木村喜由のマーケットインサイト
投機筋が振り回す年初
慌てず逆張り対応が賢明
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マーケットEye マーケットインサイト, 木村喜由
日本個人投資家協会 理事 木村 喜由
<2015年1月号>
年末年始の株式市場は圧倒的に上がる場合が多いものだが、今年は違った。日経225は年末29日の17,920円から年明け早々6日の夜間取引で16,540円まで叩かれ、その2日後に17,400円まで急反発している。日本経済にこうした変化の原因となるような出来事はない。海外主要株式市場の値動きはこれよりずっと小幅なものであり、要するに日本株は国内勢の参加が少ないのをよいことに、大手投機筋が好き勝手に振り回して零細投機家を食い物にする、格好のおもちゃになっているのである。
日経225は本当に割安か
これに対抗すべき日本人のストラテジスト連中の不勉強も驚くべきほど。日経225のPERは16倍前後なので割安だと言われているが、これは225採用の銘柄の時価総額を予想純利益で割った結果である。しかし現実の225インデックスは単純平均なので、値がさ品薄銘柄の比重が高くなり、単純ベースPERは5倍も割高になっている。この理由は225連動投信の残高増と裁定取引の活発化により、225バスケットの残高が増えたため、結果的にファーストリテイリングを筆頭とする発行株数1億株前後の需給が極端に逼迫したためである。
純投資目的の機関投資家でこんな高値で買う者はおらず、日本株は割安という主張にプロの運用者は笑っている。しかし筆者の計算でも加重平均PERは15倍であり、価値の目減りが著しい円預金やリターンが見込めない不動産など即刻売却して株式にシフトすべきであると思う。日本の個人こそ、株式シフトを進めるべきである。
断固たる日銀の超金融緩和
なぜなら日銀も政府も断固としてデフレ脱却を進める方針であるが、そのためには最終的に物価も賃金も年率2%で上昇する世界を作る必要がある。無茶でも何でも、デフレが続けば日本の財政破綻の危険性が高まるのだから、それを回避する行動は全部正しいことになる。現実が変化するまで日銀は異常な金融緩和とETFによる株式買い付けを増やし続ける腹を固めている。とにかく、アベノミクスと言われる諸策の中でうまく機能しているのは日銀の緩和政策だけなのだから、これを放棄するはずがない。失敗する可能性を筆者が問われれば、ゼロに近いと答える。
一方、米国は6月以降利上げが連続するモードに入っている。前回のFOMCの際のFRB理事全員へのアンケートで3年後のFFレート予想値平均は3.75%だった。これは0.25%利上げが15回実施されるということで、円安トレンドは明らかだ。
日本株の価値は上がり、円の価値は下がる
イエレンさんの引き締めに消極的な姿勢や、過剰な資産バブルのプルバックを見込むと3年後のFFレートは2%台と見込んでいるが、その時点でも日銀が緩和姿勢から転換できるとは思えない。次回の消費税率引き上げを乗り越え、賃金も物価も2%上昇という世界が実現しているとは思えないからだ。ならば黒田日銀は超金融緩和を頑固に続行するだろう。したがってドル円相場は一段と円安方向にシフトしていると考えざるを得ない。
筆者は四半期決算毎に225採用企業の財務データをチェックしているが、純利益も一株純資産にも明確にドル円相場との順相関、つまり円安になると利益も資産価値も上がる、だから株価が上がるのは当たり前と言う関係があるのを確認した。
今の円安を一時的偶然と片付けるのでない限り、そして一段と円安が進むと信じられるなら、株価は一段と上がるはずである。それは円の価値が明確に下がっているからだ。海外旅行すれば直ちに実感できるし、なぜ中国系旅行者がこんなに多数来日して目一杯買い物するか理由がわかるだろう。多分過去5年で賃金は5割程度上がり、円が3-4割下がっていれば、実質的にかつての半値で買えるのだ。逆に旅慣れた日本人旅行者は5割以上コストが上がっていると認識するだろう。
死ぬまで資産の移し変えをする気がないお年寄りが大半だが、相続して世代が変わると発想は大きく変わる。年間100万人以上の死者と相続の発生は、嫌でも資産流動化を促進する。使えない資産や無利息の資産は叩き売り、最小限でもリターンの確保できる物件にシフトしたいと願うはずだ。そう考えると円安トレンドのスケールはトレード感覚でモノを見ている参加者が考えているよりずっと大きい可能性がある。
ギリシャの混乱は一時的、原油下落はマクロにプラス
足元ではギリシャの大統領選挙に絡むユーロ脱退懸念から市場が動揺しているが、経済規模は非常に小さく、尻拭いをさせられるドイツはもう愛想を尽かしており、むしろ一時の混乱で済むなら脱退を歓迎している風にさえ見える。原油の下落は、金融市場にとってオイルマネーによる投資資金の回収というマイナスの部分があるものの、基本的には需要家全員に対して不当な高値の取り消しがあったのと同じで、マクロ的には大幅減税と同様のプラスとなる。マクロ経済にはあまり心配しなくてよいだろう。
今年は3月、8月、年末に相場が下がりやすいサイクルとなっている。無理せず高値の時期には利益確定し、下がったところで買い戻すという姿勢をとることで、ストレスを軽くして過ごすべき年だと思う。外国人の買いは期待できないが、日銀の買い、自社株買いの増加により株価は大きく下がらない。
(了)
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