【初・中級者向き】映画「七人の侍」とNYダウ新値更新の背景と「当り屋」「外れ屋」

公開日: : 最終更新日:2019/09/01 マーケットEye, 中級, 初級, 無料記事 ,

(970回)2019・7・7

ご存知黒澤明監督の歴史的な名作。七人の侍が集まる過程の面白さ、野武士軍団と農民たちと七人の侍の攻防戦など、何回観てもスリリングな展開にぐいぐいと引っ張られてゆく。

この映画の冒頭シーン。野武士の頭目の「去年、この村から米をかっさらったばかり。麦が実ったらまた来よう」という声を、隠れていた農民が聞く。

ここからお話が展開してゆくのだが、私は「麦の刈り入れ時」という野武士来襲の情報を得たことに注目したい。

この情報があったからこそ、七人の侍の助けを得て、野武士40騎を全滅させることができた。

映画ではたまたま一人の農民が野武士の話を聞くという形で情報を得たのだが、私の注目する株式市場はいろいろな情報が山盛りなので、その中からどれを選別するかが大切になる。

私なりの選別の仕方を申し上げよう。英語では情報はインフォメーションだが、これを日本語では「情報」とした。情け(なさけ)に報(むく)いるという訳語だが、実に良く出来ている。この人が言っているんだから的確だろう、とか、この人だからまあ誇張されているんだろうなあ、とか。

私のやり方はこうだ、年央になると、昨年末から今年初めの見通しで、誰が的中した「当り屋」か、誰が「外れ屋」か、ほぼはっきりする。

当り屋が次の打席でヒットを打つ確率の方が、外れ屋が急に適時打を打つ確率よりずっと高い。

1月6日号の日経ヴェリタスの相場アンケートを見るとNYダウの新高値更新を予想したアナリストは80人中14人、うち高値予想2万7000ドルが7人で、恐らく今後の上げを考えると、次の7人がNYダウの展開を的確に予想した「当り屋」だ。カッコ内はその人の所属企業と高値予想。

  • 壁谷洋和(大和証券3万ドル)②秋野光成(いちよしアセット2・88万ドル③庵原浩樹(フィリップ証券2・85万ドル)④佐々木融(JPモルガン銀⑤高島修(シティグループ証券2・85万ドル⑥広木隆(マネックス証券2・8万ドル⑦吉川雅幸(三井住友アセット2.78万ドル)

それでは日経平均の方はどうか。私にとって不可解なのは、日経ヴェリタスでナンバーワンのテクニカルアナリストが1万7000円割れを繰り返し主張してきたことだ。「外れ屋」の代表とわたくしは考えるのだが、日本のマスコミも機関投資家の方々も、プラン・ドゥ・チェックの3番目はやらないから評価が高いのだろう。私にはわからない世界だ。

これじゃあ、この方は私が注目している6月に発生した投資の世界の大変化も、わかっていないんじゃあないかな。

エラそうに何を言っているんだといわれそうだ。しかしECBに始まってFRBパウエル議長の金融緩和方針の表明以降、新しい過剰流動性相場が世界的に開始された。この事実認識がまだ乏しいように思う。

ちょっと考えれば、ごくごく当たり前の発想だ。米中新冷戦による関税戦争は確実に当事国両国に始まって、世界的な成長率の引き下げにつながる。

この新冷戦の開始で、グローバルな展開をしてきた企業が、まず、中国から東南アジアなどへのサプライチェーンの転換を開始している。

この事実を見たら、各国の中央銀行首脳は、この転換期のうちに金融緩和をしておかなければ、自分の国は大変な不況になってしまうと考えるに違いない。

自国が金融緩和しておかなければ通貨高になるし、グローバルな市場が成長率低下に見舞われること確実だからだ。英国や豪州の利下げはこの発想からだろう。

だからこそまずNYダウ平均は新高値を、三度目の正直で突破した。7月30日、31日のFOMCで利下げをするだろうが、すでに年内2~3回分の利下げは織り込まれているので大きなインパクトはないだろう。

それよりも私は株高と米国債利回りの低下(債券価格は上昇)、それに金やビットコインなどの価格上昇が併存していることこそ、過剰流動性相場のスタートの証拠と観る。

問題は日銀だろう。すでに目立たないように年間80兆から30兆にマネーの供給を削減していたのが問題になろう。まだとても足りない。大幅な増額が要請されそうだ。

海外のヘッジファンドは、「日銀と政府が政策アコードを結んで建設国債を大量発行する可能性」を信じる向きが結構多い。またETFの1日700億円を超える買いも6月は3日しかなかったが、これを増やすと見込んでいる。

さて、こうした状況を踏まえて、数少ないテクニカルアナリストの「当り屋」宮田直彦三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフテクニカルアナリストの予想をご紹介しておこう。これには私も賛成だ。

  • NYダウ 2018年10月高値(2万6951ドル)から12月安値(2万1712ドル)までの下げ倍の倍返しの3万2000ドルを目指す展開
  • 日経平均 2018年12月安値1万8948円)から「サード・オブ・サード」という長期強気相場が展開中。そのターゲットは2万3703円から2万5813円。ごく短期的は4月高値の2万2362円。

宮田さんの指摘する強気シグナルは次の通りだ。①日経平均の新値三本足が陽転②日経平均・TOPIXの日足が共に一目均衡表の「雲」を上抜けた③日経平均週足が「雲」の上限(2万1698円)を上回った。(なるほど!)

映画の印象的なシーンは山ほどあるが、宮口精二が演じた久蔵は敵の火縄銃に撃たれて倒れる瞬間、銃を持つ野武士の頭目に届かないものの。自分の刀を投げつけて死ぬ。

私も今年8月で84。そろそろ「死」を考えなくてはならない年齢になってしまった。久蔵のように最後まで闘いしかも刀を投げつけて闘志を示して死ぬ。こうありたいなあと、心から思います。

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