あなたの投資はなぜ失敗するのか?
「投資のための財務分析」総集編①

公開日: : 最終更新日:2015/07/05 ゼロから学ぶ投資 ,

金融リテラシー講座 「投資のための財務分析」第24回

ここまでお届けしてきた「投資のための財務分析」の総集編として、投資の決定をどのように行うべきかを4段階のチェックポイントとしてまとめました。4回にわけてお伝えします。

 

株式投資で失敗する主なケースは、

①株価の勢いに投資し、短期で売買益を狙った投資

②長期投資で臨んだものの、投資採算を計算せずイメージだけで実行した投資

――この2つです。

 

会社のオーナーになるつもりで投資する

それに対し本来の投資は、会社の事業の価値を算定し、会社の値段からして投資することに採算があるかどうか考え実行するものです。自分の投資が成功するかどうかは、自分の株式を次に誰かが高く買ってくれるかどうかにあるのではありません。自分の投資が成功するかどうかは、投資した会社が上げる利益しかなく、それ以外にはないのです。

したがって、1単位の投資を検討する場合でも、自分がその会社すべてを買い、その会社のオーナーになるとして投資を考えてください。

今回、名証上場の岡谷鋼機(7485)の2014年2月期の数字と2014年12月30日の株価を使い説明します。主要な数値の一部を下に記載しますが、できれば決算短信そのものを打ち出し、それを見ながら一緒に分析を進めてください。なお岡谷鋼機は2014年9月に株式併合(5株→1株)を行っていますので、1株純利益、1株配当などの数値は調整する必要があります。

 

岡谷鋼機(7485)直近2期損益計算書  1株利益は調整後

岡谷短信
同じく貸借対照表〈2014年2月末現在、単位百万円〉

岡谷貸借対照表

 

 

 

 

同じく発行済株式数と株価

発行済株式数     9,720千株

自己株式数       91千株

自己株除発行済株式数  9,628千株

株価(12月30日終値) 7,630円

チェック1 会社の値段を知る

岡谷鋼機1単位(100株)の投資を考えるとしても岡谷鋼機を買収するつもりで事を進めます。岡谷鋼機の会社の値段はいくらか?会社の値段にはいろんな考えがありますが、もっとも妥当な考え方は、

会社の値段 = 株式時価総額 + ネット有利子負債(有利子負債-現預金)

だと思います。

会社を買収するには株式をすべて買うことになります。さらに買収した会社の借金はすべて負うことになります。ただし、保有している現預金は借金返済に使えますので、会社の値段は株式時価総額とネットの借金額となります。

岡谷鋼機の株式時価総額 = 7,630円×9,628千株 = 73,465百万円

岡谷鋼機のネット有利子負債 = 119,326百万円-11,486百万円 = 107,840百万円

会社の値段 = 約730億円 + 約1,080億円 = 約1,810億円

以上のように計算すると岡谷鋼機の会社の値段は1,810億円となります。果たして1,810億円でこの会社を買う意味はあるでしょうか。

 

会社の値段が分かれば、会社の価値を推定することになりますが、その前にやることがあります。
金融リテラシー講座 第25回 会社の”健康診断”で見るところは? 「投資のための財務分析」総集編②
フィナンシャル・アドバイス代表 井上 明生

(編集部注)

総集編は岡谷鋼機の2014年2月期決算と2014年末株価を基にしていますが、原稿をいただいてからアップまで時間が経ってしまったため、既に2015年2月期決算が発表され、株価も動いています。ただ、投資の決定に至るステップとして何ら変わるところはないため、そのまま掲載しました。是非、最新の数字を基に算出の練習をしてみてください。

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