【初・中級者向き】映画「続・夕陽のガンマン」と米中貿易交渉決着と「その次」
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マーケットEye, 無料記事 今井澂, 今井澂のシネマノミクス
(第959回)2019・4・21
1966年のこのマカロニ・ウエスタンの傑作を。私はまずボストン、次にNY、最後に東京、計3回も観た。この映画の最終場面の決闘シーンの巨大セットを復活させる映画「サッドヒルを掘り返せ」が最近撮影された。それほどファンが多く、強い印象を残す作品なのだろう。
原題は「善玉、悪玉、卑劣漢」。クリント・イーストウッド主役、セルジオ・レオーネ監督の「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」に続く“名無しのガンマン”三部作の最高作品だ。
舞台は南北戦争時代の米国西部。善玉のガンマン(クリント)は、賞金首の卑劣漢のトウーコ(イーライ・ウォーラック)を捕まえて突き出し、懸賞金を手に。ところがトゥーコが縛り首になる直前に首を絞める縄を撃って助ける。二人はコンビで賞金詐欺を繰り返してせしめた賞金は、公平に分け合う。
裏切りと報復で互いに痛めつけた後で二人は再びチームを組み、盗まれた南軍の金貨を探す。そこに「悪玉」のリー・ヴァン・クリーフが参入して宝の追跡を複雑にしてゆく。
最後は三人での決闘。エンニオ・モリコーネの素晴らしい音楽が盛り上がる。179分の長編だが少しも飽きさせない。
いよいよ互いに痛めつけあっている関税戦争に、米中首脳会談による手打ちが近そうだ。対中貿易交渉に携わっている米商務省高官の「メモリアルデー(5月27日、戦没将兵追悼記念日)が目安」と述べている。
交渉の最終段階に来て、なお争点になっているのは4点。
- 米中双方が互いの輸入品に課している上乗せ関税の撤廃時期とその範囲
- 中国政府の国有企業への補助金制度改革
- 中国による知的財産侵害対策
そして特に米国が重視しているのがー。
- 合意事項の履行検証制度の創設
しかし④のメカニズムには新たな問題が生まれた。ムニューシン長官が15日に「履行検証制度は双方向だ」述べたことだ。米国内部でも大騒ぎだが、中国でも同じ。共産党中央委員会メンバー22人の多くが「中国政府は歴史的なスピードで外商投資法を全人代で通過させたのに、米国に面子をつぶされた」と憤慨し、前記4項目も反故にすべきと主張。習近平・劉鶴チームがSOSを出して北京での会談に持ち込んだ、
要するに双方が「勝利」をそれぞれの国内でPRできるための交渉なので、最後までモメる。しかし、そうそう長期間、モメ続けることは難しい。やはり5月下旬は一つのメドだろう。
この傑作映画で、善玉と卑劣漢は対立したりまた協力したり。そこが面白いのだが、この米中の争いは同盟国にも波及するのが次のステップで起こることが重大だ。
パルナソス・インベストメントのストラテジスト宮島忠直氏の情報だ。米国現政権に最も近いヘリテージ財団幹部からのメモには、次の内容が書かれている。
- 制裁関税の一部撤廃が相互で合意された場合、次のステップとして同盟国のハイテク企業に対中経済関係を米国企業と同じく義務付ける。目的は知的財産権保護と防諜。
- 同財団によると、その分野はバイオ、AI、ロボット、先端素材など広い範囲に及ぶ。
- 大意は以上。
つまり、そのあたりで、本格的な「新冷戦」体制が開始されることになる。やはりハイテク企業の株価は上値が重くなるに違いない。おそらく秋口ぐらいにはこの体制による株価下落は不可避ではないか。現在の戻り相場は8月から9月が天井が付くというのが私の予想だ。
映画では、死にかけた南軍の兵士から水を求められ、卑劣漢は金貨を隠した墓地の名、善玉は墓碑の名前を聞き出す。大切な情報を半分づつ分割して持つことになる。
これまでのハイテクのグローバル企業は「設計は米国、生産は中国など、市場は全世界」という、いいとこ取りのビジネスモデルは通用しなくなる。
市場は中国を除いた半分の世界で販売されるのだから、これまでのような急成長は望めない。超高株価、超高PERは望めないだろう。
ただし、逆の見方もできる。風が吹けばオケ屋の例えにもある通りで新冷戦が追い風になる企業も出るだろう。アナリストの腕の見せ所、ではないか。
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