魅力の銀行株、マイナス金利は蚊に刺される程度

日本個人投資家協会 理事 木村 喜由
Vol1371201623日)

 

 

SWFによる換金売りで急落

昨日(2月2日)のシカゴ市場の225先物の終値が17440円。まあ日本市場で大きな悪材料が出たわけでもないので、17500円近辺で終わるかなと思っていたら大間違い、2月3日は朝方からバラバラとVWAPの売り(すなわち機関投資家が時間分散して一日中注文を出す)と思われる売りが出て、これに逆らっても勝てないと、買い方は戦意喪失。あれよあれよという間に17080円まで叩き込まれた。

おそらくは1月と同様に産油国系SWF(国富ファンド)の換金売りが出たのだろう。少し戻したとはいえ原油売り上げに依存する産油国の予算と現在の市況には大きなギャップが生じており、資金繰りのために手持ちのファンドを逐次解約する必要がある。ちょうど日銀の追加金融緩和のおかげで世界の株価は急反発していたため、売る方にとっては願ってもない好機となった。おそらく昨日(2月2日)の欧米市場の大幅下落もそのためと思われる。

相場が戻ったときに売り物が出る

東証一部売買代金は2月1日月曜3.58兆円、2月2日火曜2.95兆円、本日2月3日3.14兆円とかなり多い。おそらく外国人は先物との合計で5000億円程度は売り越しているのではないか。ただし月曜は債券が急騰した結果、押し出される形で株式の比重を上げようとした投資家の買いも交じっており、外国人同士で売り買いが交錯していたように見える。

SWFの7-8割は産油国のもので、昨年秋で900兆円規模存在していた模様。1-6月で38兆円の換金売りがあったと見られるが、7-12月は50兆円以上の売りがあったろう。原油価格が一段と下げているから、今年1-6月は70兆円規模の売りを見ておくべきで、その第一弾を年明けから見せつけられたのだ。断続的にこうした売り物が出てくると覚悟すべきで、好材料で世界の相場が戻った時ほど警戒しなければならない。

日米ともに業績が下方修正、上値は重い

需給面が上値を抑える一方で、業績面でも頭が重くなってきた。

米国では12月期決算発表が峠を越えたが、実績も予想も下方修正されている。SP500の一株利益EPSは普通、日本とは違って一時的要因を排除したベースで語られているが、一時的要因のマイナスは案外大きく、昨年の実績見込みEPSは前者が105.62、後者が93.59である。だから米国のPERは日本流にいうと20倍前後であり、株価が割安ということはない。今期予想のEPSは現在115になっているが、おそらく100以下に落ちてくるだろう。

本日2月3日現在で日経平均225銘柄のうち125社が発表を終えた。開票率は時価総額の54%。残念ながら結果はパッとしない。3月期決算の110社で集計したところ、10-12月純利益は前年同期比2%減。さらに通期予想を下方修正するところが続出しており、通期純利益予想は3か月前の11兆795億円から10兆3200億円に下方修正されている。この結果、通期純利益の増益率は約2%まで縮んでしまった。年初に声高に語られていた2万2千円目標は跡形もなく消え去ったと思われる。

包括ROEも急失速、円安&SWF買いの追い風要因が消えた

3月期以外の銘柄も含めた、発表済み125社の過去1年間の包括利益ベースのROEは、8.40%となった(自社株買いと増資の影響は無視した概算値、直近の株主資本と過去1年間の配当額の合計を、1年前の株主資本で割って計算)。3月期決算が完了した5月末時点では、全銘柄で16.48%だった。

株高と円安による保有資産評価額の増加が上乗せされていたため、K点越えの非常に高い数値となっていたが、追い風がなくなるとヒルサイズぎりぎりの数値で着地してしまう。減額修正を伴うようだと飛形点も大幅ダウンで、株価は大幅下落を免れない。

今にして思えば、アベノミクス初期の2年半は、急激な円安株高による一株利益・純資産の急増に加え、前述のSWFが猛烈な勢いで株を買ってくれたから株価が急騰したのである。今はそうした追い風要因がなくなっているのだから、株価が冴えないのは仕方ない。

銀行株は割安で低リスク、マイナス金利で売りは筋違い

しかしリスクを割り引いた後でも、来期も同程度以上の純利益が確保できるというならば、PBR1.17倍、予想PER14倍という株価は十分割安と言える。PER12倍程度で利益が強含みを維持できる企業は、押し目買いで臨んでよいだろう。

現時点で筆者が最も魅力を感じているのは銀行株である。

欧米銀行、特に欧州の場合、日本よりリスク案件向け融資の比率が高いから、環境が悪化した場合の株価下落がきつくなるのは自然だ。ドイツ銀行の赤字決算を見よ。だから株が売られるのは理解できるが、米国の優良銀行(JPモルガンとかウェルズファーゴなど)などの場合、リスクは小さい。日本の銀行の場合、一段とリスクは小さい。成長性が低いのは弱点だが、実害が小さい日銀のマイナス金利導入で大きく売られたのは筋違いである。

例えば三菱UFJの場合、株価552円、一株利益74円、純資産1107円、配当18円である。仮に今後増加する準備預金3兆円に0.1%のマイナス金利が課せられても税引き前30億円の赤字要因で、純利益1兆円の同社にとって蚊に刺されたほどの影響しかない。

みずほ銀行に至っては、株価191円、一株益25.3円、純資産331円、配当8円である。これに比べると地銀の筆頭である横浜銀は594円、一株益66円、800円、配当は10円で割安感はやや見劣りするが、安定感はある。配当重視で行くか、純資産倍率で行くかはお好み次第だが、上位の銀行株をPER8倍以下で買えるチャンスはそう多くないと思う。

デフォルトの都度の嫌気売りは我慢我慢

ただし、先にも書いたように今年はデフォルトが多い年になりそうで、その都度、銀行株には嫌気売りに見舞われるだろう。慎重派の投資家ならそういう場面が来るまで、じっと我慢を続けるのがよい。2~3年持てば少なくとも銀行預金に預けておくよりははるかにましなリターンが得られることだろう。

(了)

*木村喜由のマーケット通信は今後、有料記事で掲載予定です。サンプルとして無料公開しています。

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