「 岡部陽二 」 一覧
自社株買いは株主還元ではなく、「企業エゴ」か。
上場企業が税金を支払った後に残った純利益や、過去の利益の蓄積の一部を株主に返す(還元する)方法には、「配当」と「自社株買い」の2つがある。 なぜ自社株買いが還元策となるかというと、株式を買い戻すと1株当たりの利益が増え、その結果として株価の値上がりや将来の増配に繋がるからである。 しかし「自社株買いは株価にも配当にも貢献していない」という否定論も見られる。株主還元と
東京は香港に代わる国際金融センターになり得るか
2020年6月23日、日経新聞は「香港の国家安全法案は外国人にも適用」と報じた。このニュースが意味するところは、中国政府のさじ加減一つで「国家に対する脅威」と認定され「中国の法律で裁かれる」ということであり、香港内で活動する企業にとって大きなリスクとなる。この措置に対し、米国は「香港がアジアの金融センターとしてとどまると考えるのは難しい」と警告している。 いっぽうで中国のハイテク企業、新興企
開いた口が塞がらないマイナンバー迷走を正すには
新型コロナ感染症特別定額給付金10万円について「マイナンバー・カード」を使ってのオンライン交付申請が5月1日に始まった。これは手元のパソコンやスマホから申請すれば直ちに支払われ、「不要不急」の外出を避けることもできる簡単で便利なデジタル化方式として、総務相からもその利用が喧伝された。 ところが、蓋を開けてみると、①そもそもマイナンバー・カード普及率が16%と低く、カードの交付申請に大勢が殺
いまこそ日本人になりたい外国人を受け入れ、“真の開国”で豊かな経済成長を。
少子高齢化の一途をたどる日本にあって、今後の経済成長を決定づけるのが移民政策である。 イノベーションに欠かせない豊かな高度人材をおおいに呼び込む移民政策の成功によって持続的な経済成長を手に入れた国には、シンガポール、カナダ、オーストラリアなどが挙げられる。片や、低賃金の単純労働者を大量に呼び込んだ欧州諸国やアブダビなどの中東諸国は、同化は進まず、彼らの処遇が深刻な
「個人の自助努力を政府が支える英国年金制度に学ぶ」投資の羅針盤 岡部 陽二
英国は21世紀に入って先進国最高の経済成長を続け、2018年には賃金上昇率が米国を抜いて先進国最高となった。今後も、もっとも経済成長が有望な国と考えられよう。 英国経済が強い原因として、本年1月号「英国経済はブレグジット完遂で再び成長軌道へ」では次の2つを指摘した。 ①根強い個人消費の伸びと大幅な最低賃金引上げをテコにした賃金上昇。 ②食料とエネルギーの自給政策を推し進め
「疑似資産にご用心」投資の羅針盤 岡部 陽二
「疑似資産」という概念は、金融のプロも聞きなれない新語である。それもその筈、この新語は「週刊東洋経済」の昨年11月16日号と12月14日号の特集『疑似資産にご用心』で初めて用いられたものと思われる。 同誌の定義では、「疑似資産」とは、減損リスクのある無形資産のことである。ブランド、のれん、商標権、繰延税金資産などがこれにあたり、当然ながら価値の変動が実物資産よりも激しい。 この
「配当性向重視の銘柄選好を強めよう」投資の羅針盤 岡部 陽二
株式の長期投資にあたって、もっとも重要視するべき要素の一つは、配当である。配当が高い株は「高配当株」と呼ばれて長期保有され、資金が抜けにくいことから株価の安定的な伸びも期待できる。 では、企業はいったいどのくらい配当を重要視するものであろうか。 企業の姿勢を映す指標が「配当性向」である。稼いだ利益のうち、どのくらいの割合(%)を配当に回しているかを示すもので、次のように算出され