映画「フォーカス」と中国経済の破綻と上海株
今井澂・国際エコノミスト

公開日: : 最終更新日:2015/06/01 マーケットEye ,

かつての名作「スティング」とか小説「百万ドルを取り返せ!」とかー。詐欺を扱うコン・ゲームは私の大好きな分野だ。あんまり興業的には当たらなかったが、ウィル・スミス主演の「フォーカス」は十分に面白かった。

「盗む相手の視線(フォーカス)を操ることが出来れば、なんだって盗むことが出来る」とウィル・スミスが女弟子のジェスに教える。この女優マーゴット・ロビーが何ともセクシー。「ウルフ・オブ・ウオールストリート」のレオ様の夫人役のあの超美人だ。人気が出るだろうなあ。スタイル抜群だし。

いろんな詐欺が出てくるが、ヤマ場は「スティング」に少し似て「パニック・ボタン」だ。詐欺師が相棒の急所を外して撃ち、命は助けるが、周囲には殺したと思わせる。きわどい作戦だ。

円安はアルゴリズム、株高は欧州機関投資家の長期買い

いま、中国がきわどいことを少しやっている。一方、日本株が11連騰で世界の注目の的だ。円レートも118円50銭から120円50銭の1月から続いていた持合いを一気に上放れだ。

円安の背景はイエレン発言(5月22日)に反応したコンピューター売買(アルゴリズムという)だろう。円売り日本株買いのプログラムが一挙に動いた。

株の方は欧州機関投資家が日本経済の前途を確信して長期買い。

たしかに世界中に金が余っている。加えて日本の場合、企業収益はどう固く見ても今期15~18%増益だし、株主優遇のため増配、自社株買いなどを企てる企業は多い。いい環境だし、GPIF、日銀ETFその他の官製相場の買い勢力が下値を支える。

円レートはチャーチストは128円というが、そこまでゆくまい。G7での要人発言がこれ以上の円安をけん制する。125円、せいぜい126円だろう。

株?11連騰はあと3日もすれば一休み。そこで出遅れ買いが又入り、2万2000円の達成は案外近いのではないか。

今年と来年は日本株の稼ぎ時

私は2017年には

①安倍・黒田両キーマンの任期満了を翌年に控えて、少なくとも第一の矢は終わりになる

②中国がそのころハードランディングに突入する。

この予想に立って、今年と来年でオイシイ成果を得なさい、とアドバイスしてきた。幸い、ファンの方々からは感謝の言葉をいただいている。

どんな銘柄?

出遅れ狙いなら、2007年から50%時価総額で下げている、大手銀行株。

順張りなら電子部品か警備保障の一流もの。この説明はこのブログの読者なら先刻ご存じだろう。初心者はJPX400のインデックス・ファンドがおすすめだ。

リスクは何か。

ギリシャ問題は6,7月が「正念場」だそうだが、もう何回目なのか。EUをギリシャが脱退すれば銀行は取り付け騒ぎになるし、ドラクマが大幅に切り下げられるので、瞬間ユーロ高だ。しかしその確率は高いとは思えない。

もっと大きなリスクで週刊誌まで騒ぎ出したのが上海株大暴落リスク。

これも私は、今年、来年には表面化しないと考える。なぜか。上海株こそAIIBと並んで習近平が仕組んだコン・ゲームでバブルそのものだが、映画のように一部の国家をダマクラかし、また金利を引き下げて破局を押さえ込み続ける余地があるとみるからだ。

バブルがはじけるまで、あと1年

上海株のコン・ゲームをはっきりと示したのが図だ。産経の田村秀雄さんがつくった。

20150531china 図にある通り、昨年11月と今年2月、5月11日と3回利下げを行い、上海株は2500から4500に急上昇した。企業収益は悪化しているし、李克強指数として知られている実体経済の指標もメチャ悪い。

(最近月、前年同月比、%)

①    鉄道貨物輸送量 マイナス 27・8

②    電力消費 マイナス 7・4

③    銀行の社会融資 マイナス 80・8

 

それじゃハードランディングが近い、と誰もがかんがえる。しかし、金利の引き下げ余地がまだ十分ある。現在の政策金利は5・1%。消費者物価は0・7%(コア物価は0・4%)だから、あと何回でも下げられる。3%は十分下げられるとすると、今年、来年前半はこのイカサマゲームは、何とか、もつ。

日本がバブルが破裂してから、銀行破たんまで金利を引き下げ引下げして破局を回避したのを同じことをしている。最後は同じことになるのだがー。

私の上海に住んでいるあるニュースソース(日本人だ)が、最近共産党の高官から「私の息子を養子にしてくれないか。カネはこれこれ」と頼まれた、と言っていた。断ったそうだが、別の高官から同じ話が又あったらしい。ワイロをとれなくなった役人が株で儲けて国外逃亡を図っているのだろう。

利下げでも人民元切り上げの無理筋

普通、利下げすれば人民元は切り下がる。しかし中国人民銀行は人民元の対ドル・レートを小刻みに切り上げている。これは昨年後半以来加速化している資金流出を食い止めるためだ。これもムリな話だ。私は「ムリへんにムリと書いて習近平と読む」といっている。

中国の外貨準備は昨年6月以来減少の一途。半年で1500億ドル減。9カ月で2630億ドルも減った。国際金融市場での外債発行や銀行借り入れで外貨準備残が減らないよう努めているが、よくまあAIIB設立なんてズウズウしいことが言えると思う。あんなものに日本も参加すべし、と言っている人の顔が見たいものだ。

結論。

当分、日本株のことは心配せず強気一貫でいい。カラ売りしている向きは早く買い戻しなさい。

映画のセリフから。

主人公が犯罪の教師であるオヤジの言葉を弟子に紹介する。

「更生してるか?と聞かれたんだ」

「それで?」

「仮出所するたんびにオレは更生しているんだ、とさ」

いつの日にか日本株も「どん底」に入所するだろうが、まあ当分大丈夫。ご心配なく。

映画「フォーカス」と中国経済の破綻と上海株(第776回)

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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