当面幅広いレンジで上下動、吹き値はひとまず売り
木村喜由のマーケットインサイト

前回号以降、株式市場は一時急落し、9月29日にTOPIXは1371.44、日経225は1万6901円まで下げる場面があったが、その後は続騰して10月10日(金)にそれぞれ1515.13、18438円で高値引けした。
TOPIXは安値から10日で10.5%の急反発である。

米国の利上げスタンスが決まらないので市場が右往左往

この間、ドル円相場は1㌦=120円を中心に上下50銭の非常に狭いレンジで推移しており、米国の利上げ観測が後退したものの、日米の金融政策の相対的バランスはほとんど変わらなかったと解釈することができる。

わかりやすく言えば、米国の雇用・景気は利上げしてもよい環境になっている(ほぼ完全雇用で、賃金上昇率も安定的に前年比2%以上)が、中国を核として途上国景気への不安(中国に連動する東南アジアと韓国、ブラジル、ロシアの失速懸念)があるためFRBはしばらく様子見を決め込んでおり、それを横目に日銀も金融政策を決めていくという姿勢が鮮明である。

9月下旬の急落とその後の反発は日本の動きが突出して大きく、株式先物を大きく動かして収益を得ようとする大手ヘッジファンドによって意図的な株価操作が行われている疑いがある。9月29~30日の安値圏ではオプションに異常なほど出来高が増加していたからだ。
投機筋はここで高値のプットを売り安値のコールを大量に買った。これは10月9日のSQで高値に持って行き、利益を極大化させる狙いがあった。

ここ1カ月でファンダメンタルズは悪化している。
鉱工業生産、機械受注、景気ウォッチャー調査などは軒並み市場予想を下回り、米国でもISM指数が悪化、雇用の伸びが減速、中国の生産活動や景況感もここ数年で最悪のレベルとなっている。
筆者は特に米国で悪い指標が発表された10月1日以降、株価が一段と上昇を加速したことが、不自然と見ている。

個別に見ると、この時期原油を先頭にCRB商品先物指数が急反発、下げを主導していた機械、資源関連、自動車、電機などの景気敏感銘柄が急速に切り返し、それまで高値を追っていた食品、薬品、家庭用品、通信、小売などにまとまった利益確定売りが出ていた。
主に為替と株式先物を組んで売買するイベントドリブン型と、セクター別に売りと買いを組み合わせるロング・ショート型のヘッジファンドが双方とも華々しく動いたということである。

10月末の日銀追加緩和期待はナンセンス

株価は上がったが米国の一株利益予想は低下しており、利上げ先送りを拡大解釈して株価を持ち上げた感が強い。
原油価格の反発は産油国のコメントに過剰反応したもので、中国の減速、影の金融(シャドーバンキング)に対する不安が消えたと見るのは時期尚早である。

日本株の上げにつながったのは10月末の金融政策決定会合で日銀が追加緩和に動くとみるエコノミストが増えていること。
過去2回のバズーカ発射の際には大きく円安株高に振れ、その方向に賭けていた投資家は大儲けした。夢よもう一度と、追加緩和に期待する機関投資家は多く、こういう連中から注文を得るためにはエコノミストも調子を合わせる必要があるのだ。

10月30日の日銀政策決定会合が注目されているが・・・

10月30日の日銀政策決定会合が注目されているが・・・

だが、現状では実現の可能性はほとんどないと見ている。

黒田総裁の方針は、やるとなったら一気にドカンとやるということだが、現状はそこまで事態が悪化しているわけではない。日銀短観の業況判断DIでは大企業製造業など一部に若干の低下が見られたものの、従業員数で圧倒的に勝る非製造業全般は前回より改善しており、株価や為替の水準も緊急措置を要求しているレベルになっていない。

最も重要なことは、日銀が現在行っている金融緩和措置は、政策金利の変更などとは異なり、毎月追加的に国債や株式ETFを買い増しし続けるというものであり、その累積効果は日を追って拡大するはずのものである。
つまり毎月「追加的に」緩和措置が取られているので、それをペースアップさせるためにはきわめて強力な理由が必要となるはずだ。少なくとも現状ではそのような差し迫った要因はない。

これから9月中間決算発表が本格化するが、企業が下期の見通しにどのような変更を与えてくるか、十分注目する必要がある。
製造業はここ3カ月で減速傾向がはっきりしてきており、設備投資も勢いを失いつつある。一方インバウンド消費や原油価格低追い風を受けて、非製造業は順調な模様である。

株価が下がったこともあって、株式のバリュエーションは割安感が強まっている。したがってTOPIXで1400台前半辺りでは押し目買いに分がある。しかし、中国の景気・金融面の不安材料がぶり返す可能性、米国が利上げに向かう公算が強まった場合など、株価を押し上げる要因が再び台頭する可能性も小さくなく、積極的に上値を買い上がる流れができるとは思えない。

TOPIXで1400~1550を基本的なレンジとして、押し目買い吹き値売りでしばらく時間を過ごすのが穏当な対応だろう。ただ、いずれ株価は上昇基調に戻るので、下がったところではPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)で割安感のある銘柄を拾うようお勧めする。(了)

日本個人投資家協会 理事 木村 喜由

マーケットインサイト<2015年10月号>

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