映画「記憶にございません!」と近く発生する株価急落の材料

三谷幸喜監督の最新作で、大ヒット中。主人公は悪徳政治家の主将黒田
 (中井貴一)。あまりの非道で支持率2・0%だが、なお地位にしがみついて
いる。ついに投石され、その一つが頭に命中、全く記憶を失ってしまう。この
ことはごく少数のものしか知らず、政治のド素人が首相としての毎日を送る。
 一方、愛想を尽かせた夫人は夫の元から逃げ出し、欧州に行く準備を進め、
まだ首相のハンサムな秘書(ディーン・フジオカ)ともデキている。首相の方
は野党第三党の女性党首(吉田羊)とクサい仲。お色気シーンはないが、この色
がらみが映画の終局につながってくる。
 石ころひとつで、昔はともかく近い過去をすべての記憶を喪失した主人公と
同じに、株式市場ではNYも東京も、このまま戻り高値に進めばいいが、寸前
でUターンすればやはりドカンになる。ほんの少しの材料で。
 もちろん、私はそのドカンの後はカンカンの強気。詳しくは後述いたします

では、そうしたテールリスクはあるが、もちろん!すぐに私の頭の中をよぎっ
たリスクを列挙してみよう。
1 NY市場での最近の異変。まず逆イールド、次にレポ金利の急騰とこれに
伴うコマーシャルペーパ市場の発行量急減などなど。すべてリーマン前に
もあった現象。誰もが考えるのは、FRBが金利引き下げという弾ガンを
打ち尽くした後の状況だ。やはり財政出動、財源は超長期債になることも
目に見えている。
2 EUでもECB新総裁のクリステイーヌ・ラガルド女史が「越権行為であ
っても危機脱出に必要ならば(これまでもそうだが)あらゆる政策を発動
する」と述べた。中心のドイツ経済は4~6月期GDPがマイナス成長しか
も7~9月期もマイナスと予測されている。まさに危機が切迫しているとい
う認識だ。恐らくドイツ経済の危機にプラスして、ドイツ銀行の処理も入
るかも。
3 中国では逆に、危機への認識が誤っていることが問題だろう。「持久戦
」(毛沢東著)を大々的に配布したのがその証拠だ。トランプ旋風が一時
的と考えるのが誤りなのは誰の目にも明らかなのに。ペンス演説にある通
り、中国の国家情報法に乗って、たとえばファーウエィは情報を中国政府
に提供しなければならない。この法律を改正する気がなければ、米中覇権
戦争は止まない。
4 新興国にも問題が多い。ドル建ての借り入れが多いのが共通しており、ド
ル価値の上昇は負担が重い。特に輸出が急減している韓国(1月から9月中
旬までの前年同期比マイナス22%)は、すでに外貨準備に不安がある。

また香港は10月1日の中国の建国70周年を過ぎると、デモ制裁が激しく行わ
れ、第二の天安門事件の可能性がある。もちろん人命が失われると、香港
への金融制裁が行われる。中国の金融取引の6~7割は香港経由だから、中
国の経済破綻につながる。
5 中東でも、先日のドローン攻撃が再現されるリスク、またサウジ皇太子の
失脚などドカンの材料は十分にある。原油価格の上昇が発生すれば打撃が
大きい。
さて、これだけドカンの材料の候補を挙げたが、みながみな、中期的。来週と
か来月という時点の予想とは結び付かない。
 下げ相場については、私が一目も二目も置いているテクニカルアナリスト伊
東秀広さんは「急変が近い」と警告を始めた。NYダウも目先平均も波動で見
て10月5日の週から下がるという内容。
 しばしばこのブログに登場していただいている箱田啓一さんは、最新のレポ
ートで「10月3、4日がピークで、10月24日が底値(買い場)になる」と明確
に予測しておられる。
 
その後は?もう一度揺り戻しというかダメ押しはあり得るが、私は積極財政政
策採用を条件に、3万円への挑戦が始まると観ています。私は基本的にはカン
カンの強気です。
 映画の終盤、政敵が記憶喪失の事実を嗅ぎつけ、閣僚の写真を見せて、姓名
と役職を言えと迫る。意外なことに主人公はピタリと回答。秘書が後で聞くと
、実は記憶が戻っていた。
 私もこれと同じ。カンカンの強気は変わらないが、10月の下げを前提として
いるので、この下げが完了したら、主人公じゃないけど、元の強気の私に戻り
ます。どうぞご心配なく。
 ただひとつの心配はリチャード・クーさんが言う
。「on-again off-again」つまりちょっと1年位、財投で
予算増加をしてすぐやめてしまうのが一番ダメ。
麻生副首相のフトコロ刀として知られる或る元高官に、この不安を聞いたら
「あの方は元々積極財政論者です」との返事だった。まあ老婆心はやめておこ
うかな。

関連記事

投資の羅針盤
年初来の市場乱高下は経済危機の前兆か

日本個人投資家協会副理事長 岡部陽二 年初早々から大波乱に見舞われた株式市場は、1月22日に至って

記事を読む

基本の話by前田昌孝(第32回、含み益課税のなぜ)

株式相場の上昇局面が続くと、譲渡益の一部を税収として取り込みたくなるのか、格差是正を進めたくなるの

記事を読む

“投資適格”に近づく日本株
経営者と資本政策が成熟
JAIIセミナーレポート

ジャイコミ編集部 1月24日に開かれた日本個人投資家協会新春セミナー「2015年世界を読む」のレポ

記事を読む

木村喜由のマーケット通信
日経225来期予想PERはインデックスベースで19.38倍と割高も、割安銘柄はまだある

 日本個人投資家協会 理事 木村 喜由 先週金曜日(3月13日)に会社四季報、日経会社情報が発行さ

記事を読む

基本の話by前田昌孝(第24回、過半が「平均」に届かない)

2023年の東京株式相場は日経平均株価が28・2%上昇して、幕を閉じました。しかし、個別銘柄の年間

記事を読む

PAGE TOP ↑