映画「慕情」と時限爆弾化した香港問題とNYダウの行方、 そして日本株 (第1017回)

映画「慕情」と時限爆弾化した香港問題とNYダウの行方、

そして日本株 2020・6・21 (第1017回)

  1955年のこの作品は、当時まだ珍しかったシネマスコープで撮った香港の観光映画である。何といってもナット・キング・コールが歌った主題歌(Love Is a Many―Splendo r ed Thing)は映画音楽史上最高の作品と言われている。

 主演はジェニファー・ジョーンズとウィリアム・ホールデン。ヒロインは英中の混血の女医。米国の特派員との悲恋を描いている。

 たしか1995年だったと思うが、亡き母と、まだ学生だった息子三人を連れて香港に行ったが、二人が行った丘に行ったかどうか、記憶にない。まだ中国からの圧力なんて誰もが夢にも思わなかった時代。買い物をヤマのようにしたことだけを覚えている。

 映画のほうに話を戻そう。このブログに映画のセリフを使うアイデアを思い付いたのは、実はこの「慕情」のセリフからである。当時のメモを見ると「記者と特派員とどう違うの」という問いに「週100ドルの違い」とある。しゃれたやり取りが暗闇の中でメモを取らせたのだ。当時はまだ毎日新聞社の「エコノミスト」誌への連載はしてなかったが、そのスタイルは実はアタマの中にこのころ完成していた。

 映画では二人の恋の後中国大陸は国共内戦のあと共産党政権が成立、ほどなく朝鮮戦争が始まり、エリオット(ウイリアム・ホールデン)は派遣され、そこで戦死する。

 いまは、弾丸が飛び交うホット・ウォーはない時代だが、時代が激変していることだけは同じだ。

 最近、嶋中雄二さん主催のセミナーで、大和総研の斎藤尚登主任研究員のお話を伺うチャンスがあった。広く中国経済についての分析が主題だったが、最後に「香港はどうなるか」と題して、現状見通しを話された。

 私にとって、目新しかったのは「本年9月に予定されている香港立法議会選挙で、中国側が民主派議員の立候補出馬できないように逮捕して、おそらく猛烈な反対デモが発生するだろう」という発言だった。

 また、米国での「香港人権・民主主義法」が成立。米国政府が毎年一国二制度が機能しているかどうかを検証。斎藤さんは「香港の関税・ビザなどの優遇措置の取り消しも」としている。私は十分ありうると感じた。

 つまり、習体制のゴリ押しは、香港の国際金融センターとしての役割を低下させる。金融市場に対する規制がなく、為替管理が課されていない。また資金の移動に制約がない。加えて香港ドルが米ドルにペッグされているから、為替リスクが少ない。中国側にとって香港のメリットが少なくなることは、リチャード・クーさんも言う通りで「習政権による対応のまずさの典型例」に違いない。

 株式市場にカンケイないじゃないか、と言われそうだ。しかし、これでグローバルなサプライチェーンに依存している米系巨大企業が広義の米国陣営の中に第一次、第二次下請けを作らなければならない。

 例で示すと、5Gの基地局。放っておけば、中国ファーウエイにとられてしまう。しかし米中の覇権闘争はハイテク戦争。失われかねない巨大市場を獲得できることのプラス・マイナスは大きい。(アナリストの腕のみせどころと思うが、誰かやってくれませんか)

また、トランプ大統領のことだから、対中への示威を含めて(名目は恐らく「北」の核だろうが)、原子力空母を三隻あるいはそれ以上アジア近海に派遣するかもしれない。これで戦時大統領としての人気を狙う。きわどいがこの人ならやりかねない、

 もちろん、かつて中国に盗まれた空母へのドローン攻撃への対処が出来上がったことが大きい。

今回は、ここ数回の私の予測通りにあまりうまく行きすぎたので、実は書くことが少ない。

 しかし、米国民の資産の豊かさを見てこれならNYダウの前途は相当上のほうと感じた。それはスフィンクス・インベストメントの別府浩一郎さんの分析だ。

「ストック・フロー・レシオ」。実はわたくしは初めて聞いたのだが、家計部門の純資産を個人可処分所得で割った数字。米国資産価格のバロメーター、だそうな。

 これが別府さんによると、3月末の水準は「コロナ危機は存在しなかった、といってよいほどの位置にある」。

 確かに2020年3月末の数字は、623・2%、前年同期比の647・8%と大差ない。米国のコロナ不況対策が成功している証拠だし、投資家の資金力が高いことを立証している。

 ここでダウ平均の動きをたどってみよう。2月12日に史上最高値の2万9568ドルを受けた後、コロナショックで1万8213ドルまで下げた。金額にして1623ドル、率にして38%。しかしその後の動きはかなり強い。

 やはり経済活動は正常化、コロナワクチンの開発が順調に進行していることが好感されていた。マイナス材料であるコロナ第二波は日によるが、売りの理由にされても下げ幅は少ない。

 やはり何といっても、FRBの月間1200億ドルの債券市場からの買いが効いている。それ位、高値不安から待機資金が5月末に4兆8000億ドルと空前の水準だった。これが材料に応じて押し目を買っているのが下支え。ダウよりもナスダックのほうの上げ幅が多いのが一つの証明だろう。

 日本株?いずれ2万4000円のカベに挑戦し、その天井を抜く。時間の問題でしょう。買うタイミングはいちよし証券の高橋幸洋さんによると6月29日以降。上昇ピッチが速まる、と。25日と200日の移動平均がミニゴールデンクロスを達成し先高を暗示しているので、強気、

 映画のセリフから。女医が言う「あなたは強い人ね。」「君も強い女性だよ」「あなたは珍しいわ。優しさより強いものはないわ」。

 優しさだけでは、独裁体制は維持できない。例えば「北」。中ソと国境を断絶したので、経済は苦境。おそらくコロナ感染の流行もあり、どこかに敵を見つけて戦う姿勢を見せなければならない。」米国はオソレ多いし、そこで韓国。わざわざ連絡事務所を爆破してみせたのは、そのためだろう。

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