【初・中級者向き】映画「ムーンライト」と「北」とトランプとシリア

 

2012・4・10

先日のアカデミー賞で作品賞など三部門を獲得し秀作と評価されているが、私にはトントつまらない作品に見えた。黒人で麻薬の売人でしかもゲイというと私には共感を覚える部分がない。だから感動もない。

しかしアメリカ南部の黒人の貧困地区の生活はよく分かった。自宅で母親は売春し収入は麻薬に使ってしまう。周囲も似たような状況で、教育現場ではひどいイジメがはびこる。まともな人生を歩める可能性はまず、ない。

なるほど、人種差別をあえて行うトランプ政権が成立したわけだ。「白人」のみのアカデミー賞への批判に応えて、キャストもスタッフも全員黒人の「ムーンライト」が選ばれたのもこうした政権の姿勢への批判からにちがいない。

威嚇する「北」へ圧力

一つの動きが出れば必ずその反動が出るもの。最近韓国の大手新聞の朝鮮日報、中央日報、聯合ニュースが相次いで「韓国人がまだ自分の国の最高の危機に気が付いていない」と警鐘を鳴らし始めた。

当然だろう。首位を走っている共に民主党の文在寅大統領候補は、はっきり言って「北」の走狗で、金正恩としては自分が主導して連邦制の南北統一するには便利この上ない。

しかも「北」は米中首脳会談の直前の4月5日に中距離弾道ミサイルを発射して周辺諸国とくに「南」を威嚇している。

一方トランプ大統領は「北朝鮮は“人類の問題“で米中首脳会談の協議事項になる」とし「中国が「北」への圧力を強化しなければ独自で行動する準備ができている」と繰り返し述べている。

さらに首脳会談の最中にシリアに生化学兵器への報復としてミサイル59発を撃ち込んで見せた。金正恩への示威という効果もあるだろう。アサド政権のサリン攻撃のわずか三日後の空爆である。

では米中首脳会談での「北」への圧力は成功したのか。ワシントン発聯合ニュースは「議論は平行線をたどり調整は失敗」と報じた。

日経平均は売られ過ぎ

シリア空爆以前なら、「北」のテロ支援国再指定、対北サイバー戦強化、北と取引する第三国の企業・個人への制裁、同盟国へのミサイル防衛システム強化、ぐらいだったろう。しかし、事態は変わってしまった。何かの口実を金正恩が与えた途端、待ってましたとばかり、ミサイル攻撃が核関連基地に行われるに違いない。

私がウォール街のニュースソースは大手機関投資家の意見として、「韓国総合とサムソンの株価が新高値に近いし、在韓米軍に核戦闘能力を持たす案がNSCから提案されている。そう心配することはない」と話す。たしかにそうだが、韓国の国民のノー天気を考えると(日本の野党のセンセイ方もほとんど同じだが)私には気休めとしか聞こえない。韓国側の一種の気分と若い独裁者の狂気とは関係ないからだ。

ところで、この困った状況と株価だ。シリア攻撃のショックは一時的円高と株安。4月6日には26円円安の4か月ぶりの安値1万8597円まで下がった。この水準に株価収益率(PER)で13・6倍、昨年11月6日のトランプショックの1000円を超える大幅下げの時以来の低いPERで明らかに日経平均は下げすぎだ。

三菱UFJモルガンスタンレーの宮田正彦チーフテクニカルアナリストは、騰落レシオを使って、大幅な株高を予想している。

騰落レシオとは値上がりした銘柄数を値下がりした銘柄数で割った数字で25日間の移動平均を出して判断する。120%を超えると買われすぎで、70%を切ると売られすぎ。なお4月7日の騰落レシオは78・4%で売られすぎ水準に近い。

宮田さんは「超過熱」を示すとその後の大幅株高の前ぶれとなった、として次の例を挙げている。2012年12月19日と、2014年6月24日、ともに騰落レシオは164%というメチャ高い水準だった。史上最高は昨年12月15日の165・5%で70%台まで下げたのは昨年2月以来の低水準で「修正は相当進んだ」として4~6月2万1000円台以上に達する株高を予想している。私も賛成だ。ここから大幅な下落が万一あれば、買い場の提供以外の何ものでもない。私は強気だ。

 

映画のセリフから。主人公をかわいがっている地域ボスが言う。「自分の道は自分で決めろ。周りの人たちに決めさせるんじゃない。」本当にその通りだ。

 

映画「ムーンライト」と「北」とトランプとシリア(第853回)

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

ジャイコミ有料記事テキスト画像

 

関連記事

今井澈のシネマノミクス

怪談「牡丹燈籠」とギリチュウ・アゲイン

机の上が資料で山のようなので整理してみた。ギリシャの方は「デフォルト必至」「脱退の連鎖」という見出し

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「生きる LIVING」とトランプ再選の可能 性。米企業収益悪化が抱く日米「ドカ」。 (第1167回)

映画「生きる LIVING」とトランプ再選の可能性。米企業収益悪化が抱く日米「ドカ」。 20

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「慕情」と時限爆弾化した香港問題とNYダウの行方、 そして日本株 (第1017回)

映画「慕情」と時限爆弾化した香港問題とNYダウの行方、 そして日本株 2020・6・21 (

記事を読む

投資の羅針盤
スチュワードシップ・コードとコーポレート・ガバナンス・コードは投資を変えるのか

日本個人投資家協会 理事 岡部 陽二 政府は「日本再興戦略」の改定(いわゆる成長戦略)の金融分野に

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

ピーター・ドラッカー「見えざる革命」と米国労働省の新規制がもたらす日本株への巨大な需要(第1091回)

少し前にもこのテーマで書いたがその後さらに確信を深める情報を入手したので、再び述べることにした。

記事を読む

PAGE TOP ↑