大井リポート
10月末にかけて粗い相場展開に
ポイントは米国金利、中国、ドイツ経済
公開日:
:
最終更新日:2016/05/16
マーケットEye
セイル社代表 大井 幸子
世界経済・国際金融市場の動向を見る上で、気になるポイントが三つある。
- 米国の政策金利がいつ上昇に転じるか。
- 中国の経済成長がどの程度まで鈍化するか。
- ユーロ圏の景気を今後ドイツがどの程度支えられるのか。
米国の金利上昇を見越してグローバル投資資金は米国へ向かい、新興国や資源国通貨を売りドルを買うというキャリートレードの巻き返しが起こった。さらに、市場関係者の間で米国景気の弱さが指摘され早期利上げ観測が後退すると、安全資産である米国債への資金流入が見られた。
米国債券市場を弱気と見てショート・ポジションを抱えたヘッジファンドが大きな損失を抱えたという報道もあり、今月末にかけて収益を取り戻そうとトレーディング・ポジションの動きが激しくなることから荒い相場展開になりそうだ。
中国・ドイツは成長を維持できるか
中国の経済成長は、第三四半期は7.3%と第二四半期の7.5%からやや鈍化している。加えて、中国の外貨準備高の伸びも鈍化している。
バンクオブ・ニューヨークメロンの通貨ストラテジスト、サイモン・デリック氏によると、中国は2001年末から先月までに外貨準備高として3.67兆ドルを積み上げてきた。ほぼ同時期(2001年末から今年6月末まで)、世界の外貨準備高は8010億ドルから8兆800億ドルと約10倍に増加したのだが、増加分に対する中国の貢献度はかなり大きい。
しかし、今年に入り中国の準備高の増加スピードが第一四半期1267億ドルから第二四半期の450億ドルと、かなりスローになっている。デリック氏はドル需要の底堅さは外貨準備高の増加ペースと相関していると指摘している。
同時に、現在のドル高はコモディティ関連価格の弱さとも関連しており、「世界の工場」となって輸出促進で高度成長してきた中国が、金融の自由化、内需拡大や改革を進め、成長率をどの程度維持できるのかが注目される。その程度こそが、外貨準備高における通貨の多様化や人民元がどこまで国際化するかの決め手となるだろう。
ユーラシア大陸の東に位置する中国に対して、ドイツは西に位置する重要な経済大国である。地政学者ジョージ・フリードマン氏によると、中国とドイツがユーラシア大陸を東西から挟み込んでいる。
そして、ドイツもまたユーロ圏内で輸出を伸ばし成長を続けて来た。しかし、このところは成長の鈍化が著しくなっている。ECBはマイナス金利に加え、社債を市場で購入することでさらなる量的緩和を図ろうとしている。
ユーロ圏にのしかかるロシアの地政学リスク
さらに、ロシアがドイツ、東欧諸国にとって大きな不安定要因となっている。18日に、ウクライナ政府はIMFからの資金でロシアへ50億ドルの返済を行うと伝えた。返済がないとロシアからの天然ガスを断たれるため、冬が近づく直前の苦渋の決断だった。
同日、ムーディーズはロシアの格付けをBaa1からBaa2に引き下げたと公表した。ロシアからの地政学リスクは引き続き重くユーロ圏にのしかかる。
米国の利上げがずれこめば、10月中に103円の円高も
日本市場にとってどのような影響があるだろうか。円安と原油安など資源価格安は日本経済にとってプラス要因である。問題は、米国の利上げのタイミングが予想以上に遅くなる場合で、月末にかけて103円の可能性もある。さらに、年末にかけて外人投資家が売り急ぐ場合、円高・株高から株安になる可能性もある。
関連記事
-
-
【初・中級者向き】映画「博士の異常な愛情または私はいかにして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」と「北」水爆の解決
2017・9・10 1964年の名匠スタンレー・キューブリックの傑作。62
-
-
映画「ゼロ・ダーク・サーテイ」と長期では日経平均5万円の目標を私が掲げる理由(第1054回)
面白い題だが、米国軍隊の俗語で、「未明」を意味する。アカデミー賞を含む60の賞を受賞した 名
-
-
【初・中級者向き】ya歌劇「カルメン」と大阪万博招致成功と原油急落とダブル選挙
久しぶりに新国立劇場の「カルメン」を観た。主役とドン・ホセがいい出来だったが闘牛士がイマイチ。残念
-
-
トランプ大統領誕生の予測的中!長谷川慶太郎理事長の9月有料記事を公開!
長谷川慶太郎の9月7日投稿ジャイコミ会員向け有料記事を公開。 長谷川慶太郎の時局分析~No5~
-
-
【初・中級者向き】映画「キングダム」と中国が米国に仕掛ける超限戦
4月中旬の上映開始以降ずっと興行収入上位を続けているヒット作。面白いから、と勧める向きがあって観た。