損する前にこれを読め!
損する人の心理を赤裸々に描写
『あやしい投資話に乗ってみた』

ジャイコミ編集部

誰しもが避けたい投資関連でのトラブル。だが、実際に投資してみてからでないとわからないことも多い。それを追体験できる本が『あやしい投資話に乗ってみた』(彩図社)だ。

著者の藤原久敏氏は「投資が大好き」というファイナンシャルプランナー(FP)。タイトルのとおり、著者自らがさまざまな金融商品に実際に投資し、最終的にいくら儲かったのか(損したのか)を報告している。
単に商品の説明をしているだけではなく、未公開株を薦めてくる営業マンとのやりとりや、投資セミナーでの講師の煽り、さらには実際に投資しているときの心の動きが、軽妙な筆致で描かれている。

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『あやしい投資話に乗ってみた』(藤原久敏著、2013年)

取り上げた商品は、未公開株、新規公開(IPO)株、和牛オーナー(2011年破綻の安愚楽牧場)、海外ファンド(クアドリガ・スーパーファンド)、超高金利の銀行預金(10年破綻の日本振興銀行)、FX取引(南アフリカランド)、先物取引(日経225ミニ)の7つ。

人の心を「あらぬ方向」へと連れてゆくFX

和牛オーナーや海外ファンドなどはすでに下火なので、題材が少し古い感は否めない。また、どちらかというと投資経験ゼロの人に向けた内容なので、投資の世界で一定程度生きてきた人は物足りなさを感じるだろう。
だが、筆者のぼやきのような「心の声」には意外と名言が多い。たとえばFXでは次のようなものだ。

FXがあやしいと言われるのは、あまりにも高性能で威力があるため(たとえるなら、超高性能ターボエンジンを積んでいる車)、それを扱う人の心が「あらぬ方向」へ行ってしまうことが多いからです。

筆者は、結婚式の祝儀からこっそり拝借した10万円を元手に始めた豪ドル買いで資金が20倍に。その後、豪ドルよりも高金利通貨の南アランドに投資し、リーマン・ショックで200万円あった元手を溶かす憂き目にあった。それでも筆者はトルコリラへの投資に再び乗り出す。

上記の「心の声」はシンプルだが、なかなか本質を突いたものではないだろうか。

良い情報だけを受け入れる心理

安愚楽牧場のオーナーとなったものの、「安愚楽牧場は破綻寸前」「和牛オーナー制度はすべて詐欺だ」など、ネット上で否定的な意見を目にした際のくだりでは、詐欺被害に遭う人の心理をうまく表現している。

ただ、「もはや、信じるしかない」、と決めていた私は、良い情報だけを受け入れ、悪い情報はシャットアウト。正直言って、そうしないと、不安で仕方なかったわけです。

詐欺被害に遭った人は、周りの人にきつく言われるまでは「騙されてなどいない」と信じ込むという話を聞いたことがある。

営業を断るための質問テク

一方、未公開株の営業電話がかかってきたとき、話を断るために次のように質問したという部分は、ぜひ覚えておきたいフレーズだ。

筆者 「これまでに貴社が扱った未公開株で、実際に株式公開した会社はあるのですか?」
営業マン 「いや、ハッキリとした形での株式公開は、まだ正式には確定していないのですが。ただ、近いうちに株式公開するであろう会社を、皆さまには紹介させていただいております」
筆者 「その会社がいつ株式公開するのか、それだけをハッキリと教えて下さい」「これまでに扱われた未公開株で、実際に株式公開した会社はあるのですか?」(引用の際に要約)

IPO株の当選確率を高めるために証券口座はどこで開設したかや、日経225ミニ先物を取引するとはどういうことなのかといった「あやしくない」投資の話も読める。
繰り返しになるが、投資経験ゼロの人が読むにはいい本だろう。

 

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