「特別キャンペーン利率」はお得か?
金融リテラシー講座「投資のための金利計算」第2回
今回から具体的に金利の計算をやってみましょう。
皆さん、次の金利計算ができるでしょうか。
第1問 金利15%の消費者ローンで10万円借り、20日後に全額返済した場合、利息はいくらですか?
第2問 A社の1株当り年間配当は20円であり、現在の株価は配当利回り4%に妥当する値段で取引されています。次期にA社は24円に増配するとして、24円に増配後、配当利回り4%になるまで株価が水準訂正するとしたなら、増配後の株価はいくらでしょうか?
第3問 利率1.5%、現時点で償還までの残存期間が7年の債券があります。現在この債券が利回り(年複利)0.7%で取引されているとしたなら、取引値段は額面100円に対しいくらですか?
第4問 毎月1万4,000円の掛け金で40年間(480ヶ月)掛け、その後年金(年額)80万円が10年間貰える確定年金があるとします。さて、この年金商品、利回りはいったいいくらでしょうか?
この4問の中、第1問と第2問は普通の電卓があれば計算できます。第3問、第4問は金融電卓があればできます。また、これを読んでいる皆さんのほとんどはパソコンを使われていると思いますが、パソコンに標準装備されているエクセルでも計算できます。
金融リテラシーとして身に付けるべきことは、上記4問を完全に正しく計算できる、ということではありません。大事なのは、金利の概念が正しく理解できていることです。もちろん、上記第1問と第2問は電卓があれば簡単に計算できますから、これは1円単位まで正しく計算できることが前提です。第3問と第4問は計算式が書けたら最高ですが、そうでなくとも元本、金利、将来価値、そういったものの関係が頭の中でイメージできること、それが金融リテラシーです。
今回は第1問をやってみましょう。
第1問 金利15%の消費者ローンで10万円借り、20日後に全額返済した場合、利息はいくら?
この問題のポイントは、金利15%の意味です。通常金利というのは年率で示します。金利15%というのは1年間で元本の15%の利息が発生するという意味です。
第1問の答えは、100,000×0.15× =821.917 切り上げて→ 答え822円
この822円という数字は、意外と小さいと感じませんか?金利というのは短期間で見るとほとんど無視できるほどしか影響しません。急にお金が要ることになり、消費者ローンで借り、2週間後に返済するとしたら、資金を借りたことにより実行できたことの有り難さに比べ金利は十分低いと思われます。本来の消費者ローンの使い方は、突然お金が必要になった事態に、短期間で返済できる見込みで利用するというものでしょう。
外貨預金などで『豪ドル1ヶ月定期 特別キャンペーン利率15%』といった広告を目にすることがあります。15%の金利に目が奪われるのですが、上記の例同様に15%の金利でも1ヶ月では大した利息になりません。1か月に付く利息は15%÷12=1.25%です。
一方、円を外貨にする手数料、外貨を円に戻す手数料を銀行は往復で2%以上取るのが普通です。豪ドルですと4%くらい取られるかもしれません。したがって、1ヶ月後に円に戻すとたいてい損になります。仕方ないので2ヶ月目以降も外貨預金を継続することになり、2ヶ月目からは通常の店頭金利があてがわれます。
最初の短期間だけ特別高い金利で勧誘するのは、一種のおとり広告だと思います。
(次回につづく)
フィナンシャル・アドバイス代表 井上 明生
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