「老人と海」とFRB利上げ以後の意外な展開

ヘミングウエイのこの中編小説の傑作はノーベル賞受賞の対象となり、今でもよく読まれている。映画もスペンサー・トレイシー主演で1958年に製作された。

キューバの老いた漁師の巨大なマカジキとの3日間にわたる闘いが画かれている。この獲物は「この魚が一匹あれば一人の人間が一冬食ってゆける」値打ちがある。仕留めて小舟に魚体をしばりつけるが、帰途に血の匂いをかぎつけたサメに食いちぎられ、結局骨だけを持って帰る。

老人サンチャゴは云う。「人間は殺されるかもしれないが負けはしない」「オレは死ぬまで戦うぞ」。
この闘志に読者はひかれ、この小説は忘れられることはない。映画も良かった。

ユニクロが買われれば日経平均は上がる

NY市場はイマイチだが東京株式市場は元気。以前から申し上げている「海外市場がどう動いても東京は上がる」の予想通りの展開になっている。

ただ、日経平均の強調ぶりには、この市場平均が単純平均であることも影響している。つまり225種の株価を全部足して、それに一定の乗数を掛けてつくられている。そのため先日のファナックの1日で10%を超える急落でも、ファーストリテイリングの高値更新で、すぐ下げはチャラになってしまった。

もう20年以上前になってしまったが、私は外資系証券会社がグルになって日経平均を操作し、先物やオプションでボロもうけしているのを告発したことがある。

『週刊東洋経済』にこれを指摘する私の論文が出たとき、東証で私はある審議会のメンバーだった。日経代表から私は文句をつけられて大迷惑した。
私はダウ式株価平均の欠点を主張していたにすぎない。まあその後、私の主張は証券界の常識になったが。

7月末現在での、指数への寄与度を銘柄別にみると次の通りとなる。
①ファーストリテイリング 11.8%
②ファナック 3.97%
③ソフトバンク 3.96%
④KDDI 3.6%
⑤京セラ 2.4%

ご参考までにNYのダウ工業30種の方はこうなる。
①ゴールドマンサックス 7.9%
②IBM 6.1%
③スリーエム(3M) 5.7%
④ボーイング 5.4%
⑤アップル 4.7%

東京株式市場で時価総額1位のトヨタは指数への寄与度はわずか1.5%にすぎない。2位の三菱UFJフィナンシャル・グループは0.17%、三井住友フィナンシャルグループは0.10%である。

まあこの数字が物語る通り、ユニクロが買われれば経常減益予想でファナックが下がっても、日経平均は上がる。ファナックの株価も7月末に急落したあと株主還元も「良く考えてみれば予想される」と上伸しているので、2万500円から上昇を再開した。

次のステップは2万1000円だろう。ここを抜くと次は2万2600~2万2700円が目標。

オッカナイ話の半面、いい話も

もちろん、世界を見回すとオッカナイ話ばかり。中国のバブル崩壊とかロシアとかー。ギリシャだって話を先延ばしにしただけだし。
NYでは比重の高いアップルが、時計の売れ行きが良くないのか、動きが弱い。連日安だ。

しかし日本にとっていい話も。原油価格の下落が一段と明確化したことだ。

第一にイランの石油相の制裁解除後の大量増産計画(日量100万バレル)の発表。第二に米国の原油輸出解禁法と沖合いの原油天然ガス採掘拡大法。40ドル台の下の方にとりあえず下がり、30ドル台も。日本にとり大きな材料。

安い原油と矛盾するが、2016年からのメタンハイドレート安定生産実施計画も、私の「夢」だ。(8月4日の日経新聞が16年秋にも安定生産のための実験開始と報道)。

FRBの金利引き上げは近づいている。アトランタ連銀総裁は「9月」と明言した。
注目の労働統計も予想どおりで好調。私は意外にもドル売りが始まると思う。

なぜか。まず材料出尽くし感。2回目の利上げの時期の読みにくさ。さらに過去の例では利上げはドル売りの号砲である。

米金利とドルレート年初来の世界の通貨の動きをみると、上昇したのは①スイスフラン11%、②英ポンド8.6%、③米ドル7.4%の順。

一方、下落は ①ブラジルレアル▲16% ②NZドル▲10.1% ③カナダドル▲8.7% ④豪ドル▲6.3%。

日本経済の4~6月のマイナス成長は確度が高くなったが、景気対策としての補正予算への期待も同様だ。いまの支持率から見ても、安倍内閣は来年の参院選をこのままでは勝ちにくいと考えるはずだ。

猛暑で株価は「夏枯れ」にはなるまい。前記した日経平均寄与度の高いソフトバンクの1200億円もの自己株買いも寄与するし。

生きることを楽しんでいます

実は私は今、方々の事情通に伺って、「全天候型」の企業を探し続けている。

先週のサイバー攻撃対処はそのひとつ。全天候型とは世界のブラックスワンがコトを起こしても打撃が軽くすぐ株価上伸が期待できる企業である。
たとえば7月上旬の急落でも下げがなく、上伸歩調にかげりのないもの。たとえばテンプHD、ウェザーニューズや、食品、薬品株の一部とか。

ヘミングウエイの遺した名言をいくつか。
「勇気とは、窮地に陥った時に人が見せる『気品』のことである」「この世は素晴らしい。戦う価値がある」「陽はまた昇る」「私は殺されることはあっても負けることはない」「今は『ないもの』について考えるときではない。『今 あるもの』で、何ができるかを考える時である」

私はこの次のが一番好きだ。
「私の人生は、ほんの一行で要約できるだろう。そう。私は生きることを十分に楽しんだ、と」

来来週、80歳になるが、確かに、私は楽しんでいる。これからも。
どうぞ皆様、応援してください。

 

「老人と海」とFRB利上げ以後の意外な展開(第786回)

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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