映画「史上最大の作戦」と不況対策によるトランプ人気回復、それに日経平均暴落時でも株高になった我が国の銘柄(第1005回)

公開日: : 最終更新日:2020/04/21 マーケットEye, 中級, 初級, 無料記事 ,

 ご存知の戦争映画の代表作。当時の製作費43億円は普通の作品なら7,8本作れる巨費。エキストラの兵隊15万人、使用された地雷4万個、現実に使われた地雷40万個の十分の一。ノルマンディー上院作戦を描くには、これほどまでの物量投入が必要だったのだろう。

 原題は「いちばん長い日」。これは独の名将ロンメル元帥の名セリフだ。

 「上陸作戦の勝敗は24時間で決まる。わが軍にとっても連合軍にとっても、いちばん長い日になるだろう。」この名セリフを我が国の昭和20年8月15日の玉音放送に絡んでまとめたのが半藤一利さんの「日本のいちばん長い日」。2回も映画化されたので、ご存じの方も多いに違いない。

 歴史の示す通り、この作戦は成功した。しかし➀連合軍が上陸したノルマンディーをドイツ側は予想していなかった②切り札になる機甲師団はヒトラーがクスリを飲んで熟睡していたので誰も起こせず、投入出来なかった、などの失策であったことも、この映画は指摘している。そこいらが単なる戦争映画と一味、違うところだ。

 今回のコロナ・ショック対策を観ていて、この物量作戦を私は思い出した。

 3月26日米国上下両院が可決、成立したコロナウィルスに対処するための法案は2兆ドルとGDPの10%弱。

 2008年の金融危機後の対策が7000億ドル、2009年のオバマ政権時は8000億ドル。二つ合わせた対策費より多い。

 単に予算の大きさだけではない。3月23日、FRBは実質的に無制限に米国国債を買うことを表明。同日パウエル議長は「我々の弾丸はまだ十分にある」と述べた。

 それでも不十分、という声さえあるのは、今回のコロナ不況の深刻さを物語る。セントルイス連銀のプラード総裁によると「4~6月に失われる2兆5000億ドルの所得を穴埋めする強力な財政対策が必要」とした。これでもまだ、追加対策が必要とみていることになる。

 株式市場の方は、とりあえず、この対策を好感。下値からの戻りが20%を超え「弱気相場から過去最短で抜け出した。(WSJ3月27日)」。

 この日に発表された失業保険申請件数は328万件と過去最大の5倍近く。それでも株式市場は対策を好感した。

 これでトランプ大統領が11月の大統領選に点を稼いだのは、言うまでもない。

 最新のギャラップ調査によると、トランプ支持は49%、コロナウィルス対応に関しての支持は60%、調査時点では株価反発はまだ大したことがなく、メルトダウン状態にあった。それでもこの結果だ。米国エスタブリッシュメントによるバイデン候補支持は、一歩後退の感は否めない。

 アレレと思ったのは、リアル・クリア・ポリティクスによる調査。バイデン支持を行う中道派へ意見を持つ有権者。バイデン支持を行う中道派へ反発する有権者は実に45%、民主党支持でも36%と高い。これにトランプ支持固定層を含めると、米有権者の過半が再選支持となる。少なくともコロナ危機をトランプ氏は巧みに利用したことになる。もちろん、エスタブリッシュメントへの反感だけでは、投票へは結び付かないが。

 では、我が国はどうだろうか。3月28日、安倍首相は記者会見で「かつてない規模の経済対策を策定」すると述べた。

 従って現時点ではお手並み拝見、ということになるのだが、「目玉」となる個人、中小企業への給付金でも、リーマン当時のやり方を参考にすると、まあだめだ。

現金給付は、早くて5月末。地方自治体から申請書を国民に送付し、それに応じた人の本人確認を地方自治体が行い、銀行口座に振り込む。なんて煩雑な方法だろう。また、先行きについて、国民が自信をもてるような内容がない。

 やはり私が先週主張した通り、超長期国債(60年もの、建設又は投資国債)の日銀引き受けが必要だ。

 安倍首相はG7の電話会議で「思い切った経済対策」を主張した。財務官僚のケチおやじどもに付き合って、この国を大不況に導くことだけは、お止め頂きたい。

 株式市場の動向で、私を力づけた事実がある。あの大幅下落の3月中旬でも上昇した銘柄が12もあったことだ。以下銘柄を列記する。

 NTTドコモ(9437)、菱洋エレクトロ(8268)、アルフレッサホールデイング(2784)、クリエイトSDホールディングス(3148)、クスリのアオキホールデイングス(3549)、アイカ工業(4206)、あすか製薬(4514)、中外製薬(4519)、日本ペイントホールディングス84612)、ライオン(4912)、小林製薬(4967)、丸和運送機関(9090)。

 映画のセリフから。ノルマンディーに向かう艦内で上官が部下に言う「よく覚えておけ。百年先まで語り継がれる作戦に我々は参加しているんだ。怖いことに変わりはないが。」3月11,12,16、18の大幅下落時でも、勇気を奮って投資した人もいたんです。

 (ついでに。私は3月14日の講演会で「13日の1万7000円近辺でほぼ底が入った。3月下旬には乱高下するが、一部でいわれている1万4000円とかの安値は考える必要ない」と述べた。これが的中したことは、歴史が証明する。また私は戻りの目標として日経平均2万2000円と述べた。作戦としては、大幅に下落した中国関連などの突っ込み込み買い、とくに日経平均のブルETF。最後に技術革新が目立つある銘柄を注目した。)

関連記事

今井澈のシネマノミクス

【初・中級者向き】映画「工作 黒金星(ブラックヴィーナス)と呼ばれた男」と日韓関係の「次の手」

(第974回)2019・8・4 私としては珍しく韓国映画を観た。ご存知の通り、日韓関係に絡んで、「

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

ヨハン・ゼバスティアン・バッハの復活と拙著『日本経済大復活』との共通性。そして目先の投資の名案

ヨハン・ゼバスティアン・バッハの復活と拙著『日本経済大復活』との共通性。そして目先の投資の名案

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

アガサ・クリスティー「ナイル殺人事件」と2023年の日本が明るい理由。私が注目する政府純債務がコロナ前より減少した事実。私の入院(第1137回)

何しろ今年は、アガサ・クリスティー生誕130年、名探偵エルキュール・ポアロも生誕100年。全世界で

記事を読む

ジャイコミ・ボランティア募集中

ジャイコミでは、記事をジャイコミ上にアップしてくださるボランティアを募集しています。投資・経済の勉

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

【初・中級者向き】大阪G20の成果と参議院選挙後の政局と株式市場展望

(第969回)2019・6・30  大阪でのG20が無事終了した。安倍首相は議長としてうまくやった

記事を読む

PAGE TOP ↑