アベノミクスのカギを握るのはリスクマネーの“目利き”
投資家も銀行もリスクをとらなければ将来収益は見込めない
五味廣文・元金融庁長官【下】
公開日:
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最終更新日:2015/03/16
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ジャイコミ編集部
2月25日に開かれた日本個人投資家協会の創立20周年記念セミナーの模様を、メインゲストである五味廣文氏の講演からお届けしています。元金融庁長官で不良債権問題に携わり、現在は西村あさひ法律事務所顧問を務める五味氏。上編「日本とギリシャ、同じ?違う? アベノミクスは日本国の“事業再生計画”」に続く後半では、リスクマネーの重要性、そして金融行政の変化にお話が展開しました。 
構造変化を起こすのは金融のリスクテーク
これからの金融の役割は、環境変化に適応するリスクをとることです。これまでの薄くていいから利ザヤを稼ぐという姿勢ではダメです。構造的な環境変化が起こっているのですから、どこに投資・融資すれば収益を生むかを見極めなければいけません。体質が変われば、生活習慣を変えなければならないのです。
金融機関や投資家にとっては、とるべきリスクが変わりました。構造が変わる時のリスクは大きいですから、資金調達の手段はdebt(負債)ではなく、equity(資本)になります。資本性の強い資金を入れなければなりません。 金融庁の規制として、銀行が投資性の資金を投入することに根強い反対がありました。しかしもう一度チャレンジする必要があります。現実の運用でも変化が起こっています。一般の投資行動でも目利きが必要になります。
金融は触媒です。ある技術があっても、金がなければ反応が起こりません。金融が入れば、技術と金との化学反応を起こして、事業の成功をもたらします。投入した金は戻ってきます。 環境が変わった時には金を投入するところが変わります。今までと同じところにいくら追い貸ししてもダメです。
金融機関は石橋を叩いて渡ります。なかには叩いて壊すこともあります。これからは叩いて渡るのではなく、作って渡るのです。江戸時代にかけた石橋をいくら叩いても鉄道は通りません。鉄橋を新しく作らなければなりません。きわめてリスクは大きいですが、石橋をいつまでも叩くというリスクを取り続けるわけにはいきません。
金融行政が検証すべきは過去の損失より将来の収益
金融行政も変わってきています。 金融機関のモニタリングの基本方針としては、不良債権のような過去の損失検証はルーティンワークとして自分でやっていてください、となります。貸し倒れで銀行がつぶれる状況ではありません。それよりも、収益を上げ続けられるのか、勝ち抜いていけるのかが重要です。そこを間違えると破綻が起きます。
いつまでも地方の小さな銀行のままで生き抜けるのか。大きいところも、国際環境のなかで最低限やらなければならないリスク管理が出来ているか、ではなく、儲けるために必要なことができているかが問われています。新しくリスクをとるのですから、リスク管理体制も環境変化に適応したものにしなければなりません。
地域金融に統合再編の連鎖を
特に地域金融は深刻です。 日本はもう発展途上国ではありません。霞が関が大号令をかけて、みんなが成長していく段階ではないのです。各地域の実情に応じた体制を作らなければなりません。そのために国は規制緩和をします。国が主導して、ああせいこうせい、というのではありません。 人口が減って都市に集中しているのですから、今までの同じビジョンでぬくぬくと生きてはゆけません。
統合再編は避けては通れません。体力があり、選択肢が広いうちにやっておくことです。苦しくなった時にではなく、実力があるもの同士の統合がぞくぞくと起こることが理想です。
(会場からの質問)
競争促進型の再編というが、現実には地銀は長期国債ばかり買っていて貸し出しをしていない。どうすれば再編が進むのか。
(五味氏の返答)
タダ同然で預かって、タダ同然の国債を買うのなら僕でも出来ます。再編促進に虎の巻はありません。ですが、金融行政の方向転換は、行政としては大きな武器です。将来のサステイナブルな収益の見通しがあるのか、本気で詰めていきます。それが経営計画になっていなければ、どうするのか強烈に迫り、統合再編しかない、というように動くのです。今の金融庁幹部がそのつもりかどうかは分かりませんが。
金融機関の不良債権をあぶりだす時、そのことが再編を促進しました。 将来収益を詰めていくなかで、追い詰められてどんな選択肢をとるのか。弱小だけではなく、大部分が追い詰められます。何らかの行動をとらざるをえません。地域できっかけとなる統合が起こった時には、次の動きを促します。何かしないと潰される、ジリ貧だという危機感を持たせるのです。これが起こると連鎖的に統合が起こります。経営の基となる地域と資産は、広く大きくしないと選択肢が広がりません。リスクがとれないのです。
(続く)
五味廣文氏の講演を動画でご覧いただけます。
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