映画「史上最大の作戦」と不況対策によるトランプ人気回復、それに日経平均暴落時でも株高になった我が国の銘柄(第1005回)
ご存知の戦争映画の代表作。当時の製作費43億円は普通の作品なら7,8本作れる巨費。エキストラの兵隊15万人、使用された地雷4万個、現実に使われた地雷40万個の十分の一。ノルマンディー上院作戦を描くには、これほどまでの物量投入が必要だったのだろう。
原題は「いちばん長い日」。これは独の名将ロンメル元帥の名セリフだ。
「上陸作戦の勝敗は24時間で決まる。わが軍にとっても連合軍にとっても、いちばん長い日になるだろう。」この名セリフを我が国の昭和20年8月15日の玉音放送に絡んでまとめたのが半藤一利さんの「日本のいちばん長い日」。2回も映画化されたので、ご存じの方も多いに違いない。
歴史の示す通り、この作戦は成功した。しかし➀連合軍が上陸したノルマンディーをドイツ側は予想していなかった②切り札になる機甲師団はヒトラーがクスリを飲んで熟睡していたので誰も起こせず、投入出来なかった、などの失策であったことも、この映画は指摘している。そこいらが単なる戦争映画と一味、違うところだ。
今回のコロナ・ショック対策を観ていて、この物量作戦を私は思い出した。
3月26日米国上下両院が可決、成立したコロナウィルスに対処するための法案は2兆ドルとGDPの10%弱。
2008年の金融危機後の対策が7000億ドル、2009年のオバマ政権時は8000億ドル。二つ合わせた対策費より多い。
単に予算の大きさだけではない。3月23日、FRBは実質的に無制限に米国国債を買うことを表明。同日パウエル議長は「我々の弾丸はまだ十分にある」と述べた。
それでも不十分、という声さえあるのは、今回のコロナ不況の深刻さを物語る。セントルイス連銀のプラード総裁によると「4~6月に失われる2兆5000億ドルの所得を穴埋めする強力な財政対策が必要」とした。これでもまだ、追加対策が必要とみていることになる。
株式市場の方は、とりあえず、この対策を好感。下値からの戻りが20%を超え「弱気相場から過去最短で抜け出した。(WSJ3月27日)」。
この日に発表された失業保険申請件数は328万件と過去最大の5倍近く。それでも株式市場は対策を好感した。
これでトランプ大統領が11月の大統領選に点を稼いだのは、言うまでもない。
最新のギャラップ調査によると、トランプ支持は49%、コロナウィルス対応に関しての支持は60%、調査時点では株価反発はまだ大したことがなく、メルトダウン状態にあった。それでもこの結果だ。米国エスタブリッシュメントによるバイデン候補支持は、一歩後退の感は否めない。
アレレと思ったのは、リアル・クリア・ポリティクスによる調査。バイデン支持を行う中道派へ意見を持つ有権者。バイデン支持を行う中道派へ反発する有権者は実に45%、民主党支持でも36%と高い。これにトランプ支持固定層を含めると、米有権者の過半が再選支持となる。少なくともコロナ危機をトランプ氏は巧みに利用したことになる。もちろん、エスタブリッシュメントへの反感だけでは、投票へは結び付かないが。
では、我が国はどうだろうか。3月28日、安倍首相は記者会見で「かつてない規模の経済対策を策定」すると述べた。
従って現時点ではお手並み拝見、ということになるのだが、「目玉」となる個人、中小企業への給付金でも、リーマン当時のやり方を参考にすると、まあだめだ。
現金給付は、早くて5月末。地方自治体から申請書を国民に送付し、それに応じた人の本人確認を地方自治体が行い、銀行口座に振り込む。なんて煩雑な方法だろう。また、先行きについて、国民が自信をもてるような内容がない。
やはり私が先週主張した通り、超長期国債(60年もの、建設又は投資国債)の日銀引き受けが必要だ。
安倍首相はG7の電話会議で「思い切った経済対策」を主張した。財務官僚のケチおやじどもに付き合って、この国を大不況に導くことだけは、お止め頂きたい。
株式市場の動向で、私を力づけた事実がある。あの大幅下落の3月中旬でも上昇した銘柄が12もあったことだ。以下銘柄を列記する。
NTTドコモ(9437)、菱洋エレクトロ(8268)、アルフレッサホールデイング(2784)、クリエイトSDホールディングス(3148)、クスリのアオキホールデイングス(3549)、アイカ工業(4206)、あすか製薬(4514)、中外製薬(4519)、日本ペイントホールディングス84612)、ライオン(4912)、小林製薬(4967)、丸和運送機関(9090)。
映画のセリフから。ノルマンディーに向かう艦内で上官が部下に言う「よく覚えておけ。百年先まで語り継がれる作戦に我々は参加しているんだ。怖いことに変わりはないが。」3月11,12,16、18の大幅下落時でも、勇気を奮って投資した人もいたんです。
(ついでに。私は3月14日の講演会で「13日の1万7000円近辺でほぼ底が入った。3月下旬には乱高下するが、一部でいわれている1万4000円とかの安値は考える必要ない」と述べた。これが的中したことは、歴史が証明する。また私は戻りの目標として日経平均2万2000円と述べた。作戦としては、大幅に下落した中国関連などの突っ込み込み買い、とくに日経平均のブルETF。最後に技術革新が目立つある銘柄を注目した。)
関連記事
-
基本の話by前田昌孝(第3回)
株式投資は何のためにするのでしょうか。先日も新聞の電子版を読んでいたら、次のような記事がありました
-
木村喜由のマーケット通信
原油安で運輸・紙パルプ・化学が買い
ギリシャ選挙でユーロ危機の再燃は日本個人投資家協会 理事 木村 喜由 26日、12月分の通関統計が発表されたが、貿易収支は6,
-
映画「大いなる西部」とウクライナ情勢の新展開。現在が何年かに一度の超買い場であることの証明。私の4万説。(第1132回)
ウイリアム・ワイラー監督が広大な土地とそこに生きる人々を描いた大作であり、同時に「対立」の物語でも
-
映画「ウォーターワールド」と今回のウラ金騒ぎの真相。2025年からの「上り坂」の背景。今回の「ドカ」「反騰」の行方
2024・4・29(第1223回) <オールムービーより> 1995年当時人気
-
映画「妻への家路」とEメールゲートとヒラリー・クリントンの運命
今井澂・国際エコノミスト今週は「博士と彼女のセオリー」も観た。しかし主演のホーキング博士のソックリさんぶりが良かったが出来は