、中国の興隆は英国の産業革命と比べると規模は100倍、速度は10倍だ。ペロポネソス戦争はアテネの興隆に対するスパルタの不安から。歴史は繰り返すか」と。

補正予算に郵政上場

話を戻す。日経平均はこの10月上旬が下値調べ時期だが7日の安倍内閣改造、党首脳部人事が終了すればいよいよ経済重視、市場上昇の時期に入る。量的緩和があるかないかは大問題だが、補正予算はあるし日本郵政株公開もある。

NY市場の方はジャンク債、ドイツはVWとドイツ銀行問題がある。第二のリーマンという声もあるが、ジャンク債の方はともかく、ドイツ銀行は国家の威信にかかわるのでメルケル首相は必死になって何とかゴマかすのではないか。VWはオウンゴールだから仕方ないが。

結論。日経平均の底値から戻り高値更新が見えて来るにはもう少し時間が必要だ。

 

この映画の最後のセリフ。

行軍の最中迷子になった米歩兵が、負傷して動けないままでいる英空軍将校に言う。「どっちが勝ったんでしょう」。何か大きい歴史的事件の最中は、なかなか全体図は見えない。まあそんなもんだ。

 

映画「史上最大の作戦」と底抜け株価の今後(第794回)

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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