2015年を読む⑤
日本人が知らない中国投資の見極め方【6】
みんなが「怖い」と思っているうちは株はまだ上がる?
アナリスト 周 愛蓮
2014年の中国株式市場は、久々にワクワクした1年だった。代表的指数の上海総合指数は年末終値が3,234ポイント、年間の最高値で終了、年間上昇率を52.8%記録し、世界主要市場で最高のパフォーマンスを上げた。当初は弱気一色だったなか、最も強気の部類に入る筆者の予想は史上最高値(6,124ポイント)の半値戻しだったが、現実は予想を上回った。
2014年には中国株式市場における歴史的な出来事もあった。4月に打ち出された香港株式市場との相互取引は、11月17日に実現、最初の取引は盛り上がりに欠くものの、資金は中国のマーケットと世界のマーケットの間に自由に流通できるようになったことの意義が大きい。
さて、2014年の勢いを引き継ぎ、2015年は取りあえず好スタートを切った中国市場は、今後どこへ向かうのか、中国株を投資するならここは大いに悩むところ。そのトレンドを見極めるのには、3つのポイントが重要であろう。
1. 大口個人投資家は撤退、新規参入が続くか
2015年を迎える前に、すでに一部の大口投資家がすでに利益確定をして株式市場から撤退したと伝えられている。
2014年の年央までに株価が低迷していた時に、習近平・李国強政府の反腐敗や改革に対する「やる気」を見込んで、いち早く株式市場に資金を投入し人たち、かれらこそ底値買いをした投資家だった。上海総合指数が2,000ポイント前後でもみあっていたとき、ほとんどの証券会社が弱気な予想を発表していた。出来高も細り、5月は年間最低の売買高を記録した。
ところが、機関投資家の弱気を尻目に、一部の大口個人投資家は「国有企業改革」「自由貿易区」「21世紀シルクロード経済ベルト構築」をテーマに関連銘柄を物色した。年末に近づくころにこれらの銘柄はほとんど3倍以上に値上がりし、上海総合指数は3,000ポイントを前にした時に、こうした先行投資家の一部は撤退したようだ。
中国の証券登録と決済を行う「中国証券登記結算有限公司」の統計によると、2014年11月に投資残をゼロにした口座は23,300件にのぼった。株価は年初来高値を更新した時に持ち株を売却したわけだ。
一方、株式市場に久々の活気が戻ってきたことをみた人々は、マーケットに参入する。新規開設の株式口座数は12月に297万超となった。中国では、ひとりの投資家につき、一市場で1つの株式口座しか開くことが認められていない。したがって、ひとりの投資家は同時に上海市場と深セン市場の口座を開くと考えて、新規口座数を2で割ると新規の市場参加者の数になる。新規口座数は、新規参入の投資家数と考えられている。2014年5月に月間28万件だった新規口座は、9月に87万件、10月に82万件、11月には108万件、12月には297万件と、株式市場に投資家が戻った。新規の投資資金は株高を支えた。
2.家計資産は預金や不動産からシフトするか
ところが、2014年末現在の投資口座数は1億4,214万(約4,200万の休眠口座除く)であるのに対し、実際に株式を持っているのは5,412万に過ぎない。長い株価低迷により、投資家は資金を株式市場から引き揚げたことを物語る数字であり、潜在的投資家は1億近くもいるとも推測できる。
株価上昇をみた個人は、家計の資産運用を見直す可能性が高い。中国の家計の資産運用は基本的に銀行預金に偏っている。利下げにより預金金利が低下方向で、預金が株式市場へのシフトが進む可能性が高い。家計預金残高は46兆6,500億元(13年末時点)、これに対して株式市場の時価総額は約35兆元(14年末)、浮動株のみなら14兆元に過ぎない(14年末時点)。したがって、預金から株式市場への資産配分が少し行うだけで市場への影響が大きい。
一方、これまでに不動産や「理財商品」へ巨額な資金が投入されたが、不動産価格は小幅ながら下落傾向にあり、理財商品は政策の制限と不動産の値下がりにより、利回りが低下している。また、理財商品へのリスク認識が徐々に広がっている。今後は、これらの商品から資金の流出が続く可能性があり、その受け皿となりうるのは株式市場であろう。
3.もはや割高感はないA株、指数入りすれば海外資金流入
世界の主要株式市場は2009年から順調に回復し、株価指数は2014年に史上最高値を相次いで更新した。一方、中国市場の代表的指数である上海総合指数は2014年後半に約6割上昇したとはいえ、2007年10月につけた史上最高値の半額を少し上回った程度。このような見方から、中国市場の回復はまた道半ばであるともいえる。
また、バリュエーションの評価からみると、上海総合指数のPERは2014年半ばの10倍未満から大きく回復、現在の15年予想PERは13倍台に回復したものの、世界の主要株価指数のそれは13~18倍であることを考えると、特に割高感があるわけではない。
もう1つ重要なことは、海外の投資資金のポートフォーリオにおける中国株の組み入れ比率が低いことである。その原因は、主に中国による外国人の投資制限があるため、海外投資家が中国株を自由に売買できないからだ。GDPは世界第2位でありながら、中国のA株は世界投資のベンチマークとされるMSCI新興国市場指数に入っていない。しかし、14年11月に上海市場と香港市場の相互取引が開始。15年には深セン市場と香港市場の相互取引も開始する可能性が高い。今後、中国A株が指数入りすれば、世界の機関投資家は中国株への資金配分比率を高め、海外資金が流入する可能性があろう。
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