日本人が知らない中国投資の見極め方【10】
爆騰の中国株は後半戦へ
調整は必至、心臓のお弱い方はご遠慮を

公開日: : 最終更新日:2015/06/16 マーケットEye ,

アナリスト 周 愛蓮

「チャイナ・スピード」の上昇、中休みが必要

2014年半ば頃から反発を始めた中国株式市場の強気ぶりは、投資家を驚かせている。代表的指数である上海総合指数はそれからの約1年で2000ポイントから、足元の15年6月第2週は5100ポイントを超え、2.5倍強になった。まさに「チャイナ・スピード」としか言い表れない上昇である。

過熱している株式市場に対して、各方面から懸念の声が上がり、中国の証券監督当局が投資家に異例のリスク喚起を行ったため、市場関係者から相場の調整を予想する声が高まった。証券当局は新規上場(IPO)の認可を増やし、株式の供給を増えることによる需給関係の調整をしている。そのような背景で相場は5月末にいったん急落したが、調整が続かず、上海総合指数は6月12日に再び戻り高値を更新した。

年初来の上昇率は50%近くに達しており、15年予想PERは20倍に高まっていることから、スピード調整もしくは日柄調整が避けられないと思われる。6月の株価推移に目を離せない。

金融緩和の余地あるが緩和のペースが落ちる可能性

14年下期からの株価上昇は、はじめは中国株のバリュエーションの見直し(水準訂正)と金融緩和期待によるものであったとすれば、昨年11月に中国人民銀行(中国中銀)は金融緩和に政策転換してからの株価上昇は、いわゆる金融相場だったといえる。景気が鈍化し、企業業績も低迷した半面、中国中銀が利下げと預金準備率の引き下げを交互に行ったことは、株式市場上昇の原動力となったといえる。

インフレが1%台に低下しているので、実質金利水準が依然高い。預金準備率も18.5%と異常な高水準にあるため、金融緩和の余地が残っているが、ペースが落ちるだろう。

預金や「理財商品」から株式への資金移動がまた続く

14年11月以降に行われた3回の利下げにより、中国の預金基準金利が2.25%に低下し、銀行預金から株式投資に資金を移転させる動きが起きている。

また、これまでに5~10%のリターンで資金を吸収してきた「理財商品」は、政策の制限により利回りが低下しただけでなく、一部の理財商品がデフォルトしたため、その魅力が徐々薄れてきた。償還された資金が株式市場に流入しているようで、このトレンドはまた続きそうだ。

さらに、一部富裕層は、巨額の資金を不動産投資から株式投資に廻しているともいわれている。政府はここ数年間にわたって不動産価格の高騰を抑える措置を講じてきた。その効果が表れたのはここ2年ほど前。大都市圏での価格下落が小幅にとどまっているが、一部需給関係の悪い中小都市ではかなりの価格下落も見られる。政府は不動産価格の再びの上昇を望んでおらず、不動産投資の魅力が低下している。

IPOと増資が増える一方、大株主は売却

中国の株式新規上場(IPO)は認可制。新規上場企業が証券監督管理委員会に申請し、委員会の上場審査部が書類審査して上場の許認可をする。相場が低迷していた時期には、一時IPOをストップしたが、足元はIPOの許可件数を増やしている。株式の供給を増やして過熱している市場を冷やすためだ。これまでに月12社の新規上場は、5月より24社に増えた。6月には4大証券の「国泰君安」という超大型企業を含め24社のIPOが間もなく募集を開始する。ピーク時には6兆元前後の資金がロックされると推参される。

IPOよりもネガティブ材料となるのは、上場企業の大株主と経営者層の持ち分減らし。5月から6月10日までに、863社の大株主あるいは経営者が合計2112億元(役4.2兆円)の株式を売却した。株価が急騰したため、利益確定に動いたとみられる。大株主の現金化行為が増えれば、マーケット全体のセンチメントを悪化させるだろう。

信用取引による資金供給は既に限界

昨年から信用取引が急増している。足元は信用買いと信用売りの合計は2.2兆元を記録、時価総額の3%相当になった。証券業の規定では、証券会社が提供できる信用の限度額は純資本の4倍まで。現在信用を提供できる証券会社の純資本は8500億元、理論上は最大で3.4兆元まで信用取引が拡大できるが、信用業務はすべてではないので、2兆元超程度は実質的に限度いっぱいとみられる。

株価は相当高いところまでに上がってきたことを合わせて考えると、これからは信用取引による流動性の供給が限られよう。

上昇余地はあるが、ボラティリティは拡大か

下期を展望すると、金融緩和の効果が下期に出始めるだろうから、中国の景気は第3四半期ごろに若干の上向きが確認できよう。政府は国有企業の改革を推進する決心をみせており、このテーマに関する物色が株価をけん引すると考えられる。金融緩和の期待も根強い。引き続き政策期待が資金を引き寄せるだろう。

一方、急ピッチに上昇してきただけに、これまでのようなエキサイティングな相場を期待する人間が皆無に等しい。大半の投資家は神経質になってきている。上下動の激しい相場が待ち構えているかもしれない。

 

関連記事

今井澈のシネマノミクス

「しんがり 山一證券最後の12人」とやっと越したカベ

  今週は「ドローン・オブ・ウォー」を観るつもりだったが夜9時半上映で終了11時半。

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

【初・中級者向き】映画「北北西に進路をとれ」とトランプ演説

  2017・3・5 アカデミー賞が決まった。私は作品賞、監督賞を一生

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

私の「NY株売り」説のその後、また日本が永らく望んでいた好循環の開始

私の「NY株売り」説のその後、また日本が永らく望んでいた好循環の開始 2024・3・31(第

記事を読む

木村喜由のマーケット通信
決算発表ラッシュ突入、株主還元策も株価への影響は微妙
東芝が握るエネルギーの本命

 日本個人投資家協会 理事 木村 喜由 本日(4月27日)から決算発表ラッシュとなるが、大勢は昨報

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「国家が破産する日」と反日文在寅政権の行く末(第987回)

まことによくできた韓国製政治経済サスペンス。1997年12月3日にIMF とアジア開発銀行か

記事を読む

PAGE TOP ↑