「消費増税先送りでダブル選挙」の公算強まる

日本個人投資家協会 理事 木村 喜由
Vol135920151219日)

書いた途端、いきなり怖い鬼が出てしまった

前回、怖い鬼が出るのはこれからと書いたが、18日金曜の日銀決定会合発表後の大波乱は物凄かった。225先物は朝方安値1万9175円まであったが、決定内容に変更がない場合12時前後に発表があるものが、12時50分までから長引いたことから、何らかの追加緩和策が含まれていると踏んだ向きが散発的に買いを入れ、1万9400円まで買い進む場面があった。

発表直後は本文の内容が前回と同じだったことから一瞬だけ1万9275円まで下がったが、後ろに「補完措置」という文章があったことがひと悶着を起こす原因になった。そこに新たな株式ETF買い付け枠、年3000億円を設定とあったことで、これをネタにミニバズーカ発射だと早とちりした向きが思い切り買い上がり、高値1万9890円まで急伸した。

ミニバズーカとの誤解

ところが文章をよく読むと、従来銀行等から引き取った株式の売却開始の悪影響を相殺するため、とあって、要するに市場中立の措置であることがわかる。つまり「バンザイなしよ」だったので、高値から10分後には1万9330円まで急降下、その10分後に1万9585円まで戻したものの、13時半に1万9160円、さらに14時から一段安となって1万8950円安値引けとなった。この結果、立会時間中のミニ先物で0.5%以上の変動幅を累積すると5時間余りで17波4190円という、史上空前の大荒れ相場となった。

超高速取引で上下動、確信犯もいるか?

先物手口を見る限りでは、225ラージ換算でニューエッジ4500、野村が4000、バークレイズ3200、モルガン1700枚が売り大手。買いはメリル3500、ABNアムロ2000、Cスイス1600枚が目立つ程度。ただし売買シェアは圧倒的に超高速取引を行うABNアムロが圧倒的で、激しい上下動に関与したことは疑いない。

過剰に買い進んだ反動により下げがきつくなった面もあろうが、その後米国が2か月ぶりの安値で引け(18日大引けで先物等のSQ価格が決まる)、225先物も1万8750円まで下押していることを考えると、確信犯的に上に持ち上げてから下に叩き込んだ投機筋の存在も疑われる。

2万円の壁、残る下振れ懸念

チャート的にはこれで2万円が頑強な壁になったといえ、前回レポートしたとおり、今後は原油安から遅れて発生する様々な悪材料と、あちこちでデフォルト騒ぎが起きることが想像される。ISM指数や昨晩のフィラデルフィア連銀指数の低下が示すよう、経済の先行きも悪化しているように見える。

買い方のポジションの多くがまだ残ったままなので、今後1万8500円割れから下値サポートを探る展開に向かうものと思われる。まだ下振れ懸念は大きいので、アク抜け的な大幅安が起こり、裁定解消による裁定買い残の顕著な減少が見られるまで、買いは短期売買専門か打診買いにとどめておくべきだろう。

軽減税率で公明党案を丸呑みした理由

政府要人の片言隻句(へんげんせきく)から、本音が読み取れてしまう場合がある。

15日の再来年の消費税率10%引き上げ時の食品軽減税率の取り扱いについて、首相官邸側(特に菅義偉官房長官)が自民党谷垣幹事長と財務省の抵抗を押し切って、公明党案を丸呑みし、財源も決まっていないのに軽減規模1兆円の減税を決めてしまった。その際に、菅氏は「これは政局なんです」と述べたのである。だとすれば、増税先送りとダブル選挙を本線として今後を考えざるを得ない。

公明党案は零細業者の事務負担を増やす一方、減税の恩恵はむしろ高額消費者に集中するという、愚劣極まりないもので、まともな経済学者ならば誰も賛成しないはずのもの。単純に貧困者に一定の給付金を渡すだけにした方が、無駄な費用が掛からず、新財源によってとばっちりを食う人が出なかった。

それにも拘らず公明党案の丸呑みを決めたのは、公明党の与党離脱=選挙協力の終了を何としても回避したい事情が安部首相サイドにあるからである。7-9月GDPはプラス成長に改定されるだろうが、足元景気が想定線を下回っていることは明らかで、今後資源国不況が世界経済に悪影響を及ぼすのが確実なら、17年4月からの消費税率引き上げに黄信号が点滅し始めたと考えるべきだろう。

選挙協力は必須、「政局」の本音

現在の衆議院議員は任期満了となる18年12月までに選挙を迎えることになる。来年7月10日予定の参議院選挙は安保問題や憲法改正がメインテーマになることが必至で、単独選挙なら自民党は勝ったとしても辛勝にとどまり、憲法改正発議が出来る衆参両院で3分の2以上の賛成は遥かなまま。そして順当に3年以上経過して衆議院選挙を迎えれば、増税不況を迎えており、選挙に強いアベの神通力が通用しないおそれがある。

それならばいっそ来年6月1日に決まった国会終了時に解散すれば40日以内に総選挙というルールにピッタリ間に合うので、消費税率アップはもう1年先送りと宣言してダブル選挙にしてしまえば、野党側の準備は全く出来ていないので、自民党の圧勝が間違いなくなり、待望の3分の2さえ実現が見込めるのだ。ただし自民の基礎票は伸びていないため、何としても公明党の協力が必要だから理不尽な軽減税率案でも丸呑みすることにしたのである。だから菅氏はうっかり「政局」と漏らしてしまったのである。

増税延期なら不細工な軽減税率も先送りされ、財源も考えずに済み、より合理的な形に整える準備も出来る。そこまで首相の腹が読めたから谷垣さんも財務省も折れたのかも。

橋下ー安倍会談の成果は

さらに本日19日には大阪市長を退任した橋下徹氏と安部首相の会談が予定されている。政界引退を表明している橋下氏だが、実は政治大好き男である。安全保障問題については安倍氏に賛成を表明しており、選挙となれば強い大阪維新の党を実質支配している。安部首相はダブル選挙後の協力体制や、橋下氏の入閣要請も腹案としつつ会うのだろう。

(了)

 

*木村喜由のマーケット通信は今後、有料記事で掲載予定です。サンプルとして無料公開しています。

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