映画「ラスト・ナイツ」とパリのテロと株式市場

公開日: : 最終更新日:2015/11/22 マーケットEye ,

日本人監督がハリウッドに進出してつくった力作。紀里谷和明監督、モーガン・フリーマン、クライヴ・オーウェン。興業で当たってほしいが300ヵ国で公開が決まっているそうで、嬉しい。

内容は忠臣蔵。ワイロを悪徳大臣からせびられた貴族が、その大臣と論争。宮殿内で刀傷沙汰に及び、自分の部下の警備隊長に王の命令で斬首される。

1年後斬首した隊長は部下の騎士たちと、大臣を襲撃し復讐を遂げる。

フリーマンが浅野内医頭、オーウェンが大石内蔵助。吉良上野介がノルウェー人のアクセル・ヘニーでこれが中々ニクらしくていい。清水一学が伊原剛志。

悪徳大臣は居城の守りを強化。妻の父の貴族に護衛兵1000人を派遣してもらう。しかし王に行き過ぎをたしなめられ、護衛兵は帰国。そこから騎士たちのチャンスが生まれる。美しい映像の襲撃シーンが素晴らしい。

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仇討とテロとどう違うのか、は難しい問題だ。こんなことを言ったら袋叩きにあいそうだが、IS側にも泥棒にも三分の理で、理由はいくらでもいうだろう。

テロよりも利上げ、大したことがなかった下げ

2001年のワールドトレードセンターへの旅客機による襲撃はまだ眼に残る。911の同時多発テロのときには1週間株式市場は停止、再開後のNYダウは9605ドルから8883ドルまで大幅下げ。7・5%、722ドル。

日経平均の方は9月12日の15292円から9610円まで6・6%、682円も下げた。

それに比べると、今回は軽い。11月16日月曜日はNYダウ237ドル、日経平均236円安だったが翌日にはもう反発。両方の市場の下げも1%台に止まった。週間としても上げ。要するに大したことはなかった。

テロよりもFRBの議長録発表で12月の利上げ。米国経済が先月の雇用統計でもう大丈夫、と市場が考えたからだろう。

ただNYの市場コンセンサスが「5年後10年物米国債3%」というのは低すぎる。恐らく今後は債券価格下落(利回りは上昇)、NYダウの方は何かあるごとに下落―。非常にボラティリティが上昇する局面に差しかかっている。その材料に米国でのテロが(万一あるとすれば、の話しだが)使われるかも。

 

テロの影響は、いろいろあろう。

第一は日本の景気。7~9月期のGDPは年率マイナス0・8、うち設備投資はマイナス1・3%と足をひっぱった。

日本の経営者は臆病。コワイ材料が出ると設備へのカネは出さない。まして賃上げなんて―。景気回復は遅れるかも。

第二はユーロの対ドルレートの下落。VWやドイツ銀行問題があるところにこの材料だ。ユーロの売り越し玉は6月以来の13万4300枚。ヘッジファンドは1ユーロは対ドルで1対1のスクエアを目標にしている。

第三は米国大統領選でヒラリー・クリントンが有利となったこと。ただ直後の世論調査ではドナルド・トランプとヒラリーが同率での20%で並んで首位。しかし11月8日の選挙ともなれば別だろう。

外交経験のある、なし。最高司令官としての能力、のある、なし。これは大きいのではないか。前提として彼女が「私はオバマの弱腰と違う」ことをはっきり言う必要があるが。

ボラティリティが増す展開

肝心の東京株式市場は?

ヘッジファンドは先物中心に買って上値を求めているが、恐らく2万円の大台をつけたら売るだろう。かなりボラタイルな市場になるに違いない。決算期を過ぎて、新しい期に入ってとりあえず売りで取る作戦と推察する。

もちろんその後は株価は再び上昇、円売り・日本株買いのいつものペースの戻るだろう。今、来週に大きな押し目があれば買いチャンスだ。

 

映画のセリフから。裁判にかけられた浅野内匠頭のモーガン・フリーマンは言う。

「他の人々は(大臣の)ワイロの要求に対し、自分の領地、地位、体裁を考えてやむなく応じています。私は応じませんでした。」自分が正義と考えることが通じないこともある。今回のテロがどう進展するか、今のところ神のみぞ知る。しかし唯ひとつ分かっていることがある。恐怖で人の心を押さえつけ続けることはできない。

ヘッジファンドの売りも同じ。彼らは売るために買い、買うために売る。そのサイクルを理解しておけばいい。

 

映画「ラスト・ナイツ」とパリのテロと株式市場(第801回)

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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