木村喜由のマーケットインサイト
2014年7月号
夏の急落不安あり、逃げ出す準備を
公開日:
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最終更新日:2014/09/19
マーケットEye マーケットインサイト, 木村喜由
日本個人投資家協会 理事 木村 喜由
NYダウは1万7千ドル大台に乗せ、SP500も2000に肉薄するなど、米国市場が相変わらず堅調である。しかし、これは長期の強気相場終盤に特有の、いわば惰性で流入する資金が演出しているものであり、企業収益が順調といっても株高の資産効果によって景気や雇用が底上げされているだけなので、実体経済はそれほど頑強なわけではない。
米国株価については、長期のテクニカル分析、特にサイクルや日柄、長期移動平均からの乖離率などを重視する手法では、軒並み注意信号が点滅している。またジンクスなどからいっても、毎回書いているように午(うま)年、しかも米国中間選挙の年に強気で臨むのは危険である。
表面的な指標だけで分析すれば、今の株価は割高ではない。なぜなら金利は超が付くほどの低金利、企業収益はパニックの後遺症で賃金が低水準に抑えられているところに、リーマンショック後に生き残った強者しか存在しないから少数寡占となり、マージンは下がらず、利益率は最高水準だからである。
それだけを見て株を買いだと結論付けるのは愚か者である。株価が天井を付けるのはいつも明るいものが大きく見え、暗いものが見えないときだからである。見える人にはその危うさが見えており、少しずつ利益確定を進めている。短期売買でドタバタをうまく乗り切れる自信のないものが参加すべき時期ではない。
リスクポジションを減らすか、先物でヘッジするのが賢明
しかし、いつ下げるかと問われても、答えることは出来ない。ITバブルの時のように楽観的な群集心理のオーバーシュートが表れるような場合なら、クライマックスが来れば次は反動が起きると言えるが、現在は債券市場が超バブル状況となり、ギリシャでも三流社債でもドンドコ買い進む投資家がいるため、そのあおりで株式市場にも債券市場からはみ出した楽観マネーがゆっくり流入している。彼らは資金が途絶えた時の株式市場の怖さを判っていない。
差し当たり日本市場が悪材料を抱えているわけではないので、冷静に為替と海外市場を注視し、不穏な動きが見えるまでは中立的ポジションを維持していてよい。しかし危険な徴候が現れたら、すぐにポジションを換金したり、先物で下げに対するヘッジを掛けられるように準備しておくべきである。
楽観ムードが強い時ほど急落が起こりやすい
前回、VIX指数が非常な低水準にあることを指摘したが、その後一段と低下し、10%に迫った。投資環境が良好であることの一つの示唆ではあるが、何事も行き過ぎに反動が付き物である。確かにISM指数などは当面の景気好調を暗示しており、雇用統計にも陰りは見られないように思える。それを承知した上で、警鐘を鳴らしたい。
現在の相場の強さは、史上に例のない、信用制度がある上で青天井の資金供給が行なわれているという、異常な状態で起きた出来事である。健全な経済成長の素地の上に成り立っているものではない。いい気になって投資家がお金を注ぎこんでいる間はうまく回るが、追加資金が止まると上げはストップし、短期売買の投資家にとっては危険な市場に転換する。すると急に大口の売りが連鎖し、いっぺんに市場の雰囲気が悪化する。
こういう時期に派手な立ち回りをするのはヘッジファンドなどの短期売買の投資家だ。彼らは長期的な分析など眼中になく、目先の損得にとらわれて行動する存在である。実体経済もへったくれもない世界なのである。このギャップの存在を知らずに、表面的なファンダメンタルズの良好さを訴えて投資を呼びかけるの業者やアナリストは、なまじ理屈がしっかりしているだけにたちが悪い。
少なくとも今現在、日本の多くの投資家に見えている世界は、さんざん苦労をさせられた挙句やっと光明が見えたところで、多少のトラブルはあってもあまり不幸な未来があるようには思えないことだろう。だが、長期の上げトレンドが続いてきた欧米の市場の参加者の感覚は大分違う。また中国の感覚も相当違うと思われる。
年後半の波乱相場を前提にして、立ち回りの研究をしておくのは良いことだろう。現金のポジションを大事にキープしておいて、ギリギリのギリギリまで我慢する。もういいかなと思ったら、資金の2割ほどだけ使う。もう一度そういう場面があるかもしれない。だが、3回目はじっと我慢して、相場が本格転換するまで何もしてはいけない。そうなるまでにあなたのポジションは相当傷付いている公算が強いからだ。
そこまで想像すると、早めにポジションを軽くして、下げ相場をうまくやり過ごすのが実は賢明なことだということが判る。
儲けにくい時期なのだから、無理をしないのがよい。
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