映画「母と暮らせば」と日韓慰安婦問題の決着
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マーケットEye 今井澂, 今井澂のシネマノミクス
山田洋次監督の最新作で吉永小百合と二宮和也が主演。私の好きな黒木華が助演、これがいい。
この映画は井上ひさしさんの「父と暮らせば」のオマージュ。助産婦の母と息子の亡霊とその恋人の物語だ。息子がなくなったのは長崎の原爆で、舞台はその3年後。
テーマはもちろん反戦、反原爆だが、母と息子の情愛が巧みに描かれていて私は何回も涙を流した。映画で泣くなんて久しぶりだった。ことしのベストスリーに入る名作と思う。
今回は12月28日に合意があった日韓外相会談について。私は記者会見を含めて報道を目を皿のようにしてみた。
ここで一番大事なところは「法的責任」でなく「道義的な責任」に止めたこと。第二に重要なのは「最終的で不可逆」な合意であること。なぜか。
理由、背景をまとめてみよう。
対韓関係に不必要なまでに低姿勢だった現政権
日本政府は慰安婦問題について1965年の国交正常化の際に締結した「日韓請求権協定」で法的に解決済みとの立場だ。
その一方で対韓関係に配慮して代々の政権は、私が観る限り不必要なまでに低姿勢を続けてきた。
93年には河野長官が「お詫びと反省」の談話。元慰安婦への償いのための「アジア助成基金」を設立して償い金を支給。道義的責任を認めた歴代首相のお詫びの手紙まで添えた。
それでも韓国側は政権が変わるたびにこの問題を蒸し返してきた。政権交代の直後は「未来志向」で合意しても、来期になるとまた騒ぐ。
一番、日本人全体が醜悪だと思い、私など腹のそこから激しい怒りを感じたのは、2012年8月の李明博大統領(当時)だろう。
8月10日に竹島の大統領として初めて上陸。問題視した日本側に「天皇陛下が日本の植民地支配からの独立運動をして亡くなった方々に心から謝罪するなら来なさいと日本側に言った」と発言した。
この前任に続いた朴大統領も慰安婦問題でのお詫びの手紙まで添えて。
それでも、それでも韓国側は人気取りのための反日を繰り返してきた。
法的責任は認めず
朴政権の言い分は「被害者の受け入れ可能で、韓国国民が納得できる」解決策を要求。支援団体は法的賠償を求めてきた。
しかし、日本側は法的責任を認める余地はない。日韓請求権協定で日韓両国間の請求権は「完全かつ最終的に解決されたことを確認する」と明記されている。例外を認めれば、すべての国と戦後処理をやり直さなければならない、ハナから無理な注文なのだ。
しかし今回、岸田外相は「請求権への日本政府の立場は変わっていない」と述べた。日韓双方の外相が「最終的かつ不可逆的な合意」とした。「責任を痛感」という合意は、岸田外相は「この表現につきる。それ以上でもそれ以下でもない」と。法的責任はなく、道義的な責任(NHKの記者解説)ということだろう。
韓国側は日本大使館の前の少女像の撤去も努力を約し、ユネスコの世界記憶遺産に対し韓国は申請国に参加しない、とも。
ゴールを動かす韓国側
しかし、韓国側の報道はちょっと違う。
12月28日付中央日報によると、少女像の撤去は「外交部当局者は『これは明確な合意事項とは言えない。日本側の憂慮の定期について韓国側が承知したということに過ぎず、交渉の対象はやり取りをしたというものではない』」と述べた。早くてもゴールが動き始めているのではないか。本当に「最終的」か。
安倍政権はリスクヘッジを考えているらしい。2016年3月ワシントンでの核安保サミットで日米韓首脳会談を別途開催し第三者である米国政府に「最終決着を保証してもらう」と報道されている。(朝鮮日報12月28日社説)。一方的に日本側の発表のみ見ないで、韓国側の報道も注意しなくてはなるまい。
米国の保証が必要
私は日債銀時代、ソウルに駐在員事務所に行ったことがある。そこの事務所長は伊達さんという人だったが、「豊臣秀吉の部下の子孫」だから、と仕事が何も来なかった。また現地のパーティーで山一證券時代に知っていた知己から、あそこの人は自分の家が秀吉に焼かれた、と言ってるぜ、といわれた。
これじゃあ日本企業の地歴財産権の侵害や日本国内の重要文化財の窃盗と返還拒否などなど。何十とあるアタマに来る韓国人の利己的行動の独りよがりも理解できる。日本人の「嫌韓」はむしろ当然。米国の保証は、また向こうがゴールを動かさないために絶対必要だろう。合意文書が全くないことでもあるし。
以上、延々と述べたが、安倍外交のヒットと考える。来年の衆参同時選挙にプラスするだろう。それにしても、10億円は朝日新聞に出させるべきだ!
映画のセリフから。
死んでしまった伸二(二宮和也)が母の伸子(吉永小百合)に言う。「僕の運命さ」。「町子(恋人で黒木華)が幸せになってほしい。これは僕と一緒に原爆で死んだ何万人もの人たちの願いなんだ」。こうした考え方は、あの国の人たちに金輪際、出来ないんだろうなあ。
これは806回だが週末の新年版第一号はまた別に。今回は特別年末号ということで。皆様どうぞ佳いお正月をお迎えください。
映画「母と暮らせば」と日韓慰安婦問題の決着(第807回)
今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ
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