映画「素晴らしき哉、人生!」と金融市場でのリーマンを思わせる異変

私は先週、岐阜の大手会計事務所での講演会に招かれ、その前夜に夫婦で長良川の鵜飼いを見物させていただいた。11人の招待客の中に岐阜県の有力金融機関のトップが「私はイマイ先生のブログの愛読者で、次の映画にこれを使ってください」と、この作品のDVDをプレゼントしていただいた。

 幸い、というか、このブログ「まだまだ続くお愉しみ」にこの「素晴らしき哉、人生!」は取り上げたことがない。有難くDVDを観て、この原稿を書いている。

 フランク・キャプラ監督、ジェームス・スチュアート主演のこの名作は、毎年クリスマスにTVで放映される。いわばご家庭全員が一緒に見る作品である。

 時はクリスマス・イブ。主人公は保険金を工面するため、自殺を図る。これを止めたのが天使見習いで、主人公の周囲の祈りが天国まで届き、本物の天使になるために工夫を凝らす。

 まず主人公の人生を振り返るが、たしかに不運続き。しかも叔父が8000ドルを紛失、小さな町で金融組合を経営している主人公は刑務所行きになりそうな現実。ただ町の人々に、取り付け騒ぎの時自腹を切って資金を供給、救った経験があった。

「生まれなければよかった」という主人公に「それではお前の望み通り」と、ひどく荒れた悲惨な街の人々を見せる。主人公はもう一度生きなおすことを選ぶ。

 妻の呼びかけで街の人々や友人が寄付して8000ドルの穴を埋めてくれる。その寄付金が入った箱の中に一枚のメッセージ「友があるものは敗残者ではない」とあった。本物の天使に昇格した主人公の命の恩人が書いたもの。

 大不況で金融機関への信用が低下し、公的資金で救済したことはまだ記憶に新しい。これはベイルアウトと呼ばれるが、EU圏内ではベイルインとして、預金者や株主などが資金を補填するルールになっている。

 あと1年に迫った独メルケル首相が、処理を任されているドイツ銀行。コメルツとの合併も成立できず、仮にベィルインするとなれば、噂ではドイツのGDPの何倍かのデリバティブの損失をどう処理するのか。恐らく任期の最終段階でメルケル首相は何らかの決定するのだろう。株価の方は破産を織り込みかけているのだが、イザとなれば、リーマンどころの騒ぎではあるまい。

 恐ろしい話で申し訳ないが、実は9月16日以降、私が観るところ大異変が発生している。

 米国の銀行間の貸し借りを行う短期金融市場、つまりレポ市場の金利が急騰したのである。

 数字で示すと、19日の2%から三日連騰してなんと10%に、その後FRBが四日連続で資金供給したが、6%の高水準に止まっている。FRBのレポ市場への介入は実はリーマン危機の2008年以来のことだ。

 このレポ市場の金利上昇は、米国の銀行同士での相互の信用度が落ちていることを示す。

 また米国政府の国債発行が急増し、市場の資金不足が発生していることも示している。恐らくFRBは資金供給を継続せざるを得ないだろう。

 というのは、レポ金利の上昇はコマーシャルペーパー金利の上昇につながり、発行量が急減。市場では、今度は低格付け企業への融資「レバレッジド・ローン」からの資金引き上げが続いている。

 問題はレバレッジド・ローンに、借り手に甘い「コベナンツ・ライト」が、かつては一割だったのに現在は八割を占めていることだ。借り手の業績が悪化したときに即時返済を求める条項が甘い。

 これらはまだ、異変が起きた程度で軽く片付けられているが、私には大地震の前の地鳴りが聞こえる。FRBとECBは恐らく必死になって「予防は利下げ」や追加的量的緩和を続けるだろう。

 自国の通貨を切り下げにつながるこれらの金融政策は、もちろん信用不安の防止という大義名分はある。しかし同時に私のかねてから主張している過剰流動性の影響が発生。とくに日本は日銀の打つ手が限られている現在、「日本株売りと円買い」の投機が幅を利かせる危険がある。いや、可能性が大きい。やはり現在の株価上昇には限度があり、せいぜいあと日経市場で1500ポイントが精一杯だろう。

 映画のセリフから。「一人の人間の人生は、大勢の人生に影響を与えているんだよ」。これは天使が主人公に言ったセリフ。これで自分の人生の素晴らしさに気付き「もう一度人生生きなおしたい」と叫ぶ。その前に天使は主人公のいない人生を見せ、主人公の存在の重要性を示す。いま米国はトランプ再選のために金融政策を転換した。ECBも恐らく世界大不況とドイツ銀行のショックの予防のため金融緩和を実施しようとしている。さて、日銀はどうするか。

 私には強力な財政出動が必要だし、その財源としては、建設国債の超長期物の発行しかないと考える。早く、事態の深刻さを政府特に財務省が認識してほしい。そう心から願っている。

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