【初・中級者向き】映画「パッセンジャー」と森友とFBI

 

2017・3・26

主演のジェニファー・ローレンスがお好みなので観た。予告編で「乗客5000人、目的地まで120年、90年も早く、二人だけが目覚めた」というのが面白そうだったし。ただ、この予告は違っている。エンジニアのジムが装置の不具合で90年早く目覚め、孤独の1年後に一目ぼれした美人作家のオーロラを起こしたのだ。

巨大な宇宙船で若い美人と二人きり、なんて男の夢だ。この映画のジムは労働者階級、女性の方は大卒の作家で裕福。まるで「タイタニック」だが、あれと同じく見せ場は多く、無重力下のプールなどビジュアルも新鮮で退屈させない趣向もたっぷり。

破られるはずのない宇宙船の外壁がいん石で穴が開き、二人で必死になって修理するシーンがある。船外に放出されたジムをオーロラが救う。そこがヤマ場になっている。

トランプ政権の機能不全

米国の方はトランプ政権に第二のウォーターゲートと目される疑惑が出たし、日本の方は森友だ。4年は固いはずの長期政権に不安が出た。

まったく、3月21日のNYのダウの急落はまいった。FBIコミー長官の下院情報委員会での議会証言がその前日にあり、ここで爆弾発言が二つもあった。我が国のマスコミは殆ど報道されなかったが、第一が、トランプがツイッターで批難していたオバマによる盗聴は全くなかったーと大統領のカオをツブした。

そして第二が大統領側近の対露接近が大統領選挙の運動最中から行われ、結果に影響を与えた可能性を捜査している。コミー長官は議員の質問に答え「今後重大な事態が明らかになろう」と述べた。翌日この発言を嫌気して238ドルもダウ平均が下げている。トランプ政権支持率は37%に下落し、不支持率は59%。

そうでなくともトランプ政権の動きが遅くなかなか選挙公約通りに物事が進行していない。通常1月下旬の一般教書も発表は2月28日になったし、予算教書も2月上旬の通例が3月16日になった。しかも予算全体の三分の一に当たる分だけで全体の予算発表は5月になる。

2月9日にトランプ大統領は薬品業界首脳との夕食会で「2,3週間のうちびっくりするような税制案が発表される」と述べたが、現実には3月24日現在でも発表されていない。このほか機能不全の証拠はヤマほどある。

NYダウは下げへ

私のワシントンの情報源は「トランプの選挙公約は口から出まかせの思いつきなので、具体的な政策のカタチになかなかならない」。だからオバマケアの代替案も共和党議会の41%しか賛成していない。今回取り下げたが仕方あるまい。

NYタイムスはこの3週間連日7ページものトランプ批判の特集記事を掲載しており、共和党議員の中にも「このままで行ったら明年の中間選挙で大敗北必至。今のうちにペンス副大統領がホワイトハウスを仕切るような体制にすべき」との声があるという。

NYダウは3月1日には一般教書を好感して275ドル高の2万1000ドル台を付けたが、当面これが歴史的高値で、基調は下げになりそう。

非伝統的出口戦略

一方、安倍政権の方。籠池森友学園理事長の証言がウソで固められていることは明らかだ。利用できるものなら天皇陛下ご夫妻や安倍首相の名も宣伝や募金の材料にし、三通りの工事契約書を出す。安倍夫人の100万円寄付もあり得ない。

重大なのは財務省理財局の隠ぺい工作だろう。内閣支持率は下落したといえ高いし、民進党の支持はメチャメチャに低い。ただ、まだ先週述べた「高転び」のリスクは残る。2月9日に「絡んでいるなら衆議院議員を辞める」と言ってしまっている

私の描くシナリオは次の通り。

秋口に総選挙をやるときに、

  1. 消費税を無期延期にする
  2. おそらくキムチ・ショック(韓半島からの難民)への出費
  3. 防衛費増加
  4. 国土強靭化計画などの支出増(何兆円にものぼる)

――などの資金需要を賄うためには「伝統的出口戦略」ではムリ。伝統的出口戦略とは、①財政黒字で債務返済、②デフレ脱却で実質債務を削減、③日銀が保有する国債を金融機関に売却、というもの。とてもムリなことは説明不要だろう。

そこで「非伝統的出口戦略」になる。

  1. 政府と日銀が既存の国債の一部を償却(保有国債を無利子永久債に転換)
  2. 財政スタンスにインフレ率に応じた弾力的対応
  3. 規律ある枠組みが不可欠(みずほ総研リサーチTODAY1月27日付)

つまり疑似ヘリコプターマネーが必要になる。

チーフエコノミスト高田創さんは「年後半に予定される衆院解散総選挙に伴う選挙対策になる可能性も」としている。

では、この疑似ヘリマネをしたらどうなるのか。結論からすると日本経済は一挙に元気になり、株価は2,3年でものすごく上がる。倍は固い。このあたりは稿を改めて。

映画のセリフから。オーロラが言う。

「会うはずのなかった人と会い、人生が始まったと感じているの。不運なはずなのに幸せよ」。

この国は、思い切った政策をとれば、必ず幸せになります。

映画「パッセンジャー」と森友とFBI(第851回)

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

ジャイコミ有料記事テキスト画像

 

関連記事

今井澈のシネマノミクス

映画「シン・ウルトラマン」とロシア戦費の枯渇。したたかな日本経済。日本株の6月末の買い場を狙う作戦。(第1120回)

興行収入が素晴らしいと聞いた。かつて、私の息子たちに「ウルトラマン」の主題歌を歌ってやった記憶から

記事を読む

ファンケル株主総会に行ってきました。

2017年6月17日(土)13時、横浜アリーナで「ファンケル株主総会」が開催。 土曜日の午後だった

記事を読む

日本人が知らない中国投資の見極め方【1】
アリババの米国上場で注目
中国のインターネット企業

アナリスト 周 愛蓮 電子商取引(eコマース)で中国最大手のアリババ・グループ(阿里巴巴集団)が早

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

トルストイ「戦争と平和」とポスト・コロナ新時代とジョージ・ソロス氏の新しい提案 2020・4・26 (第1009回

トルストイが36歳から40歳まで書きつづけた大長編。サマセット・モームは 「あらゆる小説の中でもっ

記事を読む

不正会計に対する監査機能不全
これは東芝だけの問題か

日本個人投資家協会副理事長 岡部陽二 2001年に発覚したエンロンの破綻は米国の企業統治史上最大の

記事を読む

PAGE TOP ↑