【初・中級者向き】映画「崖の上のポニョ」と債券バブルの崩壊
(第975回)2019・8・11
ご存じの宮崎駿氏の原作・脚本・監督の長編アニメの秀作。2008年公開当時、まだ幼かった孫娘が「ポーニョ ポーニョ さかなの子」とかわいい声で歌ったのが忘れられない。
魚の女の子のブリュンヒルデ(本名)は、海の女神の母と魔法使いの父に育てられている。或る日、家出して海岸にやってきたこの女の子は、ジャムの空き瓶に頭が挟まって抜けなくなったところを、保育園児の宗介に助けられる。
宗介はこの女の子を「ポニョ」と名付ける。ジャムの空き瓶を割るときに宗介は指に怪我をしたが、ポニョがなめるとケロリと治る。
ポニョの方は、人間の血を体の中に入れたことで、半魚人になり父母は今後について論争する。母はポニョを人間にしてしまえば良いと提案。古い魔法を使えば、ポニョを人間にして魔力を失わせればいい。条件は宗介の気持ちが変わらないこと。もちろんポニョは人間の女の子に変わり二人は幸せに暮らす。
この映画は「水」と「魔力」がテーマだ。ポニョの父は海底にある井戸に「命の水」を蓄えている。その井戸が一杯になると、忌まわしい人間の時代が終わり、再び海の時代が始まる。
この「井戸の水が満杯になると、時代が変わる」という設定がいまの「債券ブーム」がいつ満杯になり、時代が変わるか、という疑問と共通していると思う。
それほど今の債券市場はブームにある。アラン・グリーンスパン元FRB議長のように「債券バブル」と述べている向きもある。空前のブームと言っていい。
ご存知のお方も多いと思うが、ごく簡単に数字で示すことにする。
新冷戦勃発前の2018年7月と2019年7月との対比で示そう。
株式ファンドと債券ファンドへの資金流入の累計額だ。(2017年、年初以降)
株式 4,000億ドル→2,000億ドル
債券 4,000億ドル→2019年1月3,000億ドル
→6,000億ドル
もう一つは長期債金利の大幅で急速な低下だ。
例えば、米国10年もの国債の金利。2019年1月の2・7%台が、2019年8月7日には1・589%まで下がった。
これだけ債券の利回りが下がるのは(債券価格は上昇)、もちろん投資家が利回りを求めているのと、先行きの不透明性のダブルの背景だろう。
ブーム又はバブルの証拠はマイナス金利の債券の残高だろう。7月で推定13兆ドル、前年同期比倍増して、全体の25%に達した。
もちろん、具体的には、カネ余りと、世界不況を懸念して主要国の中央銀行が、次々と緩和策の追加を発表していること。加えてデフォルト率の低下も拍車をかけている。
先日、日本証券アナリスト協会でみずほ証券エクイティ調査部チーフ株式ストラテジストの菊池正敏さんの見解を伺った。
「世界景気の底入れまでは株式より債券の方が有利だし、2021年末まで、回復は見込めない」というのが、同氏の見解だった。ここいらが投資家のコンセンサスらしい。
反対に株式についての弱気が充満している。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの6月調査ではグローバル株式に対しては2009年年初以降で最も弱気となっている。
本来の金利低下は、株式のバリュエーションを上昇させる効果がある。
歴史的に見たPERの平均値の15倍は、益回りでは6・6%に相当する。仮に1%金利が低下すれば、益回りは5・5%に低下し、PERは18倍に上昇する計算になる。
ちなみに現在の日経平均はPERで11・77倍、益回りは東証一部銘柄の予想ベースで7・49%。割安なことは誰の目にも明らかだ。
日経平均225種の一株当たり利益の1,760円の益回りは8・58%。8月9日現在のPERは11・65倍。前述の15倍になれば2万6,500円だ。
では、いつこの債券バブルが終わるのか。8月8日付の「木村喜由のマーケット通信」で、個人投資家協会理事の木村さんはこう指摘している。
「個人的な見解」と前提してだが「8月7日の米国債券市場で歴史的なチャートパターンが出現した。」「高値と安値で以上に大幅な値幅が日足で出現した場合『ワイドレンジングディ』と呼ばれる。これが長いトレンドの終わりにこれが出た場合、90%以上の確率でトレンドが反転する。」
木村さんは(前記したが)前日まで1・72%だったのが、8月7日に1・589%まで利率低下してから翌日に1・72%まで上昇した、と指摘している。
これと別に、フィナンシャル・タイムズ紙にブラック・ロックの債券担当者の「米国10年国債のマイナス金利低下は(実質ベースで)債券バブルの天井」という発表を個人ベースで行ったという。(この件はひと様に伺ったので現物は読んでいません。このブログをご覧の方でご存知でしたらお教えください。よろしくお願い申し上げます)。
このお二人が正しいのか、それともまたこのバブルが続くのか。答えは、まだ分からない。わかっていることは唯一つ。債券から株式への資金シフトが発生すれば、すごい大型相場になるということだけだ。
映画の中でポニョの父親のフジモトが言う。
「ポニョは魔法を使い放題だ。このままにしておけば世界は破滅する!!」私は債券バブルが終了するのは、次の空前の株式ブームにつながると思うので、破滅論はとりません。ただし、移行期にドカンがあるのは、仕方がないと考えています。
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